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2017年07月08日

「IQ低い」「サイコ」トランプ氏のメディア叩きが招いた皮肉な効果

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CNNのレポーターから質問を受けるトランプ氏=2017年2月、ロイター

CNNのレポーターから質問を受けるトランプ氏=2017年2月、ロイター

 アメリカで、トランプ大統領とメディアの対立が激しさを増しています。トランプ氏は自身に批判的なメディアを「偽ニュース」とののしり、品のない言葉で攻撃。一方で、新聞は電子版の有料購読者数がのび、テレビは過去最大の視聴者数を記録しました。皮肉な「トランプ効果」で、むしろメディアへの期待も高まっています。

暴言に「乱闘」動画まで 何でもありのツイート

 トランプ氏のメディア攻撃はここ最近激しさを増しています。

 6月29日、番組で自身を批判したアメリカのテレビ局・MSNBCの報道番組「モーニング・ジョー」の女性キャスター、ミカ・ブレジンスキー氏を「IQが低く頭がおかしい」「整形手術でひどく出血していた」などとツイッターで侮辱。

 男性キャスター、ジョー・スカボロー氏に対しても「頭がおかしい」「サイコ(精神異常者)」などと攻撃しました。

MSNBCキャスターのジョー・スカボロー氏(左)とミカ・ブレジンスキー氏

MSNBCキャスターのジョー・スカボロー氏(左)とミカ・ブレジンスキー氏

出典: ロイター

 トランプ氏は7月2日には、アメリカのニュース専門テレビ局CNNに見たてた「敵」を「場外乱闘」で何度も殴る動画を自身のツイッターで公開。

 大統領就任前にプロレスのイベントに参加したときの映像を加工したものとみられ、ツイートには、#FraudNewsCNN #FNN(詐欺ニュースのCNN)というハッシュタグをつけています。7日時点で35万回以上リツイートされています。




 CNNは声明で、「米国の大統領が記者への暴力を助長している悲しい日だ」「我々は仕事を続ける。大統領も自分の仕事を始めるべきだ」と批判。

 米国のNPO「報道の自由のための記者委員会」も声明を出し、「大統領がジャーナリストを暴力で脅すことを非難する」「報道の自由は民主主義の基礎だ」と訴えました。

大統領選後初となる記者会見でCNNを批判し、質問の機会を与えなかったトランプ氏=2017年1月11日、米ニューヨーク

大統領選後初となる記者会見でCNNを批判し、質問の機会を与えなかったトランプ氏=2017年1月11日、米ニューヨーク

出典: ロイター

トランプを勢いづかせた? CNN記者の辞職騒動

 トランプ氏とメディアの戦いが激しくなったきっかけが、メディア側の「失策」です。6月26日、CNNが、トランプ大統領の関係者とロシアとの関係をめぐる疑惑についての記事に関わった記者3人の退職を発表したのです。

 この記事はオンライン版で22日に公開され、「トランプ大統領のアンソニー・スカラムーチ上級顧問が連邦議会の調査を受けている」と報じていました。CNNは「CNNの編集基準に達していない」としてこの記事を撤回し、関わった3人の辞職を受け入れました。

 トランプ大統領はこれを受けて、「偽ニュースのCNNは、うそのロシアニュースを出して経営陣を大きく変更することになった。視聴率はがた落ちだ!」とツイート。




 ところが、CNNの広報アカウントは、「第2四半期に過去最高の視聴者数を記録したばかり。これが事実です」と切り返しました。

「トランプ効果」でジャーナリズムに期待も

 トランプ氏は自身に批判的なメディアを「落ち目だ」などと繰り返し非難してきたものの、実際にはその逆で、トランプ氏の当選後、ニュースへの関心は高まり、ジャーナリズムにお金を払う人が増えています。

 トランプ氏の言動が注目を集め、疑惑を追及することへの期待も一部では高まっているからで、皮肉な「トランプ効果」が米メディアに起きているのです。

 アメリカを代表する新聞のニューヨーク・タイムズの電子版の有料購読者は2017年1~3月の3カ月間に30万8千件も増え、2011年の電子版有料化以来、最大の伸びを記録しました。

