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IT・科学

美容整形、急増の真相「スマホ台数に比例」 手術現場で何が?

第2回整形シンデレラオーディションで、整形後に舞台に立った5人の女性(湘南美容外科クリニック提供)
第2回整形シンデレラオーディションで、整形後に舞台に立った5人の女性(湘南美容外科クリニック提供)

目次

 美容整形って、どう思いますか? かわいくなれるならいい? 親にもらった体にメスを入れるなんて? 20代以下では抵抗のない人も増えているようです。なぜでしょうか。整形によって、理想の顔や人生をめざす女性を応援する「整形シンデレラオーディション」を企画した湘南美容外科クリニックの富田聡さん(44)に聞きました。(朝日新聞記者・船崎桜)

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「ゴールは美しくなることじゃない」

――2016年に始まり、数百人の応募がある整形シンデレラ。面談や合宿で他の出場者と交流しながら、無料で整形を受けることができる「ファイナリスト」が選ばれます。みなさん整形後にはスポットライトをあびて、ランウェイを笑顔で歩いていました。いじめなどを経験した方も出場していましたね。企画者である富田さんのねらいは何ですか?

 

富田さん

「整形を通じて気持ちが前向きになる→毎日を楽しく元気に過ごせるようになる→その結果いいことが起こる、という仕組みを体験してもらうためのものです」

 

富田さん

ゴールは、整形で美しくなることじゃないんです。言うなれば、心の美容整形ですね。『彼氏にふられたから』とかの理由で応募したけど、整形しなくても明るく生きられるでしょう、という子は企画では落選します」

「整形って気持ちの問題」

――整形をきっかけに、心が変わることがあるんですね。

 

富田さん

「美しさって、実は周りを認める力、賛美する力を生むんです。醜さは、卑下や、周りを見下すことにつながる」

 

富田さん

「整形って、『見た目の問題でしょ』と思われているけど、気持ちの問題です。きれいな人にも、ブサイクな人にも、心の悩みがある。その悩みの深さって外からは見えないものです」

「僕自身も整形しているんです」

 

富田さん

「僕自身も、14年前に整形しているんですけど」

――え!

 

富田さん

「整形前の写真、見ます?」
左が整形する前の富田さん。右は整形後(湘南美容外科クリニック提供)
左が整形する前の富田さん。右は整形後(湘南美容外科クリニック提供)

――たしかに、目元が違いますね。

 

富田さん

「でも僕が二重になって、僕が僕じゃなくなったか。そんなことはないですよね。別に、整形を『超肯定』しているわけじゃないけど、ほら、盆栽と一緒ですよ。『この枝ぶりがこっち向いてたら1億円!』とかあるけど、実際それって針金を通してそうするでしょう。それです」

 

富田さん

「僕も整形したあと、『印象が優しくなったね』とか言われる。外見って、みんな口にしないようにしていると思うけど、やっぱりいろいろなことに作用していると思います。人間社会では、好きか嫌いかは絶対になくならないから」

「整形依存症になるなよ」

――整形シンデレラに出場した方はみなさん「整形してよかった」と言ってますか?

 

富田さん

「そもそも整形って、終わって『よかった』とか『これじゃダメだ』とか思うような気持ちが安定してない子は絶対に受けるべきでないんですよ」

 

富田さん

「二重にしたい、と言って整形した子が、友達とか彼氏に『その二重おかしくない?』と言われて気にしてしまうのであれば、絶対にやるべきじゃない。二度と戻れないわけだから」

 

富田さん

「あわせて医療機関として一番言っているのは『整形依存症になるなよ』ということ。おばちゃんになってたれてきたらすぐに整形、じゃないぞ、と」

「20代以下は、10年間で16倍以上に」

――整形を受ける人は増えているんでしょうか。

 

富田さん

「増えています。2016年の1年間で、湘南美容外科クリニックで新規に手術を受けた人数は、5万人を超えています。06年からの10年間で、約14倍になりました」

 

富田さん

「特に、20代を中心とした若い世代の伸びはすさまじい。20代以下は、10年間で16倍以上に増えています」
■湘南美容外科クリニックで新規に手術を受けた人数(年代別)
■湘南美容外科クリニックで新規に手術を受けた人数(年代別)

「あきらかにSNSの影響が大きい」

――急増の理由は?

