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絶版「高須帝国の逆襲」電子書籍に 「売るためのこび、改変は嫌」
発売1週間で回収となり、そのまま絶版となった美容外科医の高須克弥さんと漫画家の西原理恵子さんの共著「ダーリンは70歳 高須帝国の逆襲」が11月、電子書籍となって復活した。「あるがままに書いたものを、読んでもらいたい」。出版社を通さずに再び著作を世に出した思いを、高須さんが語った。
「高須帝国の逆襲」は5月25日に発売。予約が多く発売前に1万部を重版するほどの人気だったが、出版元の小学館が「編集上の不備があったため」として、同月31日に全国の書店に回収を要請した。高須さんはブログで書き直しを求められたことを明らかにし「断固拒否。絶版にする」と宣言。言葉通りに同書は絶版となった。
それから約半年。高須さんと西原さんは11月から、書籍版と同じ内容の電子版の販売をアマゾンで開始した。価格は500円と、書籍版の半額に設定した。
高須さんは電話取材に「電子書籍販売はスジを通した結果」と話す。
――「高須帝国の逆襲」を電子書籍として、再び世に出したのはなぜですか?
凄く単純なんですが、僕は書いたものをみんなに読んで欲しい。
でも、「高須帝国の逆襲」は書店から回収され、株の買い占めみたいに価格が高騰してしまった。定価1000円の本が1万円で売られているのを見て、なんとかして読んでもらえる状態にしたいと急いだのですが、小学館にスジを通すのに時間がかかってしまった。
――絶版までの経緯をうかがわせてください。
もう内容にOKが出ていたのに、小学館の偉い人が来て「この内容では問題があるので書き直してください」と言われました。
「高須帝国の逆襲」は僕の人生をあるがままに書いて、加工していないものをみんなに読んでもらいたいというのが、僕の望みでした。売るために変にこびをうったり、内容変えたりするのは僕はいやだった。だから、それなら絶版にしましょうと言った。その後、同じ内容のものをほかの手段で出せるように、小学館と話し合ってきました。
――変更を求められた箇所とは、どの部分なのですか?
昔の身分制度に言及し、うちの高須家のひいおじいさんが情け深い人で、差別されていた子どもたちにも、かわいいのうと餅を投げてやっていたと書いた部分の変更を求められました。
私の出身の愛知・三河では家が完成したときなどにおこなう、「餅投げ」という風習がある。そうした場でも差別があった時代に、ひいおじいさんは餅を投げてあげていた。その時代にあったことを正確に言っただけで、そこでうそを言ってしまうと僕の意図が伝わらない。
しかし、小学館とけんかをする気はありません。話し合いをしたうえで、自分たちで電子書籍にしてスジを通す。それが一番よい落としどころだったと思っています。
――「逆襲」の続刊は出版されるのですか?
西原理恵子の「ダーリンは71歳」が、僕が72歳になる来年1月に発売される予定です。それについても、また「逆襲」本を出したくて、その本は電子書籍だけで出版しようと思っています。
いつも彼女は私を題材に、老人虐待のような漫画を書いているでしょ。一方的にめった打ちにされるのは、心がもやもやする。やはり大きな声で逆襲したい。
彼女が「毎日かあさん」を描いているうちに、子どもたちは大人になってしまうから、さて次の自分の生きて行く道はと。じじいを相手にした漫画でまたブレイクしてやろうと思っているんでしょうけど、じじいはいい迷惑ですよ。
――しかし、巻末の西原さんの漫画には、高須さんへの愛情があふれています。
彼女も僕を傷つけるばかりじゃなくてね。
彼女は最後のシメがうまいんです。作品の中で地雷を踏んでいても、ピンがぽんとはねる直前でうまく片付けてしまう天才なんですよ。
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