IT・科学
アメリカ大使館「恋ダンス」に沖縄は? オスプレイ直後でも称賛の声
アメリカ大使館がフェイスブックにアップした、TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の「恋ダンス」。ケネディ大使が登場したこともあり、ネットで話題になりました。最終回に合わせた12月20日に投稿されたこの動画、オスプレイで揺れる沖縄の人たちはどのように感じたのでしょうか? 好意的な反応が多かった大使館の「恋ダンス」について、SNSの情報発信に詳しい専門家に分析してもらいました。
沖縄県では、12月13日に米海兵隊オスプレイ1機が沖縄県名護市の安部(あぶ)集落近くの浅瀬に不時着を試み、大破しました。
12月14日には、安慶田(あげだ)光男副知事が在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官に面会し抗議。ニコルソン氏は「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ」と主張し、県民の反発を呼んでいました。
一方、12月19日には普天間飛行場のオスプレイが飛行を再開。「恋ダンス」の動画が公開されたのは、次の日の12月20日でした。
●那覇市の会社員男性(40)
Q:恋ダンスの動画についてどう思いますか?
A:特に違和感はない。
Q:オスプレイの事故のタイミングですが?
A:たまたま重なったんだと思う。オスプレイについては、日本の警察が関与できないこと、何をしているのかと思う。宜野湾市に住んでいて、墜落するかも、といつも不安はある。深刻に考えてほしい。動画については日本のことをやってくれているので、いいと思う。オスプレイは深刻に考えてほしいが。
●那覇市の会社員男性(47)
Q:恋ダンスの動画はどう思うか?
A:日本の文化をやってもらっている印象。たまたま事故と重なって、悪気があったわけではない。
Q:オスプレイの事故については?
内地にいた経験があるので、政府と沖縄の溝の深さを感じている。反対していても、政府がOKしてしまって、沖縄と政府が仲良くできていない。
●那覇市の自営業男性(50代)
Q:恋ダンスの動画についてどう思いますか?
特にいいんじゃないか。不謹慎とは思わない。沖縄とアメリカは戦後から仲良くしてきた。いろいろと仲良くやってきた。オスプレイについては、それはそれ。
●那覇市の会社員女性(40代)
Q:恋ダンスの動画についてどう思いますか?
A:アメリカ的なオープンな感じ。やりそうなイメージで、イメージ通り。興味はない。外国の土地柄なのか、ありかのかなと思う。
Q:オスプレイの事故のタイミングですが?
A:ノリでやったのかな。時期的にやっちゃいけなかったのかなと思う。
●那覇市の高校2年女子(17)
Q:恋ダンスの動画についてどう思いますか?
A:「逃げ恥」はドラマとして好き。親しみのためにやってくれたのかなとも思う。
Q:恋ダンスの動画についてどう思いますか?
A:タイミング的にはちょっと、という気もするけど、悪気があってやってるわけではないと思うので。
専門家は、どう見ているのでしょう? ソーシャルメディアの活用法を企業向けにアドバイスしている鶴野充茂さんに聞きました。
――ネット上でもオスプレイの問題と結びつける声は目立ちませんでした
米国と米軍がイメージの中でそれほど密接にリンクしておらず、さらには「沖縄と基地問題」あるいは「沖縄の基地問題」というイシューと、米軍・米国も切り離されている人が多かったのではないかという印象です。
もっとも、動画視聴者の大多数は、米国大使館の「恋ダンス」動画自体の出来に率直な反応をしていて、基地問題や、最近の事故とその後の記者会見で「感謝すべき」などという発言で物議を醸した出来事を踏まえては見ていないのでしょう。
もちろん、少数ではありますが、事故後のオスプレイ飛行再開直後というタイミングに「何を考えているのか」と憤りを露わにしている人もいないわけではありませんが、圧倒的多数が賞賛の声であったのは興味深いことでした。
――なぜ、ネガティブな反応が大きくならなかったのでしょうか?
称賛の声が大きかった理由としては、SNSに逃げ恥ファンが多くいて、その世界観を理解して歩み寄ってきてくれたことと動画自体の完成度に、好印象を持った人が多かったというのが主な理由であろうと思います。
現役大統領の広島訪問や首相の真珠湾訪問という二国間が大きく進展した年であり、またオバマ政権も末期でケネディ大使としても日本にポジティブなメッセージを伝えたいというタイミングで、気合を入れてダンス動画の準備をしていた時にタイミング悪くオスプレイの事故が起きたということなのだと思います。
もしもこれが日本政府なら国民感情を刺激しないようにと、お祭り騒ぎのような動画公開は断念しそうに思いますが、それを踏み切ったという判断にも注目します。
――普段のアメリカ大使館の情報発信はどのようなものなのでしょう?
特別に凝った工夫が見られるわけではありませんが、頻繁に更新しているし、日本にとって密接に関係のある存在なので、日頃から動向を意識している人も多いと感じます。
米国の情報を一方的に伝えるのではなく、日米両国に関連する話題なども多く投稿しているので、身近で馴染みやすい内容も多い印象です。留学の情報、国内イベントの告知など見ている人が参加できるものも多いのが特徴ですね。
在米日本大使館のフェイスブックも同じように取り組んでいる印象です。
こうした活用そのものが距離を縮めることに効果を上げているかは分かりませんが、何かがあった時に、すぐに直接コミュニケーションをとるチャンネルとして機能し得るというところが大切なポイントなのではないかと考えます。
1/8枚