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IT・科学

ネット画像の盗用、プロの闘い方 月50件の請求、驚くような反論も

アマナイメージズのトップページ。画像盗用への使用料請求は月50件にのぼるという
アマナイメージズのトップページ。画像盗用への使用料請求は月50件にのぼるという

目次

 ネット上で文章や画像の無断転載が大きな問題となった2016年。画像を取り扱うプロは、盗用とどう闘っているのでしょうか。国内最大手の販売サイトを運営する「アマナイメージズ」は「月50~60件の無断使用に対し、使用料請求の対応をとっています」と話します。弁護士事務所にも勝利したという、その「闘い方」とは?

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関連リンク:無断使用と日々闘う「アマナイメージズ」のウェブサイト

ネットの無断転載を監視

 同社取締役の八野和喜子さんは「ネットでは『みんながやっているから』と、無断使用が罪の意識なく行われている。私たちは作家から大事な作品をお預かりしている立場であり、その状況は黙認できない」と話します。同社は数千万点の写真やイラスト、映像、音声素材などを管理し、ウェブサイトなどで販売しています。8年前に設置された専門部署がインターネットを広く監視。無断使用と闘い続けてきました。

 無断使用が疑われるサイトは月約200件程度見つかり、そのうち明確に違法性が確認できるサイトが月50~60件にのぼります。サイト側に削除を求め、使用料を請求しています。「作家の版権を守るために必要な行為です」と八野さんは語ります。

 ネット上には無断使用した人が「56万円」「26万円」などと代償を求められた体験談が見つかります。

アマナグループ本社=東京・品川
アマナグループ本社=東京・品川

目立つ個人事業主の盗用

 同社によると無断使用が最も見つかるのが、個人事業主や中小企業のウェブサイトです。

 購入の検討材料にしてもらうための画像サンプルをダウンロードして、社長ブログに自然の風景写真を転載したり、採用ページに会議風景の写真を使ったりと、様々な無断使用があります。サンプルを保存しようとすると「作品の本使用には料金が発生します」と表示していますが、無関係のサイトが「無料素材」と称して、無断で配布していたケースまでありました。

 八野さんは「使用料を請求しても、相手方に著作権の知識がなく、驚くような反論をされる場合も多い」といいます。

 例えば風景写真の無断使用。同社が管理・販売しているのは主に写真家などから管理を委託された作品ですが、「自然の風景を撮影したものは著作物にあたらない」と思い込みで反論してくる企業もあります。

アマナイメージズのサイトでは、画像を利用する際の注意点をケーススタディなどで解説している。
アマナイメージズのサイトでは、画像を利用する際の注意点をケーススタディなどで解説している。

画期的判決、勝ち取った

 そのほか、無料画像サイトや検索エンジンで転載された作品を入手し「有料画像とは思わなかった。盗用の意図はなかった」と主張する企業も多くあります。

 アマナイメージズでは、こうした主張に対し、徹底的に法廷で争いました。

 2014年に無断使用が見つかったのは、なんと弁護士事務所の公式サイトでした。「ネットに転載されたものを、無料と誤信して使った」と主張する弁護士事務所を提訴。約1年の法廷闘争の結果、「権利関係の不明な著作物の利用を控えるべきことは当然」などと無断使用した側の責任を認める勝訴判決を勝ち取りました。

 八野さんは「和解という選択肢もありました。しかし、和解では世の中に判例が残らない。しっかり戦って判決を勝ち取ろうと決断した」と振り返ります。

 勝ち取った損害賠償額は約20万円。しかし、その金額以上に「インターネット時代に作品の権利者を守る画期的判例を作ることができた」といいます。

アマナイメージズが勝訴した裁判の判決文
アマナイメージズが勝訴した裁判の判決文

五輪エンブレム問題で変化も

 一方、企業側の意識に変化もあるといいます。

 きっかけは、2015年に起こった東京五輪エンブレムのデザイン盗用疑惑。社会的批判を受けないよう、著作権の知識を求める企業が増え、アマナイメージズへの問い合わせや著作権セミナーの参加企業が増えているといいます。

 また、記事や画像の無断転載が問題視されている「まとめサイト」に対しても、事前防止策を打っています。

 大手運営会社とは、利用者がまとめ記事を書く際に、取り扱っている画像を使えるように契約。また、まとめサイトが書き手を募る際に使う「クラウドソーシング」と呼ばれる仕事仲介サイトとも、書き手が割安に写真を使える体制づくりを進めています。

 とはいえ、ネット全体を見渡せば、無断転載は「消しても消しても出てくる状態」だといいます。

 八野さんは「アマナイメージズで取り扱う全ての画像や動画は著作物です。無断使用は、権利者が持っている著作権を侵害する行為なのだという意識が広がって欲しい」と話します。

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