2018年01月30日

ファストファッション・ゾゾタウン…激増する衣服、自由がゆえの苦労

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衣料品通販サイト「ゾゾタウン」。昨年11月には、着るとサイズを測ってくれるボディースーツの無料配布を発表した

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」。昨年11月には、着るとサイズを測ってくれるボディースーツの無料配布を発表した

 江戸が東京へと改称されて今年で150年。この間、衣服は量も種類も激増しました。その変化は私たちに何をもたらしたのでしょうか。主に「男物」から考えました。(朝日新聞記者・川見能人)

供給倍増した衣類 自由がゆえの苦労も

 年末も押し迫った南青山のサロン。東京都武蔵村山市の自営業石田滋一さん(32)が、真新しいコートに袖を通した。定期的に通って服装のアドバイスを受けたり、服を買ったりしている。婚活のためだ。

 「第一印象を上げようにも服に興味がなく、選び方も分かりませんでした」。量販店で品定めしても、種類が多すぎて迷うばかり。でもここに通い始めてからは、着こなしに自信が持てるようにもなったという。

 ファストファッションの台頭などで、多種多様な服を以前よりも安価で手に入れられるようになった。この四半世紀、国内での年ごとの衣類の供給量が、ほぼ倍増したとの統計もある。

 一方で、このサロンを営む服装コンサルタント会社「ライフブランディング」の吉田泰則社長(40)は「服装の平均レベルが上がり、気をつかう必要も増した」と指摘。自由であるがゆえの新たな苦労も生まれている、とみる。

コートの試着をする石田滋一さん(右)と、吉田泰則さん=東京都港区

コートの試着をする石田滋一さん(右)と、吉田泰則さん=東京都港区

広がり続けた服装の選択肢

 この150年。戦時中を除き、日本では服装の選択肢が広がり続けてきた。

 出発点は明治初期に、軍服や制服に洋装が採用されたこと。「脱亜入欧」を欧米にアピールするとの政治的な理由や、機能性の高さなどが後押ししたとされる。和服にコートを羽織るなど和洋折衷の服飾文化を生みながら、民間にも徐々に普及し、大正末期~昭和初期には洋装を着こなすモボ・モガ文化も出現した。

左は和服の上に二重回しを着る男性の絵。たもとなどが露出して見栄えが良くないと掲載の雑誌(都の華19号)にはある。右はアサヒグラフ掲載(1929年ごろ)のモボ(モダンボーイ)とモガ(モダンガール)

左は和服の上に二重回しを着る男性の絵。たもとなどが露出して見栄えが良くないと掲載の雑誌(都の華19号)にはある。右はアサヒグラフ掲載(1929年ごろ)のモボ(モダンボーイ)とモガ(モダンガール)

 戦後の大きな動きの一つは、ファッションブランド「VAN」創業者の石津謙介氏(故人)が、米国東部の名門大生の服装を採り入れた「アイビールック」を提案したこと。カジュアル路線を打ち出した1960年代以降、若者らにも大きな影響をもたらした。

 中でも、こうした服装に身を包んで銀座・みゆき通りに集まった若者たちは「みゆき族」と呼ばれ、東京五輪があった64年の話題をさらった。石津氏の長男・祥介さん(82)は「当時はまだ珍しい格好で、仲間を求めて集まった。でも迷惑に思う地元の人もいて、苦情もあったね」。

銀座・みゆき通りでの若者たち。みゆき族と呼ばれた=1964年

銀座・みゆき通りでの若者たち。みゆき族と呼ばれた=1964年

 やがてジーンズやTシャツが定着。DCブランドの隆盛、渋カジの流行など、服飾文化は多様化し続けている。

 インターネットで服を買うことも珍しくはなくなった。無数の店と服が並ぶ手元の画面を指させば、翌日には商品が届く。昨年11月には衣料品通販サイト「ゾゾタウン」が、着るとサイズを測ってくれるボディースーツの無料配布を発表。コーディネートを手助けするアプリも生まれ、利便性は日々、進歩し続ける。

2008年に東京・銀座にオープンしたH&Mには、多くの人が列をつくって開店を待った

2008年に東京・銀座にオープンしたH&Mには、多くの人が列をつくって開店を待った

出典: 朝日新聞

「対面販売の重要性は高まっている」

 一方で、自由になり続けてきたと単純には言えない、と指摘する人もいる。

 学習院女子大の増田美子名誉教授(日本服飾史)は、戦後のメディアとアパレル産業の発達に着目。流行は以前より早く、そして広く伝わるようになったと指摘する。出回る服もそれに沿ったものが大半。「ひとたび流行遅れになると、実際にはほとんど着られないし、流行以外のものは手に入れるのも難しくなる。仕掛けられた流行という、枠内での自由なんです」

 130年近く銀座に店を構える「高橋洋服店」の4代橋純さん(68)は「便利に買い物できる反面、その場限りでの売ったり、買ったりも多いのでは」とみる。「本当に欲しいもの、似合うものを知り、見つけるのはますます難しくなっていると感じる。プロによる対面販売の重要性は、高まっていると思うのです」

 あふれる衣服に日々更新される情報や流行。その中で自分らしさを知り、表現するのは簡単ではない。高まり続ける便利さの一方で、私たちはそれをどう使いこなしていくのだろう。

「東京」最初の人口は86万人 品川は「県」、羽田は海の中だった
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東京は、1871(明治4)年の廃藩置県まで、東を小菅県、西を品川県に囲まれた非常に狭いエリアだった=デザイン・佐藤慧祐
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出典:朝日新聞
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