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ネットの話題

首相「不愉快」と逆上、重鎮は即会見 あの小池質問はこう作られた

質問した小池晃議員も「これほど反応があったのは初めて」と驚き。

参院予算委員会で論戦をした共産党の小池晃書記局長と安倍晋三首相
参院予算委員会で論戦をした共産党の小池晃書記局長と安倍晋三首相 出典: 朝日新聞

目次

 「妻は私人なんですよ。犯罪者扱いするのは不愉快ですよ」。学校法人「森友学園」(大阪市)の問題をめぐり、国会審議で「不愉快」を何度も繰り返した安倍晋三首相。この発言を引き出すなどした共産党の小池晃氏の質問がネット上で「うまい」と話題になっています。また、小池氏の質問がきっかけで、その日の夜に、元防災担当相の鴻池祥肇・参院議員が学園側とのやり取りを会見する事態にもなりました。一連の追及術は、どんな風に生み出されたのでしょうか。本人に直撃しました。(朝日新聞社会部記者・仲村和代)

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参院予算委での質問を振り返る小池晃氏
参院予算委での質問を振り返る小池晃氏

ネットで話題「これほど反応初めて」

 ――小池さんの参院予算委員会での質問(3月1~2日)が、ネットで話題です。ご自身としては、うまくいった感触はありましたか。
 
 うまく?(笑)うーん、まあ自分の言いたいことは言えたかなとは思いますけど。これほど反応があったのは初めてです。
 
 質問の途中で、安倍首相や麻生財務大臣が笑っているのが見えた。それを見て怒りがムラムラっとわき起こって、「国民の財産なんですよ。みんな汗水流して税金払っているんですよ。笑っている場合じゃないでしょう」と、怒りをぶつけた。そこに評価が多かったのはうれしいです。

 ――そういう反応は予想していなかったんですね。

 そんな余裕はないですね。質問が終わった時は、達成感なんてない。ああすればよかった、こうすればよかった、とばかり考えます。

参院予算委で、共産党の小池晃書記局長(右下)の質問に答弁する安倍晋三首相=3月2日、岩下毅撮影
参院予算委で、共産党の小池晃書記局長(右下)の質問に答弁する安倍晋三首相=3月2日、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

「何度会ったのか」と聞いただけなのに

 ――質問で工夫した部分はどこですか。

 事実として確認されたこととそうでないことは、切り分けたつもりです。土地取引については、「事実ならば」道義的責任を問われるのではという言い方をしたし、幼稚園で行われている教育勅語の素読や「安倍首相頑張れ」という選手宣誓は事実だから、持ち上げてきたことについては道義的責任がある、と。

 僕は、「総理夫人は籠池氏といつからの知り合いなのか。これまで何度会ったのか」と聞いただけなんだよね。それなのに総理は、「まるで犯罪者扱いだ、妻は私人なんです」と言って、「不愉快ですよ」と3回くらい繰り返した。

 びっくりしましたよ、ここまで逆上するか、と。犯罪者扱いなんてしていないのに、「そういう印象を受けた」と安倍首相は言うんです。

 質問の時は、今後に生きる答弁だとは思わなかった。夜のニュースで、「不愉快ですよ」と繰り返した部分が使われていて、僕自身は「小池がひどいこと言う」と思われると感じ、何でここを使うかなと思ったくらいです。
 
 ただ、見た人には逆上ぶりが伝わって、この問題の広がりになった。結果として意味はあったのかなと思います。

参院予算委で、共産党の小池晃書記局長の質問に答弁する安倍晋三首相=3月1日、岩下毅撮影
参院予算委で、共産党の小池晃書記局長の質問に答弁する安倍晋三首相=3月1日、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

鴻池会見「するなんて思わなかった」

 ――質問は、どれくらい準備したんですか。

 そんなに時間はかけていません。元々は、働き方改革について聞くつもりだった。でも、数日前に急きょ、やっぱりこれでやるしかないと、変更しました。

 ――例の資料(鴻池事務所の面会記録)を手に入れたから?

