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中国のマンガ、一歩先行く「独自の進化」スマホ重視、CGを駆使
現在、中国で活躍している漫画家の多くは「80後」「90後」と呼ばれる「1980年代、1990年代生まれ」の若者たちです。彼らは日本の漫画から多く影響を受け『ドラえもん』『ナルト』『ワンピース』『名探偵コナン』は必読書と言われています。そんな中、全ページカラーの「彩漫」や、短時間で読める「条漫」など、中国独自の進化を遂げているものも生まれています。現地で活躍する少女漫画家に、中国漫画の今を聞きました。
話を聞いたのは、中国の少女漫画家の米沙Misha(ミサ)さんです。
米沙さんは、1984年に中国浙江省の杭州市生まれで、現在は杭州「翻翻動漫集団」(「ファンファン漫画」)の専属漫画家です。代表作に『砂輿海之歌』『偃師』などがあります。
米沙さんは、中学生の時、日本の漫画にはまり、自分でも漫画を描きはじめました。漫画雑誌に投稿を続けましたが、ほとんどがボツだったそうです。
「雑誌の編集者から励ましの言葉やアドバイスをもらったので、苦労はあまり感じませんでした」という米沙さん。その後も投稿を続け、2004年大学2年生の時に描いた『空気ガール』がヒットし、デビューを果たしました。
2010年に中国でファンファン漫画が主催し、集英社も支援した「新星杯」漫画コンクールでは、『月下美人』という作品で準グランプリになりました。その後、米沙さんは集英社を見学し、ベテラン編集者のアドバイスも受けました。
2011年、漫画『偃師』が中国の漫画業界の代表的な賞「金龍賞」の最優秀賞を受賞し、米沙さんは中国における代表的な少女漫画の作家になりました。
漫画家として十数年のキャリアを積み重ねていますが、日本の漫画家から大きな影響を受けたそうです。
最も好きな漫画家は、少女漫画の篠原千絵さんです。
「篠原先生の絵の描き方、物語の進め方など、全部好きです」
日本の男性の漫画家からは「漫画の魂を感じる」と話します。『スラムダンク』(中国語「灌篮高手」)の作者である井上雄彦さんのファンでもあります。
「井上先生の人柄とその職人精神に魅せられています。彼はよりよい作品を作るため、修行もするし、新しい技法もどんどん採り入れようとします。社会的責任感が強いところを尊敬しています」
日本の漫画の影響を大きく受けている中国の漫画ですが、独自の進化を遂げている部分もあります。
日本では白黒がメインであるのに対し、中国では色が鮮やかなカラーの「彩漫」が人気です。また、1分から2分程度で読める「条漫」も浸透しています。
中国では「流れ作業」が進んでおり、3DモデルなどCGのソフトが使われることも少なくありません。
また、日本よりも少女漫画の存在感が大きく、米沙さんのような人気作家が次々と生まれています。
少女漫画の作家として独り立ちした米沙さん。中国の読者は「移り気」(「喜新厭旧」)な傾向が強いと感じているそうです。そのため、今後、中国の漫画マーケット自体、少しずつ細分化していくと予想しています。
「マーケットが成熟していくのに合わせ、漫画家としても勉強し続けなければならない」と危機感も抱いているそうです。
これまで中国の漫画ファンには「熱血、サスペンス、ユーモア、友情」などのテーマが人気でした。
今はスマホで漫画を読む人が多く、細切れの時間に合わせた「ファストフード化」された作品が好まれる傾向があるといいます。
そんな中で生まれたのが、手軽に読める「条漫」と、見た目重視の「彩漫」というカラー漫画でした。
「条漫」は、2ページから3ページ程度のボリュームで1、2分程度で読めます。通常の漫画と違って縦スクロールで読む形で、読み終わる時間も早くなります。
「彩漫」は、基本的に全ページがカラーです。中国では日本よりも白黒漫画の歴史が短いため、読みやすいカラーが好まれると言われています。
CGのソフトなど技術の進化や、読者のニーズの変化が早いので、漫画家も常に成長する必要があります。
とはいえ、米沙さんは「物語が最も重要」という気持ちは大事にしているそうです。
「条漫や彩漫など、漫画の形式は、あくまでも物語のため。今後も素晴らしい作品を作り続けたい」
日本の漫画に慣れ親しんできた米沙さんは、日本進出も視野に入れています。
「物語を大事にするという点は、中国と日本の読者には通じるものがあります。日本でデビューできるならば、日本の読者に面白いと思ってもらえる作品を描いていきたいです」
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