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2017年10月19日

辛酸なめ子さんが見た選挙「その時まで日本があれば…」募る不安

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選挙の風景に「その時まで日本があれば……」とつづった辛酸なめ子さん

選挙の風景に「その時まで日本があれば……」とつづった辛酸なめ子さん

出典: 朝日新聞

 選挙カーからは、国の安全や将来への安心を訴える声が聞こえてきます。コラムニストの辛酸なめ子さん(43)は、そんな選挙の風景を「その時まで日本があれば……」と、ドキッとするような視線で眺めているそうです。20代、30代、40代の女性が抱える不安って何か、つづってもらいました。


終身雇用も油断できない

 将来には、漠然とした不安が立ち込めています。先日、20代、30代の女性と話していて、10年後も今の仕事を続けていきたいかという話になりました。思わず「その時まで日本があれば……」と答えたら、「将来、見えないですよね」と若い女性たちに同意されました。フリーで働いている人はその時に応じて、仕事が終わったり、また依頼が来たりしますが、安定的なはずの就職をしている人も、終身雇用という考えがなくなりつつあるので油断できません。

終身雇用も油断できない…

終身雇用も油断できない…

出典:https://pixta.jp/

 欧米のように自分をスキルアップしてキャリアを変えていく、という方向になっています。一見華やかですが、戦い続ける戦士のような人生です。ライバルとしてAIが台頭してくるかもしれないし、いつ仕事がなくなるかわかりません。一部の、向上心にあふれて体力のある人だけが勝ち残り、格差が広がっていくのでしょうか。うわべだけでも成功している体を装いたい人は、ますますインスタ映えを目指していくのかもしれません(そしてそれをやっかむ人がSNSを炎上させ、さらに窮屈な監視社会に……)。

 さらに、女性は活躍しろとか、出生率を上げろとか、国からのプレッシャーもあります。朝日新聞が「わたしの未来」をテーマに読者から募集した投書にも、活躍して出産して保育の環境は自分で何とかしろなんて、勝手が過ぎる、という20代女子大学生の意見があり、共感しました。

「『私、本当にこの国で働きながら出産・子育てできるの?』というのが心境。少子化で『もっと産んで』と言われながら、同時に『女性活躍、外でも働け』、しかし『保育の環境は自分で』。勝手が過ぎます」(東京都・20代女子大学生)

出典:「その一票、いらないなら私に」 若い世代、考える未来:朝日新聞デジタル

朝日新聞の投書に届いた声。「『私、本当にこの国で働きながら出産・子育てできるの?』というのが心境」

朝日新聞の投書に届いた声。「『私、本当にこの国で働きながら出産・子育てできるの?』というのが心境」

出典:https://pixta.jp/

「花粉症ゼロなんてどうでもいい」

 全て手に入れている人は本当に一部の運や体力やチャンスに恵まれている人なのですが、あまりにもそういう人にスポットが当たりすぎているように思います。独身だったり、子どもがいなくて人口増加に貢献できなかったりしても、少しでも世の中に役に立とうと地道に働いている人が認められる世の中になって欲しいです。

 自分を含めて、フリーや契約社員という比較的不安定な立場の人が周りに多いので、意見を聞いてみました。

全て手に入れている人は本当に一部の運や体力やチャンスに恵まれている人なのに…

全て手に入れている人は本当に一部の運や体力やチャンスに恵まれている人なのに…

出典:https://pixta.jp/

 出版社の契約社員の30代女性は「非正規雇用なので常に心配です。上がすり替わったら首が飛んでしまいます。仕事をセーブして良いと言われていますが、セーブしたらさぼっているように思われて他の人に仕事を取られるかもしれず、怖くてできません。夫婦合わせた収入で生活費がギリギリなので、もし離婚にでもなったらやっていけません」と、不安だらけの心情を語ってくれました。

 彼女は「選挙は誰に入れればいいかわからない」とも言っていました。朝日新聞の「声」欄の投書でも「空虚なスローガン」だという言葉があり、たしかに、どの政党も目の前にエサをぶらさげているような公約が多くて、実現率は低そうです。

