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2017年11月16日

AV強要「未成年の被害者」 罪悪感で泣いたのに「嬉し涙」と宣伝

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初撮影中の女性。プロダクション社長が別の女性にLINEで送ったものを、朝日新聞が入手した(画像の一部を加工しています)

初撮影中の女性。プロダクション社長が別の女性にLINEで送ったものを、朝日新聞が入手した(画像の一部を加工しています)

 本人の証言と関係者とのLINEで浮かび上がる、未成年女性へのAV出演強被害。事務所に連れて行かれ、わずか数時間で勝手に「デビュー告知」をされて出演に追い込まれた女性は、撮影現場で度々、泣いた。涙の本当の理由は「親や彼氏への罪悪感、何でこんなことをやっているのか」という思いだったが、カメラの前では「嬉し涙」と言うしかなかった。その言葉は、作品のパッケージにも使われた。(朝日新聞記者・高野真吾)


女性が出演した作品のDVD。現在も流通している(画像の一部を加工しています)

女性が出演した作品のDVD。現在も流通している(画像の一部を加工しています)

「嫌がると社長から怒られるかも」

 2016年5月中旬の初撮影の前日。女性は所属していた50代のプロダクション社長と、LINEのやりとりを交わした。

社長「お疲れちゃん!明日は宜しくだよ」

女性「お疲れ様です!頑張ります!」

社長「オッケーちゃんだよ。俺も張り切ってるからなぁー」

女性「はりきっていきましょー!!」

 字面だけをみると、とても前向きだ。しかし、女性は30代のAV男優に予期せずプロダクションに連れて行かれ、社長たちから強引にAV出演の流れを作られていた。女性は、LINEのやり取りの裏にある本心を次のように明かす。

 「逃げられない以上、テンションを上げていかないと撮影に臨めない。嫌がったりすると社長から怒られるかもというところもあった」。社長、マネジャー役の男性とのLINEでは、「自分の売りである明るいキャラ」をずっと意識していたという。

女性がAV男優に連れ込まれた事務所がある建物の出入り口(画像の一部を加工しています)

女性がAV男優に連れ込まれた事務所がある建物の出入り口(画像の一部を加工しています)

「将来の夢は?」「AV女優」と言わされる

 初撮影だった作品では、やや表情がぎこちないながら、カメラの前で笑うように努めている様子が確認できる。作品の冒頭、男性からのインタビューで答えた内容は、出演までの実際の経緯と大きく異なる。当日渡された台本に書いてあったセリフをそのまま読んだからだ。事前に監督面接などの打ち合わせはなく、現場で全てが決まった。

女性「18歳。大学生です」

男性「これから大人になってやりたいことや将来の夢なんかはあるのですか?」

女性「AV女優です」

男性「そうなんですね。それでここに来ているのですね」

女性(うなずく)

男性「そうなりたいと思ったきっかけはあるのですか?」

女性「セクシー女優にあこがれて、私もそうなりたいと思って、はい」

男性「そうなんですね」

女性「はい」

男性「ある程度自信はおありなんですね」

女性「頑張ります」

作品でインタビューを終えた直後の女性の映像。彼女が答えた内容は全て台本に沿っていた(画像の一部を加工しています)

作品でインタビューを終えた直後の女性の映像。彼女が答えた内容は全て台本に沿っていた(画像の一部を加工しています)

カメラ前、本心隠し「嬉し涙」

 性行為を終えた作品の最後では、女性が泣き、口元を押さえているシーンが出てくる。その場面で、共演していた男優が女性に涙の理由を聞く。

男優「それは何涙?」

女性「嬉し涙」

男優「本当に気持ちよかった」

女性「気持ちよかった」

男優「痛いとかはなかった」

女性「全然大丈夫です」

 女性はこのセリフも、カメラが回っているため本心を隠している。実際は、男優が「無理やり手で押さえる感じて、強引な感じてやってきたりして痛かった」。さらに「やりたくなかった仕事」だという気持ち以外に、「罪悪感」と「不安」も抱えていた。

 「親や彼氏に対する罪悪感、なんでこんなことをやっているのだろうという思い。これから大丈夫かなという不安だったりを、色々と考えた上での涙だった」。

 この涙を制作側は宣伝材料に使っている。DVDのパッケージ裏側には、「この涙は嬉し涙です」と記されている。

作品中で涙を流す女性。本心を隠し、「嬉し涙」と話している(画像の一部を加工しています)