 それも一定はあったんだけど、問題が下火になりかかっていたので、このままうやむやにするわけにいかないと。

 ――鴻池議員の名前を出す予定もなかった?

 もちろんです。情報源との関係で、最後まで出さないつもりだった。会見するなんて思っていなかった。

記者会見する自民党の鴻池祥肇元防災相。「森友学園」理事長の籠池泰典夫妻から、現金らしきものが入った封筒を渡された様子を再現した=3月1日、東京都内で、安倍龍太郎撮影
記者会見する自民党の鴻池祥肇元防災相。「森友学園」理事長の籠池泰典夫妻から、現金らしきものが入った封筒を渡された様子を再現した=3月1日、東京都内で、安倍龍太郎撮影 出典: 朝日新聞

 2日目も、森友学園の問題は冒頭だけにしようと思ってたんです。それが1日目の夜、鴻池さんが会見で全面的に認めたんで、こうなったらつっこむしかないなと。

 1日目に首相は、「本当のことか分からないものを、立証をする責任はそちらにある」という言い方をした。理財局長もです。どの面下げてくるのかなと思いながら、2日目に臨みましたね。

参院予算委で、共産党の小池晃書記局長の質問に答弁する佐川宣寿・財務省理財局長=3月2日、岩下毅撮影
参院予算委で、共産党の小池晃書記局長の質問に答弁する佐川宣寿・財務省理財局長=3月2日、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

国会質問は「勢いの世界」

 ――けんかみたいですね。

 けんかですよ。国会質問はね、どっちの言っていることに分があるか、見ている人が判断する。そういうもんじゃないかな。論理的に数式のように成り立つ世界というよりは、勢いの世界という感じがある。

参院予算委で、答弁のため挙手する財務省の佐川宣寿理財局長。右は国交省の佐藤善信航空局長=3月7日午前、岩下毅撮影
参院予算委で、答弁のため挙手する財務省の佐川宣寿理財局長。右は国交省の佐藤善信航空局長=3月7日午前、岩下毅撮影 出典: 朝日新聞

質問術「雑談にヒント」

 ――弁論術はどこでみがいているんですか。弁護士ドラマを見て研究したりとか?

 見ていない、見ていない。弁論術なんてないですよ。僕、もともと医者だし。雑談が大事だと思うんですよね。スタッフと「これ、おかしいよね」と話すうちに、こう詰めようかな、というヒントが出てくる。

 これだけとんでもないことやっているのに、涼しい顔しているのが許せない。窮地に追い込まないと、という一念ですよ。

 ――「ファクト」はどうやって入手するんですか

 圧倒的に大きいのは地方議員の力ですね。世論調査では、まだまだ支持が圧倒的に多いとかじゃないですけど。一生懸命調査しているし、共産党だったら変な扱い方はしない、情報源を守っているという信頼があるんだと思います。情報は玉石混交なので、足を運んで裏を取り、吟味します。

参院予算委での質問を振り返る小池晃氏
参院予算委での質問を振り返る小池晃氏

次の一手は……

 ――「印象操作」という言葉も繰り返されています。

 事実を言っているのに「印象操作」というのは、指摘に聞く耳を持たないということ。言葉はもっともらしいけど、でっちあげの類いだと言っているのと同じで、議論にならない。

 今までは支持率が高くて、開き直りでもしょうがないか、となっていたかもしれないけど、今度の件はそれで済ませられないくらいおかしいと世論は思っているのに、その変化に気がついていないんだと思います。

 ――ところで、ほかに「爆弾」はあるんでしょうか。

 あっても言えませんよ。あるかもしれない。

 向こうは認可を取り下げて一件落着にしようとするでしょうけど、まだまだ終わらせるわけにいかないと思っています。

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