 「花粉症ゼロなんてどうでもいいです」と言うのは、20代の音楽関係の仕事をしている女性。収入が安定していないため、親族の持つ家に引っ越したそうです。夢をかなえるためには、自力で何とか日常の不安を解消させていくしかありません。彼女は理想の未来について「大学時代、こうあるべきみたいな常識がつらかったので、根本的な考え方が変わったら良いです。就職活動していないだけで変人扱いされ、肩身が狭かったです」と話してくれました。

「選挙は誰に入れればいいかわからない」という声も

「選挙は誰に入れればいいかわからない」という声も

「昔はこんなことで炎上しなかった」

 最近、世の中の風潮がまた保守的になっているので、個性が強いと生きづらくなってしまっています。周りの目を気にして歩調を合わせ、少しでもはみ出したり目立つことをしたりすると、バッシングされる世の中になりつつあるのでしょう。メディア関係の人と話していると「昔はこんなことで炎上しなかった」と遠い目になったりして、年寄りのぼやきという一面もあるかもしれませんが、実際に昔の方がのどかでした。やはり先行き不安な人が多くなり、精神的な余裕がなくなってしまったのでしょうか。自分の内面をまず穏やかにして、その平和な波動が外界に放射され、外の世界も変化していく、というのが理想です。

 とはいえ、老後のことを考えるとどうしても不安になってしまいます。10月16日の朝日新聞に掲載された「わたしの未来」のアンケートの途中経過を見ると、自分の暮らしに満足している人が過半数という結果でした。でもそれが30代、40代になると前述のように不安が増大し、私のようにお守りや神社仏閣などスピリチュアルに頼る女性も少なくありません。国が頼りにならないので神様に頼る、というとプリミティブですが……。

(アンケート)わたしの未来 2017衆院選

中高年が「長生きしたい」と思える社会に

 ともかく現実的には国民年金の問題です。同年代の女性と国民年金の話題になることも多いです。支給予定額のはがきを見ると、私の場合、収入が低くて保険料が払えない時期があったので、年金受給額は年に26万円位の予定で、どうやって生活していいかわかりません(今は納付しております)。それも支給開始年齢が引き上げられるとか、年金の給付額を抑えて幼児教育無償化やベーシックインカムに回すという説があり、ほとんどもらえない可能性が。今さえ取り繕えれば将来的にどうなっても良いのでしょうか。

 先日も、40代女性と話していたら「年を取って地をはうような生活をしたくない」という意見を聞いてドキッとしました。「年金はほとんどもらえないし、貧乏で長生きしたくない」と……。「日本に無料の老人ホームが増えたらうれしいです」という30代女性の意見も聞きました。若い人の未来も大切ですが、中高年が「長生きしたい」と思える社会になってほしいです。そして年長者を大切にする世の中に……なんて、若い時はほとんど気にかけていなかったのに、後半に差しかかった今になって言うのは都合が良すぎるでしょうか。(寄稿)

     ◇

辛酸なめ子(しんさん・なめこ)漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『おしゃ修行』(双葉社)など。ツイッターでも発信中(@godblessnameko
 

中高年が「長生きしたい」と思える社会って?

中高年が「長生きしたい」と思える社会って?

出典:https://pixta.jp/

「10年後の自分」投稿募集

 みなさんは10年後にどんな自分を思い浮かべ、そのために社会や行政、政治に何を望みますか。衆院選に合わせて「わたしの未来」をテーマに投稿を2017年10月25日まで募集しています。朝日新聞「声」欄や「フォーラム面」(http://t.asahi.com/nxs3)で紹介します。投稿はメール(tokyo-koe@asahi.com)で550字以内。原則実名です。住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号を明記してください。
 

婚活大国ニッポン お寺で・リングで・極寒の野外で…
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しばれ婚活。バルーンマンションに水を吹き付ける女性参加者ら。厳しい寒さの中、「楽しい」の声も=2015年2月5日、北海道陸別町
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