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2018年02月22日

北朝鮮の小学生が描く日常とは 日朝緊張「だからこそ」絵で探る交流

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平壌の小学生の写真とメッセージ。日本の小学生が描いた空手の絵を持ち、「テコンドーとにています」と感想をそえた=2018年2月17日、東京都千代田区での「南北コリアと日本のともだち展」

平壌の小学生の写真とメッセージ。日本の小学生が描いた空手の絵を持ち、「テコンドーとにています」と感想をそえた=2018年2月17日、東京都千代田区での「南北コリアと日本のともだち展」

平壌の小学生が描いた「わたしの楽しい時間」と自己紹介
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平壌の小学生の絵。右に自己紹介がある=2018年2月17日、東京都千代田区で開かれた「南北コリアと日本のともだち展」で
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 北朝鮮の小学生が描いた絵が見られるというので、そのイベントに行ってきました。ハリネズミのように身構える独裁国家の下での日常が垣間見えました。(朝日新聞専門記者・藤田直央)

北朝鮮の小学生たちが描いた絵=2018年2月17日、東京都千代田区での「南北コリアと日本のともだち展」

北朝鮮の小学生たちが描いた絵=2018年2月17日、東京都千代田区での「南北コリアと日本のともだち展」

20数点、日本と変わらぬ日常も

 「南北コリアと日本のともだち展」は、国際NGOや在日コリアン団体からなる実行委員会が主催。絵を通じて日本と北朝鮮、韓国、中国の子どもたちの交流を支援する活動です。毎年開催の「ともだち展」は東京で17回を数え、今年は平昌五輪で盛り上がる2月中旬にありました。

「南北コリアと日本のともだち展」は2018年2月16~18日に東京都千代田区のアーツ千代田3331で開かれた。3月23~25日には大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで予定されている。

「南北コリアと日本のともだち展」は2018年2月16~18日に東京都千代田区のアーツ千代田3331で開かれた。3月23~25日には大阪市天王寺区の大阪国際交流センターで予定されている。

 今回のテーマは「わたしの楽しい時間」。平壌の小学生の絵は20数点あり、この記事の冒頭にあるフォトギャラリーにまとめてあります。サッカーや水泳、コンピューターゲーム、家族のだんらんなどは日本と変わりません。女の子には民族衣装で着飾る絵も目立ちます。

平壌の小学5年生が描いた、家族でスイカを食べる絵

平壌の小学5年生が描いた、家族でスイカを食べる絵

平壌の小学3年生が描いた、友達と縄跳びで遊ぶ絵

平壌の小学3年生が描いた、友達と縄跳びで遊ぶ絵

 「〇年生にしてはうますぎる。誰かが手伝ったのでは」と思った作品も正直ありました。実行委によると、どこまで指導されているのかはわからないが、長年交流を続ける中で型にはまった絵は減ってきたそうです。

 絵の脇にある自己紹介にも注目しました。「私はよくかわいいと言われますが、この絵ではうまくかけませんでした」というほほえましいものから、「祖国の美しさを描く将来の自分です」という大人びたものまであります。

平壌の小学5年生が描いた、「祖国の美しさを描く将来の自分」

平壌の小学5年生が描いた、「祖国の美しさを描く将来の自分」

あこがれの「少年団員」と金正恩委員長

 展示された絵の中で一人、「もはん少年団員になることをかたくちかいます!」という4年生がいました。ランドセルを背負って友達と登校する様子を描き、「学校で先生のいうとおりにするのが一番楽しい」とあります。

平壌の小学4年生が描いた、友達と登校する様子。胸元に赤いネッカチーフ。

平壌の小学4年生が描いた、友達と登校する様子。胸元に赤いネッカチーフ。

 「少年団員」という文字に、はっとしました。北朝鮮全土に組織された朝鮮少年団。北朝鮮メディアによると、日本の敗戦で朝鮮半島での植民地支配が終わって間もない1946年にできたとされ、昨年6月には平壌で8回目の全国大会が開かれました。

 その場で金正恩・朝鮮労働党委員長は、北朝鮮の指導者だった祖父と父を讃え、こう演説しています。

 「朝鮮少年団は偉大なる金日成・金正日両将軍が作り育てた革命組織だ」

 「団員たちに世界で最も幸せな生活を与えた両将軍の博愛を常に心に留めるべきだ」

朝鮮少年団の第8回大会で平壌に集まった北朝鮮の子どもたちと、金正恩・朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信が2017年6月8日に伝えた。

朝鮮少年団の第8回大会で平壌に集まった北朝鮮の子どもたちと、金正恩・朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信が2017年6月8日に伝えた。

