「ヲタ活は就活に役立つ」と力説するアイドルオタク(ドルヲタ)は、こう言います。「自分のキャラを無理なくアピールするアイドルの方が、長続きします」。他人から「好き」をもらうには、どうしてもこびてしまいがち。「こびない」アイドルから、「企業や採用担当者に好かれなければ」とおびえる学生へのヒントを導きます。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

就活に役立つヲタ活を考えるこの企画。
今日も、講師は朝日新聞大阪社会部の阪本輝昭記者(40)です。
生徒も引き続き津田塾大学の学生さん3人。高橋さん、藤井さん、大橋さんです。

自然体を崩さない
阪本記者
学生
阪本記者
~大人の事情でお見せできません。ごめんなさい~

学生
学生
阪本記者
僕が最初に注目したのは、最初のあいさつです。
「こんにちは~」がめっちゃ大阪なまりです。
大阪の人は、このなまりを聞くと安心しますが、中には大阪弁は好きじゃないという人もいます。アイドルの中にはイントネーションを東京に合わせようと努める人もいます。
学生

阪本記者
自然体を崩しませんし、比較的はっきりとモノを言うタイプです。
私は6年間、記者として接したり、遠くから見てきたりしましたが、一貫して変わりませんね。
「職業的アイドル」としてファンから求められるものに全力でこたえる姿勢を持っている半面、山本さんは、嫌なことは嫌だときちんと意思表示します。
学生

阪本記者
でも、どんどん強いオーラをまとい、あっという間に絶大な人気を誇るようになった。
その要因を丁寧に読み解いていくと、様々なことが見えてきます。
学生
阪本記者
アーティスト志向が強く、最近、ソロアルバムもリリースしています。
それらに加え、歴史やお城が好きで、野球ヲタという属性もあります。
学生

阪本記者
いろんな強みや属性があることで、様々な人がやってくる握手会での会話のフックにもなります。そうするとファン層が広がりますよね。
私も歴史が好きな方なので、山本さんには親近感があります。好きな戦国武将を尋ねたとき、織田信長でも武田信玄でもなく、「明智光秀」という答えが返ってきて、「えっ」となりました。なんでも、家来思いの武将が好みなんだそうで・・・。「そんな見方もあるのか」とこっちが勉強になりました。
学生
阪本記者
たとえばドルヲタも、単にヲタだってだけでなく、ヲタ活から自分なりの理論を引き出していくことができれば、相手が「へー」と身を乗り出して聞いてくれることもあります。
私が「ドルヲタになればアイドルから社会スキルを学べる」と主張するゆえんです。
学生

いちばん効率的で説得力がある
阪本記者
そうした経験は、それはそれでとても貴重です。
しかし、やはり自分以上のものにはなれない。
私が就活をした時も「何かやらなきゃ」という焦りがありましたが、付け焼き刃はそのうちばれる。自分が好きなもの、無理なく取り組めるものの延長線上からアピール材料を引っ張り出してくることが、実は一番効果的で説得力を持つのではと思います。
学生
阪本記者
以前ですが、テレビ番組で「『指原(莉乃)さんと同じようにしゃべってください』と言われてムッとした」というような話もしゃべっちゃいます。
でもこれは当然の話で、例えばみなさんが「○○さんと同じようにして下さい」「そうしたら採用する」って言われたらムッとするでしょう?
山本さんは「私は○○さんじゃない」とはっきり言える人です。
学生

阪本記者
ただ、自分のキャラじゃない路線を無理してとっても、どこかではたんします。
私がアイドルを見ていて抱く印象は、自分のキャラと関連付けられる範囲で無理なく強みをアピールする人の方が、長続きしているのではということです。
学生
阪本記者
ただ一方で、「希望の会社や業界で働く」という目標にたどり着けずに入り口手前で撤退してしまう人がいるのは、もったいない。
そのために、アイドルから学べるスキルをフルにいかしてみることも、一つの選択肢ではないでしょうか。

面接官を釣ってしまおう
高橋さん
今日、いろいろ聞いて、もっとシンプルで良かったんだって思ったのと、正解っていろいろあるんだと知って気が楽になりました。
阪本記者
「私は○○をやってきました。評価してください」って、言い方次第では品がないというか、あまりいい印象を持たれないこともありますよね。
でも本来、過去に自分がやってきたことって、その人の言葉遣いや言い回し、ものの見方などに現れてくるものです。たとえば、なにかの質問への答えから、面接担当者が「この子はどんな経歴で、どんな経験をしてきたんだろう?」と関心を持たせるのがいいと思います。
高橋さん
阪本記者
阪本記者
それなしに「海外でボランティアしてきました。評価してください」と言っても、「いや、聞いてないし」ってなる。
面接担当者が「あれ、いま私、この学生のことを推しちゃった?」ってなるくらい、エサをまくっていうんですかね。「釣って」しまう。
自分のアピールを押し付けずに、聞かずにおれない、ひいては推さずにおれないという状況にする。
高橋さん
自分をプロデュースするんですね。
阪本記者
そんなに難しいことじゃないですよ。
他の人が売りにしないようなことをアピールしてもいいし。
たとえばNMB48には、吉田朱里さんのようにユーチューバーとして話題になり、ブレークしたメンバーもいます。今までのとは全く違う評価軸で挑戦するのも手です。

藤井さん
男性に自分のキャラを合わせるんじゃなくて、自分のことを分かってくれる男性とつきあいたい。
でも、それって合ってるのかなって迷う時もあって。
自分のキャラを無理なくアピールするアイドルの話を聞いて、こんな私でもいいんだって思えました。
阪本記者
私がアイドルを一人のヲタの立場から見ていて思うのは、ひとりのメン(メンバー)にできることは、自分が考えうるベストを尽くすことだけだということ。
その上で人気が出る出ないは、もう神の領域なんです。
タイミングに左右される部分もあるでしょう。だけど、ベストを尽くす前に撤退していくアイドルがいるのはもったいないなあと思います。
大橋さん
阪本記者
私の所属している社会部にはあまりヲタがいないので。
ヲタ記者という立場をセルフプロデュースしてます。

――実は学ぶところが多い「ヲタ活」。次は、ヲタ活の仕事へのいかし方を学びます。