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2017年11月12日

ミャンマーで死んだ日本人ジャーナリスト 10年前に何が起きた?

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銃で撃たれ、倒れる長井健司さん=ロイター

銃で撃たれ、倒れる長井健司さん=ロイター

 10年前、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで、日本人ジャーナリスト、長井健司さん(当時50)が銃で撃たれて亡くなりました。軍事政権への反対運動を取材している最中でした。遺体の状況や目撃証言から、明らかに至近距離から兵士に狙い撃たれたと思われますが、ミャンマー政府は「流れ弾に当たった不運な事故」という見解を変えていません。当時、そこで何があったのか。「その瞬間」を世界に伝えたカメラマンの証言とともに、現場から振り返ります。(朝日新聞ヤンゴン支局長兼アジア総局員・染田屋竜太)

僧侶らのデモを取材中、銃弾に倒れる

 長井健司さんが撃たれたのは2007年9月27日。

 ミャンマーでは、大きなデモが起こっていました。8月、燃料の公定料金が引き上げられ、バスの運賃などが高騰。民衆のデモに対し、政府は一斉検挙して締め付けを行いました。しかし、9月には、ついに摘発の対象が僧侶にまで及んだことから、反対運動はふくれあがります。仏教徒が約9割を占めるミャンマーで、尊敬される存在の僧侶を拘束したり、傷つけたりすることで国民の怒りが頂点に達したのです。

 長井さんは、直前まで中東で取材活動をしていました。しかし、反政府運動が高まりを見せるミャンマーに、急きょ入国することを決めました。2日前から最大都市ヤンゴンに滞在し、僧侶らのデモの様子をカメラに収めていました。

 27日午後、長井さんはヤンゴン中心部の路上で手持ちカメラを構え、デモの撮影を始めます。国軍のトラックが群衆に近づき、人々が散り散りに逃げる中、兵士たちを撮り続ける長井さん。そして急に、はじかれるように倒れました。それでも右手でカメラを向け続ける姿は全世界に映像で流されました。


【動画】ミャンマー記者射殺から10年「瞬間」とらえた映像

射殺の瞬間捉えた映像 命からがら届けたテープ

 この映像を撮ったのは、メディア「ビルマ民主の声(DVB)」のカメラマン、ヤンナインさん(56)です。長井さんから数十メートル離れた歩道橋の上でビデオカメラを構えていました。「1人の男性がずっと兵士にカメラを向け続けているのを見て、まずい、何か起こるのではないかと思い、テープを回し続けた」と振り返ります。

 当時、軍政に不都合な映像や記事を発信することは厳しく禁じられ、国内メディアは政府の民衆への暴力を報じることができませんでした。DVBはタイ・チェンマイに拠点を置き、国外から軍政に批判的な報道を続けてきました。

 元々、結婚式の写真などを撮っていたヤンナインさん。一度、「反政府活動をした」として収監された時、軍が発信する情報しか入ってこない刑務所で、「真実を伝えること」がどんなに大事か身にしみて知ったといいます。出所して、ひそかに映像をDVBに送る「隠れカメラマン」になりました。

長井健司さんが射殺された映像を命からがら守ったヤンナインさん。今も警察や軍の目を警戒し、仮名で仕事をすることが多い=9月、ヤンゴン、染田屋竜太撮影

長井健司さんが射殺された映像を命からがら守ったヤンナインさん。今も警察や軍の目を警戒し、仮名で仕事をすることが多い=9月、ヤンゴン、染田屋竜太撮影

出典: 朝日新聞

「何とかこの映像を届けなければ」

 「ケンジ・ナガイは倒れても起き上がって撮影しようとしていた。その姿を見て、私は彼の勇気に体が震えた」とヤンナインさん。しかし、自分の身も危ない状況。すぐに歩道橋から降り、カメラを抱えたまま、あちこちにある兵士の検問所を避けながら、2時間ほどかけて郊外の自宅にたどり着いたといいます。

【動画】検問くぐり抜け届けた「ビデオ」ミャンマー記者射殺から10年

 「何とかこの映像を届けなければ」。ヤンナインさんは数日後、タイに出国する予定の知り合いとヤンゴン市内の喫茶店で会うことを決め、そこで、タバコの箱に入れたビデオテープを、「チェンマイに持っていって欲しい」と、そっと渡しました。その映像が世界に流されました。

 ミャンマー政府は当時、長井さんは流れ弾に当たり、誰が撃ったものかわからないという説明をしていました。しかし、ヤンナインさんは静かに首を振ります。「間違いない。すぐ後ろの兵士が撃ったんだ」


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