 

富田さん

あきらかにSNSの影響が大きいと思います。鏡を見ているのは本人の脳内だけだけど、写真と動画に触れていて、しかもそれを他人に『いいね!』まで言われちゃう。評価されているんですよ」

 

富田さん

「そしたら少しでも評価を上げたいと思いますよね。整形の発展はスマホの発展によるものですよ。スマホの台数が整形の数に比例していると思う」

「問題は、友達と一緒に写ること」

――SNSが若い世代の価値観を変えているんですか。

 

富田さん

「今の時代は、ツイッターやフェイスブックなどで、みんなが自分を露出しないといけない。芸能人だけが自分をいつも見返して、鏡に囲まれて生きる時代ではなくなりました」

 

富田さん

「今は一般の子たちでさえ、自分を表現するためにカメラで撮りますよね。SNSの中では、自分だけをきれいに撮るのは自撮りで角度を工夫したり、顔の一部を隠すことでできるんです」

 

富田さん

「でも問題は、友達が多いことも表現しないといけないから、友達と一緒に写らないといけないということ。そうなると、友達がかわいく見えるアングルでSNSに載せられちゃうから、自分がかわいいアングルでは載らないわけです

 

富田さん

「だからこそ、整形して360度かわいくならないといけないんですよね。若い世代の整形に対する考え方は、『親にもらった体に何してるの』から『きれいになるならいいじゃん』に、すごい勢いで変わってきていると思います」
「整形が増えているのは、SNSの影響」と語る富田聡さん
「整形が増えているのは、SNSの影響」と語る富田聡さん

「否定している人のことを悪く思っていません」

――それでも、「整形なんて…」という否定派もいますよね。

 

富田さん

「僕は肯定派でもなくて、中間。否定している人のことを悪く思っていません。おしゃれって、したい人がしたらいい。整形は、おしゃれが好きな人がするもの。おしゃれに興味ない人はするべきじゃない

 

富田さん

「『整形しなくてもきれいになれるじゃん』という人は、そういう生活圏、教育のもとにそういう考え方になったということ。それを否定することはできません」

 

富田さん

「ただ、やりすぎは一番いけない、というのはブレーキがかからないといけないところ。ブサイクな人も、きれいな人も、『のびしろ』はあるんです。でもそののびしろ以上やってしまうのはだめ」

「なんでもできるわけじゃない」

――なぜ依存してしまう人がいるのでしょうか。

 

富田さん

「車で言うとわかりやすいですけど、たとえばタイヤのホイルを替えたら次はフェンダーも、と男性だって思います。女性の『ここをやったら次はここ』という気持ちもわかる」

 

富田さん

「でもそれにはけっこうな金額もかかる。それに、自分にないものを追加するのではなく、あるものの角度を変えるだけのものだから、なんでもできるわけじゃない

「コンプレックスを味方に」

――依存しないためには、どうしたらいいのでしょう。

 

富田さん

「その人の悩み、コンプレックスを味方にできるかどうかだと思います。僕も、髪の毛がすごいくせ毛でコンプレックスです。でもそれをどうにかパーマっぽく見せて、こんな髪形にしている」

 

富田さん

「整形シンデレラに出場してくれたみんなは、そういうコンプレックスを自分なりに表現してかわいくするにはどうしたらいいんだろう、ということに向き合っていると思います」

「本来持っている性格を出せるきっかけに」

――この夏には第3回整形シンデレラオーディションを開催します。

 

富田さん

「今回からベトナムにあるクリニックでも応募を呼びかけたところ、日本以上の応募が来ているようです」

 

富田さん

「悩んでいる人は、周りの目を気にしすぎて本来の笑顔になれるはずの性格を押し殺しているんです。その本来持っている性格を出せるようになるきっかけとして、整形という選択肢があってもいいと思います」

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