作品中で涙を流す女性。本心を隠し、「嬉し涙」と話している(画像の一部を加工しています)

「愛想笑いはしないように」

 その翌日、腹筋が痛む中で、2回目の撮影内容がマネジャーからLINEで送られてきた。

 まずは、時間の指示からだ。

 「07時50分(女優名)入り 終了予定23時前くらい」

 次に「共通内容」が記されている。非常に過激な行為の言葉が並ぶ。

 次は「絡み」についての記載だ。

 「(女優名)一絡み目、1対4初めてのビデオもの、愛想笑いはしないように」

 「犬」になるという記述の後、次のような指示もあった。

 「首輪をされワンワンと言ってください、笑わないように」

LINEで「犬」になるという撮影情報を送ってきたマネジャー役の男性(画像の一部を加工しています)

LINEで「犬」になるという撮影情報を送ってきたマネジャー役の男性(画像の一部を加工しています)

「今度は泣かないようにします」

 この撮影前日にも、社長とLINEでやり取りした。

社長「明日も頑張ってよーー」

女性「頑張ります!!今度は泣かないようにします」

社長「あの涙は最初だけだよ」

女性「そーですね!緊張ほどけて安心してしまって!」

社長「いい涙だよ!純粋な子ほど涙が出るよ」

女性「よかったです!明日も気合い入れて頑張ります!!」

社長「気楽にな」

女性「そーですね!!気楽に楽しんできます笑」

社長「それで良しだぁー」

女性「はーい」

社長「ステキーーーー」

女性は主にLINEで、プロダクション社長たちとやり取りをしていた ※写真と記事は直接、関係ありません

女性は主にLINEで、プロダクション社長たちとやり取りをしていた ※写真と記事は直接、関係ありません

出典:https://pixta.jp/

知らされず無修正に出演

 この撮影で撮った映像は、ネット上で無修正動画として配信、販売されている。モザイクのある通常のAVとは異なる作品だ。

 1日の撮影で2作品となった。この作品の監督とは、プロダクションへの所属契約時に事務所で会っているが、無修正で撮っているとは知らなかった。プロダクションの社長、マネジャー役の男性とも、無修正であることを伝えてこなかった。

 女性が自分が無修正の作品に出ていると知ったのは、事務所から離れた昨冬のことだ。女優名をネット検索していて偶然に見つけた。

 撮影現場は、スタッフ同士がスケジュールなどでもめ、楽屋の雰囲気も悪く、「怖くて冷たい空気の中、暗い印象が残っている」。一度に二十数人の男性を相手にするなど「体を痛めつけられる1日」を過ごした。

女性が出演した無修正動画の一場面。「犬」になる前に足元のカットがあった

女性が出演した無修正動画の一場面。「犬」になる前に足元のカットがあった

婦人科系感染症を発症

 女性はこの撮影の3日後、婦人科系感染症のカンジタ膣炎とみられる症状を発症した。突然、下半身にかゆみなどの異常が出た。初めてのことだったので、ネットで調べてカンジタだと判断した。

 六本木の「赤ひげ先生」と呼ばれる、医師で自民党前衆院議員の赤枝恒雄さんは、多数のAV女優を診察してきた。

 赤枝さんによると、カンジタ膣炎は「女性が寝不足でお酒をたくさん飲み、スパイス系の料理をたくさん食べるなどしていると自然発生する場合もあるが、男女間の性行為でうつし合うこともある」と話す。

六本木の「赤ひげ先生」と呼ばれる自民党前衆院議員の赤枝恒雄さん

六本木の「赤ひげ先生」と呼ばれる自民党前衆院議員の赤枝恒雄さん

下半身のかゆみ隠し、撮影へ

 プロダクション社長からもらった薬で治したが、次の撮影後の6月に再度、発症した。4回目となるハードな撮影2日前に社長とLINEをした。主立ったやり取りは以下のような内容だ。