電子版の有料購読者を増やしているニューヨーク・タイムズの本社ビル=米ニューヨーク、江渕崇撮影

電子版の有料購読者を増やしているニューヨーク・タイムズの本社ビル=米ニューヨーク、江渕崇撮影

出典: 朝日新聞

選挙戦中からメディア批判で人気

 トランプ氏は大統領選の期間中から、CNNやニューヨーク・タイムズなどを「腐敗した既得権益」として批判し、これまでの政治に不満を持つ人たちから支持を集めてきました。

 支持者集会では、集まったメディアに支持者から「くたばれCNN」などと罵声が浴びせることも。

 アメリカの多くのメディアがトランプ氏の手法を批判しましたが、当選したのはトランプ氏でした。

トランプ氏の集会で報道陣に対してブーイングする支持者。掲げたTシャツには「CNNは最悪だ」のロゴ=2016年11月4日午後、ペンシルベニア州ハーシー、矢木隆晴撮影

トランプ氏の集会で報道陣に対してブーイングする支持者。掲げたTシャツには「CNNは最悪だ」のロゴ=2016年11月4日午後、ペンシルベニア州ハーシー、矢木隆晴撮影

出典: 朝日新聞

対立深めた「ロシアゲート」

 大統領就任後も、トランプ氏はメディア批判を続けてきました。昨年の米大統領選へのロシアの介入とトランプ氏側の関与をめぐる「ロシアゲート」報道に反発し、報じたメディアを「偽ニュース」と決めつけて非難したり、政権に批判的なメディアを会見の場から閉め出したりしてきました。

 「ロシアゲート」とは、1974年にニクソン米大統領が辞任に追い込まれた全米最大の政治スキャンダル、ウォーターゲート事件にかけたロシア疑惑の呼び方です。

 トランプ政権はロシアと親密で、大統領選へのロシアの介入に関与したのではないか、またトランプ氏が連邦捜査局(FBI)による捜査を妨害したのではないかといった疑惑が報じられています。

トランプ大統領がロシア疑惑を捜査していたコミーFBI長官を解任したことを受け、ホワイトハウス前には抗議のため約200人が集まった。参加者らは「トランプを弾劾しろ」「徹底捜査を」などと書かれたプラカードを掲げて解任を批判した=2017年5月10日、ワシントン、ランハム裕子撮影

トランプ大統領がロシア疑惑を捜査していたコミーFBI長官を解任したことを受け、ホワイトハウス前には抗議のため約200人が集まった。参加者らは「トランプを弾劾しろ」「徹底捜査を」などと書かれたプラカードを掲げて解任を批判した=2017年5月10日、ワシントン、ランハム裕子撮影

出典: 朝日新聞

 2008年のリーマン・ショック後に記者になったあるアメリカのジャーナリストは、「職場でリストラが相次ぎ、なんて業界に入ってしまったのかと思った。でも今、職場は活気にあふれている」と言います。アメリカのメディア業界では長らく、広告収入の減少や紙媒体の不振で、リストラや倒産が相次いできました。トランプ氏を不振の米メディアを救う「救世主」とする見方も生まれてきています。
 
 これまでのアメリカの各種世論調査によると、有権者がトランプ氏とメディアのどちらを信頼するかの見方は大きく割れています。メディアとトランプ氏の対立は、分断されたアメリカの現状を象徴しているようです。

 トランプ氏のメディア批判には、ロシアゲートをはじめとした自身への批判をかわす狙いがあり、トランプ氏が今後、これまでメディアに振り上げてきた拳を下ろすとは考えにくいのが現状です。メディア側に求められるのは、トランプ氏の挑発にのらず、正確な報道で真実に迫ることに尽きるのではないでしょうか。

トランプ氏から「整形している」「IQが低い」と言われたキャスター
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トランプ氏から「整形」「IQが低い」と言われたMSNBCキャスターのミカ・ブレジンスキー氏(右)と、「頭がおかしい」と言われたジョー・スカボロー氏(左)と、ロイター
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