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ドラマ「母になる」賛否呼んだ「あのセリフ」 プロデューサーの思い
放送中のドラマ「母になる」(日テレ・水曜夜)の7話(5月24日放送)のあるセリフが賛否を呼びました。
ドラマは沢尻エリカさん演じるひたむきな性格の柏崎結衣を主人公に、「母になる」性としての3人の女性の成長を描いたものです。3歳の春に誘拐された結衣の息子・広(こう)を育てていたのが、小池栄子さん演じる門倉麻子でした。
麻子は、子育ての経験に対して、こう言ったのです。このセリフが賛否を呼びました。
このドラマをてがける日本テレビの櫨山(はぜやま)裕子プロデューサー(57)に話を聞きました。
麻子は、結婚や出産を「しなければ」という重圧に追い詰められてきた女性として描かれています。母親からは「女性の幸せは何と言っても結婚、出産」などと言われ、職場で感情的になると「子供がいないから」と同僚の陰口が聞こえる。誘拐犯に放置されていた広に出会い、自分の子と偽って育てます。セリフは、9年後に広が本当の親である結衣夫婦の元に戻った後、麻子と結衣が対面したシーンでのものでした。
麻子に対し結衣は「子供が欲しいのにできなくてかわいそうに」と無意識に言います。
その言葉に怒った麻子が発したのが「もう誰からも『子供産まないんですか?』『女性なら産まなきゃ』と言われなくなったこと」などの言葉でした。
ネット上では麻子に対し、「自分のことしか考えていない」という批判や、「共感した」「分からないでもない。悪気無くそういうことを聞く人に傷つく」などの意見が出ました。
その麻子が負ってきたものは、櫨山さんも体験したものでした。
櫨山さんは1983年に日本テレビ入社。34歳でドラマ部門に異動します。
悩む中で、「やりたいようにやってみよう」と腹をくくって手がけた「金田一少年の事件簿」(1995年)がヒット作となり、その後も、「サイコメトラーEIJI」(1997年)、「ぼくらの勇気~未満都市」(1997年)などの人気作品が生まれます。一方で30代後半に入り、また悩みの中にいました。櫨山さんにとって「40歳」というのが大きかったといいます。
40歳で出産。子どもの細かな成長のことで悩む自分自身に「母親に向いていないと思っていた私も右往左往するのか」と驚きながら手がけたというのが、自閉症をテーマにした「光とともに・・・」(2004年)でした。「誠実に、お客さんに届くようにつくるということを、ものすごく意識した番組」だったといいます。
今回のドラマ「母になる」では、「お母さんになることに何の疑問も抱いていなかった」結衣、「母親からの重圧を負う」麻子、結衣の友人で「仕事と子育ての間で悩む」西原莉沙子(板谷由夏)という三つの女性像を描いています。それぞれに櫨山さん自身とシンクロする部分があるといいます。
ただ、作品で描きたいことは、「子育て」を巡るあることでした。それは、「子が向き合う相手が親しかいない」のではという疑問です。殺傷事件を起こした人のことなどから感じるようになったといいます。
子供に周りが交わるということは「ルール化」されるものでもなく、一人ひとりが気が付くことだと櫨山さんは考えます。
ドラマでは広が、麻子から目上の人に敬意を持つようにしつけられたり、行きつけのお好み焼き店の常連から教わった数学が得意だったりと、様々な人から学ぶことで「今の広」に育ったことが描かれています。実際の親以外の人も、広の成長に影響を与えていたわけです。
ドラマは、7日午後10時半より第9話、14日午後10時より最終話を放送する予定です。
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