IT・科学
ネット中毒者、中国で横行する「電撃治療」漢方医「予防が大事」
パソコンやスマホが手放せなくなる「ネット依存症」は、お隣の中国でも深刻化しています。民間の治療施設では「電撃」と呼ばれる電気ショックを未成年者に与える「処置」が横行するなど、問題のある治療法も生まれています。そんな中、東洋医学でネット依存症がもたらす健康被害を治そうとする漢方医がいます。首・頸椎(けいつい)の大事さを日々提唱し、「日頃の備えを大事にする漢方が有効」と話すベテラン漢方医に立ち向かい方を聞きました。
話を聞いたのは、中国の漢方の研究病院である「中国中医科学院望京医院」の李金学(リ・ジンシュエ)教授です。
李教授によると、中国ではパソコンやスマホの急速な普及に伴い、オンラインゲームに没頭する「ネット依存症」「スマホ中毒」の人が増えているそうです。
特に未成年者の心身の健康被害が深刻化しています。民間の治療施設では、未成年の「中毒者」を治療と称して虐待したり、「電撃」と呼ばれる電気ショックを与えたりしていたことが発覚しました。
近年、施設で「治療」を受けていた青少年が死に至ったケースも出現しており、社会問題にもなっています。
深刻化するネット依存と、治療法をめぐる問題に対して立ち上がったのが李教授です。
李教授は「インターネットのような新しい技術がもたらす負の一面を、中国の伝統医学でなんとかしたかった」と話します。
北京中医大学を卒業した李教授の専門は骨のトラブルです。これまで「ネット依存症」の頸椎(けいつい)への影響を注目し、治療にあたってきました。
「頸椎(けいつい)の病気が重くなると、神経が圧迫され、寝たきりや排泄(はいせつ)にも障害が出ます。決して油断できません」
一方、李教授によると、現代人の多くは頸椎や腰椎の病気を多かれ少なかれ患っているのが現状だそうです。
李教授は「ネット依存症」の中でも特に若者への影響を心配しています。実際、父親に背負われてやってきた17歳の少年の治療をしたこともあるそうです。
少年は、すでに首が回らない状態で、自分で歩くことすらできませんでした。X線検査の結果、頸椎の位置がずれてしまいました。
少年はネットカフェで、3日間ぶっ続けで、ゲームをやり続けていました。その結果、首を支える筋肉がまひし、頸椎の骨がずれたのです。
李教授は「予防」の観点から、漢方は「ネット依存症」がもたらす健康への悪影響に有効だと言います。
「まだ病気でないという段階でも対策をとりやすいのが東洋医学(漢方)の特徴です。一方、西洋医学は、症状が現れそれを元に治療を進めることが多いので、『ネット依存症』のような場合、処置が遅れてしまうことがあるのです」
そんな李教授に漢方の考えに基づいた、普段の生活で気を付けるべき点を聞きました。
【姿勢が大事】
「目線とパソコンの画面は、斜め下15度の傾斜があったほうがいいでしょう。漢方ではこういう言い伝えがあります。『坐如鐘、站如松、臥如弓=鐘のように座り、松のように立ち、弓のように寝る』。ただし、頸椎に限っていうと、仰向けがベストだと思われます」(李教授)
【枕が大事】
「皇帝たちも使った円筒形の枕がおすすめです。その際、大事なのが枕の高さ。高過ぎても、低すぎてもよくない。細めの円筒形の枕がいいです。枕の中に『決明子』などの薬草を入れると血流が改善され、補助的な治療効果が期待されます」(李教授)
【ツボのマッサージも大事】
「一人でするマッサージも効果的です。後頭部には多くのツボがあるので、血流の改善に役立ちます。例えば頭のてっぺんに位置する『百会』のツボや、後頭部に位置する『風池』のツボや 眉毛の外側とこめかみの間に位置する『太陽』のツボが挙げられます。また手にも頸椎のためのツボがあります。人差し指と親指の骨が合流する所にある『合谷』のツボや、手首を曲げたときにできるシワから指3本分の所にある『内関』のツボなどが有効です。」(李教授)
「人間も生命体なので、頸椎病の完全の予防などはできません。しかし、日々の努力を重ねることで、損傷を最大限に軽減することが期待できます」
「スマホユーザーやネット依存症の若年化が進んでいるなか、子どものころから、使用時間の制限や健康に気をつけたほうがいいでしょう」
と李教授が明かしました。
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