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「不倫騒動、何とも馬鹿馬鹿しい」1通の投稿が生んだ熱い議論
「先日、浮気だ不倫だと騒がれ、民進党の女性議員が離党しました。何とも馬鹿馬鹿しいと私は思います」――。女性読者の多い新聞の生活面に80歳の主婦から投稿が届きました。「『政治家に求める資質』と『不倫』の関係」。「許せる不倫と許せない不倫」。1通の投稿をきっかけに、読者の考えを募ったところ50を超える意見が集まりました。メディアの責任・男女の違い……。不倫を巡る議論を振り返ります。(朝日新聞文化くらし報道部記者・田渕紫織)
朝日新聞の生活面で読者からの投稿を毎日載せている「ひととき」という欄に投稿したのは、80歳の主婦吉井多恵子さんです。
「報道関係者たちも、なんでそんなことを大きく取り上げるのでしょうか。不倫なんて個人的な問題で、公の場で騒ぐことではないと思うのです」とバッサリ。「個人的な問題と言っても、交友関係を大事にするあまり、国民のためにならない政治をされては困りますが」と「もりかけ問題」まで皮肉る内容でした。
介護や孫、趣味についてのエッセーが多い中、異色の投稿でした。9月のひととき欄を担当していた筆者は、大事な投げかけと感じつつ、数日迷いました。「こんな投稿が来てるんですけど……」と1人、また1人と周りの記者を巻き込んで相談。先輩記者の後押しも受け、掲載が決まりました。
「不倫の話は避けがたい。政治家に何を求めるかということにもつながるのでは」。総選挙を控えた9月、会議でのデスクの言葉をきっかけに、吉井さんの投稿の掲載日に合わせて政治家と不倫について意見も募ることになりました。
翌日から50通以上のメール、手紙、ファクスが寄せられました。「ひととき」欄の反響としては異例の量です。不倫をした経験、された経験をつづる人から、メディアの取り上げ方への批判をくださる人まで、長文の投稿も目立ちました。
投稿を「『政治家に求める資質』と『不倫』が関係あるか」に分けると、「ある」と「ない」はほぼ拮抗(きっこう)。一つの投稿内で「ある」と「ない」の間で揺れ動く人も多くいました。
私はどちらかと言えば「ない」と思っていましたが、1通ずつ読み込むにつれて、予想外の方向に論点が広がっていったのは驚きでした。
例えば、「女性議員に対しては、より厳しく責め立てる」(72歳無職)という指摘は数多くありました。同じ政治家でも、女性と男性で不倫をした時の反応は分かれるのでしょうか?
これについては「イクメン議員(自民党の男性議員)の時も厳しかった」「イクメン議員は子育てを看板にしていたからで、そうでない男性議員では大きなバッシングを受けない」「男女関係なく、日頃から支持しているかどうかによる」--。様々な角度のご意見が寄せられました。
また、「いくら心を奪われたとしても、人の持ち物を盗むのか」(58歳主婦)という投げかけや、「人の夫」「人の妻」という表現の投稿も多くありました。「夫は妻、妻は夫の持ち物」という考え方が前提にあるのではないでしょうか。
紙面を手にした同僚たちの間では「『昼顔』の人気と、政治家の不倫への厳しさは矛盾していないか」「許せる不倫と許せない不倫があるのか」と激論?が交わされていました。
投稿は今も、届き続けています。
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