社長「お疲れちゃん!!今どーなってる?」

女性「かゆいです!」

社長「クスリは飲んだよね?」

女性「飲みました!」

社長「現場終わりにクスリあげるよ!」

女性「ありがとうございます!」

社長「現場では、かゆいの黙ってなよ」

女性「はい!」

女性がカンジタ膣炎を治療するために使ったのと同じ軟膏(なんこう)。朝日新聞が厚生労働省に確認したところ、「国内未承認薬」と回答を得た

女性がカンジタ膣炎を治療するために使ったのと同じ軟膏(なんこう)。朝日新聞が厚生労働省に確認したところ、「国内未承認薬」と回答を得た

ストレスから手足に発疹

 女性はこの頃になると、度重なる撮影から強いストレスを感じるようになり、手足に発疹ができていた。複数の男性を相手にするなど、体への負担もきつかった。

 2016年6月下旬、マネジャーに「7月中の仕事無しにしてもらいたい」とLINEで送っている。

 「これ以上、続けると作品本数も増え、彼氏、家族、職場にばれる。いま言わなければ」。5月中旬の初撮影から5回を経て、やっと自分の本心をプロダクションにぶつけられた。

女性が自分で撮影した手足の発疹の様子(画像の一部を加工しています)

女性が自分で撮影した手足の発疹の様子(画像の一部を加工しています)

プロダクション側の見解

 女性の「証言」について、プロダクションの社長、マネジャーに話を聞いた。

――プロダクションに所属するまでの経緯は?

社長「AVに興味があるということで来ました」

マネジャー「僕が男優さんと仲良くて、その方から紹介を受け、本人が興味があるということで、事務所に来た。年齢も18歳以上であると確認して(連れてきた)」

――AV出演の意思確認は?

マネジャー「喫茶店かどこかで話をしましたね。場所までは分からないのですけど、(プロダクションがある都内主要駅)西口のどこかの喫茶店で、(女性、マネジャー、男優の)3人で話しました。喫茶店名は覚えてないですね。結構、モデルさんはいっぱいいますし」

――プロダクションに所属するには契約をするはずだが

社長「それは全部、彼(マネジャー役)が(契約書を)読ませて、そういうことですよと読ませて、納得してもらって書いたと思います」

マネジャー「(出演する作品を撮る)メーカーの方でも、どういうメーカーか話を聞き、本人たちもAVというのを承知しているという契約書と、内容の細かい部分の再度の確認しています」

――女性とトラブルになったことは

マネジャー「出演に対しては前向きで、僕の方にも仕事を欲しいと言われていたので、営業をして、仕事を取ってきていた。最後は、いきなりころっと、辞めますということになった」

社長「あれぐらいノリノリで来ている子が、そんな風になるとは思えない」


――女性は(婦人科系感染症の)カンジタ膣(ちつ)炎を治している最中、かゆみがある状態で、撮影に臨みました。LINEに、社長が「かゆいの黙ってなよ」と隠すように指示した記録があります

社長「何でしょう、お互い当時ですね、冗談を言い合える中でやっていたつもりなのですが」

――女性は2016年6月中旬に撮影した時、出血し、とてもしんどかったと話しています

社長「(その撮影が)一番楽しかったと言ってもらったような記憶があるよな」

マネジャー「何だかんだ一番楽しかったと(言っていた)」


――女性が出演したのは、IPPA(知的財産振興協会)と関わる会社の審査を経て出た(表の)作品ですか

マネジャー「じゃないですかね。変なところには入れていないので」

――女性は無修正動画が世に出ています。それに関する認識はないのでしょうか

マネジャー「どうなのですかね。ちょっとあまり答えづらいです」

――社会人を無修正に出した認識はあるのでしょうか、ないのですか。

マネジャー「ちょっと答えにくいですね」

――社長のご認識は?

社長「僕は(マネジャーに)任せきりですから」

女性の反論

――出演までの経緯について

「駅から事務所に向かう間に、喫茶店に寄ったことはありません。歩いている途中も、一緒にいた男優、マネジャーに『AV女優に興味はない』と、はっきり言いました」

「もちろん、事務所についてからも『AV女優に興味はない』と再度、言いました。聞かれた質問に答え、表面上は楽しく笑顔で話をしていましたが、実はすごく不安でした。決して社長が言うように『ノリノリ』な感じではなかったです」

――性病について

「2016年6月中旬の撮影は、すごく大変でつらかったです。社長やマネジャーには『楽しそうだった』と言われたので、その時のやり取りではウソで表面上合わせてしまったのかもしれません。その日は、肌に赤い斑点がいくつもできているのに、早朝から行かなければならなかった。望んでないのに複数人の相手をさせられ、拘束され、首を強く絞められたり、無理やり泣かされたりしました」

情報提供、お待ちしています

     ◇

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