ティラノサウルス、9億7万8千円
SNSでもよく見かける「子どもが作った工作」の写真投稿かと思うと、明らかに異なる点が。このサイト、子どもが決めた値段で作品を販売しているECサイトなのです。

中には「無量大数円」や「不可説不可説転円」、「3千ジジイ円」など、奇想天外な値段の作品も。値段の表記としておかしいものや、1億円を超える作品以外はサイト上で実際に購入することができます。

「子どもの成長記録として」

例えば、3歳のときはスマホで写真を撮る量が増えました。2015年に制作された作品「3歳の写真家」は、そんな息子さんが撮影した写真を集めた無料写真サイトです。

「子どもって0歳のときはすごく弱々しいんです。だけど、年をとるごとにどんどんスキルを身につけていくんですね。しゃべるようになったかと思えば、すごく口が立つようになったり」
「自分は普段から面白いものを作ろうと思っているが、子どもの行動や感性の方がよっぽど面白いときがある」といいます。

絵、工作…在庫がたまっていく
「たくさん作るので、だんだん在庫がたまってきたんです。とても尊い作品ばかりなのですが、どこかのタイミングで捨てなければならなくなります。保存方法をどうしようかと……」

「美術品って誰かが買って、コレクションとして長い間保管します。アートとは程遠い子どもの工作ですが、同じように保存できたら面白いと思いました」
佐藤さんの自宅では、お気に入りの作品は本当の美術館のようにキャプションをつけて飾っているそうです。

「しゅりけん」など簡単に作れるものは安く、頑張って作った思い入れのあるものは高くなっているそうです。
「美術品もよく何億円っていう作品がありますが、実際ものの価値ってよくわからないこともありますよね。それに近いところもあれば、大人では常識的に考えてしまうところを、子どもは自分の中にこそ価値を決める軸を持っているんだなって」
実際に値段をつけている様子はサイト内で動画で紹介されています。
コメントにも強いこだわりが
何行もみっちりと書かれているコメントもあれば、「うまいさかな。」「ばかやろう。」など短文のものもあり、「やっぱり集中力が切れてしまうので、コメントをもらうのは1日に3~4個が限度です」。

「『よんせんななひゃくえん』と言われて、『4千7百円』を入れたら『違う』と……」
「4000」と「700」をくっつけて「4000700円」にしてほしいと言われたそうです。
「まだ買える値段だったのが、急に高騰しちゃいました」と笑う佐藤さん。

ちなみに販売で得たお金は、息子さんのために貯金しますが、まずは欲しがっていた漫画を買う予定だそうです。
「息子シリーズ」ずっと続けたい
「4歳のときに作った作品は宇宙ものが多いですね。5歳のときは恐竜や生き物が中心で、6歳になる直前はポケモンです。興味がなくなってしまうと、そのテーマでは描かなくなりますね。たぶん、宇宙の作品ももう作れないんじゃないかな」

「反抗期に入ったら、嫌がってやってくれなくなるでしょうね。コンテンツにならない時期もあっていいと思うんです。でもまた年を取ったら相手してくれるようになったりして、そうやって一連の長い作品にしたいです」
「5歳児が値段を決める美術館」はおもしろコンテンツだけではなく、子どもの成長を記録する、家族のアルバムの1ページでした。