出典: ロイター

 そして金委員長は、「団員たちの夢と理想は朝鮮労働党の旗の下に実現する。赤いネッカチーフはその旗の一部だ」と語りました。

 「もはん少年団員になる」と書いた小学生の絵の中の子どもたちも、赤いネッカチーフをしています。他の作品数枚にも見られます。

 米ソ冷戦下で朝鮮半島が北朝鮮と韓国に分断されて約70年。北朝鮮は米国に対する自衛を唱えて核・ミサイル開発を進めています。平昌五輪を機に北朝鮮と韓国の対話ムードが高まりましたが、五輪終了後には朝鮮半島付近で毎年恒例の米韓合同軍事演習が予定されており、予断を許しません。

 孤立を深める北朝鮮。その下に、「ともだち展」に絵を寄せた小学生たちはいます。絵の明るさとは裏腹に、暗い気持ちになります。

「顔見えないから不安あおられる」

 「ともだち展」実行委のNGO関係者らは、「だからこそ」という気持ちで交流に取り組んでいます。

 「南北コリアと日本のともだち展」の会場で、実行委員会メンバーの2017年8月の訪朝について説明するスライド=2018年2月17日、東京都千代田区のアーツ千代田3331

 「南北コリアと日本のともだち展」の会場で、実行委員会メンバーの2017年8月の訪朝について説明するスライド=2018年2月17日、東京都千代田区のアーツ千代田3331

 北朝鮮から絵がただ送られてくるわけではありません。実行委メンバーが日本の小学生の絵を持って訪朝し、平壌の小学生に見せる。感想を書いてもらい、絵を受け取り、帰国して日本の小学生に見せる。その交流の成果としての展示を2001年から続けているのです。

 昨年の訪朝は8月でした。米朝間の緊張が高まり、日本各地でミサイル落下に備える動きが出ていたころです。それでも実行委メンバーは空路、北京経由で平壌に入りました。

 メンバーの1人、日本国際ボランティアセンターの宮西有紀さんが「ともだち展」の会場での報告会で振り返りました。

 「南北コリアと日本のともだち展」の会場で説明する日本国際ボランティアセンターの宮西有紀さん=2018年2月17日、東京都千代田区のアーツ千代田3331

 「南北コリアと日本のともだち展」の会場で説明する日本国際ボランティアセンターの宮西有紀さん=2018年2月17日、東京都千代田区のアーツ千代田3331

 「今も国交がない状況が続く東北アジアで、相手を知ることから始まる平和づくりを目指す活動です。相手の顔が見えないから不安があおられ、負の連鎖になる。今回はかなり議論しましたが、今後につなげるために訪朝しました」

国同士の関係、悪い時こそ交流を

 国際社会が北朝鮮の独裁政権に圧力を強める中、こうした交流は容易ではありません。日本政府は「拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するため」として、国民に北朝鮮への渡航自粛を求めています。私の知る韓国政府関係者は「北朝鮮との市民交流などあり得ない。すべて政府が統制しているんだから」と冷ややかです。

首脳会談後の共同記者会見でトランプ米大統領(左)と握手する安倍晋三首相=2017年11月6日午後、東京・元赤坂の迎賓館、代表撮影

首脳会談後の共同記者会見でトランプ米大統領(左)と握手する安倍晋三首相=2017年11月6日午後、東京・元赤坂の迎賓館、代表撮影

出典: 朝日新聞

 しかし、実行委メンバーとともに昨年訪朝した広島市立大学の水本和実教授(国際関係論)は日朝市民交流の可能性を説きます。「国家間の関係が悪い時こそ必要です。相手と何をどこまで話せるかは信頼の深さによる。まずは共通の関心から交流を深めるべきです」

 「南北コリアと日本のともだち展」の会場で、実行委員会メンバーの2017年8月の訪朝に同行した経験を話す広島市立大学の水本和実教授=2018年2月17日、東京都千代田区のアーツ千代田3331

 「南北コリアと日本のともだち展」の会場で、実行委員会メンバーの2017年8月の訪朝に同行した経験を話す広島市立大学の水本和実教授=2018年2月17日、東京都千代田区のアーツ千代田3331

 水本教授は平壌外国語大学を訪れ、原子爆弾が使われた惨状を展示する広島平和祈念資料館のカタログ三冊を寄贈しました。「米国であれ北朝鮮であれ核兵器の使用に反対だ」と先方の研究者に話したところ、「私もそう思う」という反応があったそうです。

 「ともだち展」の一角には、北朝鮮の小学生の写真とメッセージもありました。空手の絵を送った日本の小学生への返事です。

 「この絵を見て、りりしいってことがわかった気がします。あなたは空手がすきなのかな? わたしはテコンドーがすきだよ」

平壌の小学生の写真とメッセージ。日本の小学生が描いた空手の絵を持ち、「テコンドーとにています」と感想をそえた=2018年2月17日、東京都千代田区での「南北コリアと日本のともだち展」

平壌の小学生の写真とメッセージ。日本の小学生が描いた空手の絵を持ち、「テコンドーとにています」と感想をそえた=2018年2月17日、東京都千代田区での「南北コリアと日本のともだち展」


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