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「人生というレールは…」 元ホテルマンの駅員から卒業生へのエール
山口県山陽小野田市にある厚狭(あさ)駅。在来線の改札付近に設置されたメッセージが、ネット上で注目を集めています。

【ネットの話題、ファクトチェック】
山口県山陽小野田市にある厚狭(あさ)駅。在来線の改札付近に設置されたメッセージが、ネット上で注目を集めています。近くにある高校の卒業生に向けたものですが、書いたのは、昨年まで神奈川でホテルマンとして働いていた駅員です。文章に込めた思いを聞きました。

ツイッターで話題に
今月1日にツイッター投稿された画像。そこには、厚狭駅に設置されていたホワイトボードが写っていて、こんなメッセージが書かれています。
エアコンの付いた待合室もなく、夏は暑く、冬は寒い。
大雨が降れば、1番のりばの屋根からは、滝のように雨漏りします。
美祢線で通学する方は、本数も少なく、大変だったかと思います。
決して、愛着のわく駅ではなかったかも知れません。
それでも3年間、雨の日も、風の日も、雪の日も、鹿が出た日も、バス代行だった日も、厚狭駅をご利用いただき、誠にありがとうございました。
こんな駅ですが、みなさんの思い出の片隅に残ることができたのなら、うれしく思います。
進学や就職で、厚狭駅としばらくお別れする方もいらっしゃる事でしょう。
これから先、辛いことや悲しいこともあるかと思いますが、みなさんの人生というレールは、どこまでも明るい未来へつながっています。
いつか素敵な大人になって、厚狭駅へ帰ってらっしゃるのを、心待ちにしています。
本日は、ご卒業まことにおめでとうございます。

書いたのは厚狭駅員
このツイートに対して、「なんか久しぶりに良いもの見させて頂きました」「手書きの文章が温かみのあるものだと再認識」といったコメントが寄せられ、リツイートは5千、いいねは1万3千を超えています。
このメッセージを担当したのは駅員の中江尚登さん(28)です。
「近くの厚狭高校のみなさんを中心に、卒業される方々に向けて、3月1日の始発前に設置しました」
中江さんは昨年4月にJR西日本広島支社に入社。5月から厚狭駅で働いています。
「全国のいろんな駅で卒業生向けにメッセージを書いているのを、入社して初めて知りました。自分も駅員になったら書いてみたいと思っていたんです」

重なった自らの経験
厚狭駅は新幹線も止まりますが、在来線を待つ間は冷暖房のついた待合室はありません。申し訳ないという思いを素直につづりました。
一番苦心したフレーズは?と尋ねると「やっぱりレールのくだりですね。自分もいろいろありましたから」との答えが。
今から8年前、ホテル課のある専門学校を卒業して、神奈川県内のホテルに就職。レストランからベルボーイまで一通り経験しました。
転職を決意して思い浮かんだのは、幼いころに機関車トーマスをよく見ていたこと、駅員が笛を吹く姿がかっこいいなと思ったことでした。
「つらい思いや悲しい思いもしましたが、私は今こうやって駅員として働いています。自分の経験も踏まえて、『みなさんの人生というレールは、どこまでも明るい未来へつながっています』と書きました」

手書きの理由は
手書きにこだわったのも、理由があります。
「専門学校時代、ホテルにインターンで行った際、お客様から手書きのお礼状をいただいたんです。あの喜びは今も覚えています」
メッセージを設置した3月1日。卒業を祝う放送も準備していましたが、春の嵐でダイヤが混乱。残念ながら実現しませんでした。
話題になったことについては、こう話します。
「きっと無駄なことなんてありません。私はそうでした。だから自信を持って前に歩んでください」