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大雪、降るとわかってなぜ出勤? 品川駅午後2時40分の「異変」
東京で大雪となった1月22日、入場規制される駅が出るなど交通機関が混乱しました。ところが、GPSを使ったデータを調べると、朝の出勤時、多くの人は平常時と変わらない行動をしていたことがわかりました。同じく雪が降った2月2日も、出勤を控える動きは見られませんでした。なぜ、雪が降るとわかっているのに出勤してしまうのか。専門家は「個人が自分の判断で出勤を控えることは難しい。会社によるアナウンスが必要」と指摘します。
1100万人以上が使うヤフーの「Yahoo!防災速報」アプリの位置情報をもとに算出した混雑状況を分析。「Yahoo! MAP」アプリ上にある「混雑レーダー」機能のデータから、人々の動きを追いました。
調査では、150平方メートルごとに、そのエリアの混雑状況(人数は非公表)を地図に落とし込み、平常時と、雪の日を比べました。
品川駅では平常時、午前8時40分ごろが混雑のピークになりますが、1月22日も同じ午前8時40分が最も人が多い時間帯になりました。
平常時は、午後5時ごろから人が増えはじめ、午後6時20分ごろ帰宅ラッシュになります。ところが、大雪があった22日、人が増え出したのは平常時より2時間以上早い午後2時40分ごろからでした。
実はこの日、都内では午後2時30分に大雪警報が発令されていました。いつもより早い人の流れは、大雪警報が影響していたようです。
大雪警報が出た後、人々は急激に駅へ集中します。午後4時には、平常時の3倍近くまでになり、午後5時40分は朝のピーク並みになりました。
午後6時40分ごろから人の波は引いていきます。午後7時20分には、平常時より少ない人数になり、その後も終電まで終始、平常時よりも下回ったままでした。
渋谷駅、東京駅、秋葉原駅、新宿駅もおおむね、同じような傾向でした。
池袋駅の場合は、乗り換えの乗客が多かったためか、大雪警報後の混雑は、他の駅よりも集中し、午後6時20分は朝のピークの約1.3倍の人が詰めかけていました。
地図上に表示された混雑具合からは、大雪によって1月22日の夜中、都心から人がいなくなっていた様子が浮かび上がります。
正午段階の地図では、平常時の1月15日と22日に大きな変化は見られません。それが午後5時になると、大手町などで人が少なくなる一方、品川駅や渋谷駅などでは混み合っています。
そして午後9時、平常時の1月15日は新橋駅や新宿駅、渋谷駅など繁華街のあるエリアは人が多いのに対し、大雪のあった22日は郊外と変わらないくらい人がいなくなっています。
多くの人が帰宅時間を早めたことで、繁華街が閑散としてしまった様子が見て取れます。
2月2日も未明から雪が降り続けました。朝の段階で都内に大雪注意報は出ていましたが、朝の人の流れは平常時と同じでした。
1月22日ほど雪が降らなかったこともあり、鉄道の乱れは少なく、駅の混雑は平常時と変わりませんでした。
朝、普段通り出勤してしまったことで、1月22日は雪が本格化した時点から駅に人が集中し、入場規制が行われる事態になりました。荒天時のトラブルを少なくするには、どうすればいいのか? データから読み取れることを東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授(災害情報学)に聞きました。
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■佐藤翔輔准教授の話
1月22日は、大雪になるという報道があったのにも関わらず、朝はいつも通りに出勤している人が多くいました。午後2時すぎ、人の流れが変わりました。鉄道会社による運行制限の発表が影響を与えたと考えられます。
主要駅が急激に混雑しだし、平常時のラッシュ時間よりも早く、帰宅する人が集中しました。朝の段階で何らかのアナウンスが出てれば、駅で入場規制がかかるほどの混雑を回避することができたかもしれません。
一方、公的機関が気象条件などのデータによらず警報などを出すことは、現状では難しいでしょう。会社などの組織が独自の判断で出勤を控えるよう指示を出せれば、混乱を防ぐ手だてになる可能性があります。
2月2日は、朝の段階で大雪注意報が出ていたのにも関わらず、出勤時の動きは平常時と変わりませんでした。この日は1月22日ほど大きな積雪にはならず、交通機関の大きな乱れもなかったため、駅の混雑は平常時と変わりませんでした。
結果的に雪の影響が少なかった2月2日のような日にこそ、会社などが万が一のことを考え、出勤を控える指示が出すべきだったかもしれません。
同じ積雪量でも、めったに降らない都会と、雪の多い地域とでは、深刻度が違ってきます。
現在はインターネットなどを活用すれば在宅勤務もしやくなっています。会社にとっても、無理に出勤させることは事業継続という面でもリスクが大きいと言えるでしょう。
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