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驚異の5600万フォロワー 中国のカリスマ「美の伝道師」の正体とは?
中国版ツイッター「微博」には、1000万のフォロワーを超えるアカウントが少なくありません。そのほとんどが映画スターをはじめとした芸能人ですが、台湾出身の美容スタイリスト「凱文Kevin老師」は5600万フォロワーを持つカリスマアカウントとして知られています。なぜ、驚異的なフォロワーを獲得できたのか。台湾人としての大変さは? アカウントを運営するKevinさんに聞きました。
Kevinさんは、2010年にアカウントを開設しました。
元々、スタイリストだったKevinさん。台湾や中国大陸のテレビ番組に美容アドバイザーとして出演しており、高い知名度がありました。
Kevinさんは2006年に「Beauty Maker」という自身の化粧品のブランドを立ち上げました。主にインターネットで販売していたことから、フェイスブックなどのSNSを重視するようになりました。
微博については、最初、個人アカウントで、知り合いの雑誌編集者や友人相手に機能を試していました。SNSでの反応の良さに手応えを感じ、その後アカウント名を「凱文Kevin老師」に変更。一般の人向けへの発信に力を入れるようになりました。
今は「凱文Kevin老師」を通じて、上質なライフスタイル情報や美容の知識を中国大陸の女性たちに伝えています。
人口が多い中国でも5600万のフォロワーは、かなりの存在感です。一番多いと言われているブロガーは8016万フォロワーを持つ女優の姚晨(ヤオ・チェン)さんですが、「凱文Kevin老師」は、すでに彼女にも匹敵する規模になっています。
今では1回の投稿に「いいね」などの反応が、瞬時に5000以上集まることも珍しくありません。
フォロワー数の多さは、ビジネスにも活用されています。自らの化粧品ブランド「Beauty Maker」や「Jskin」の宣伝に活用すると同時に、「蜜糸仏陀(マックスファクター)」などの化粧品会社とのコラボレーションを手がけています。さらに日本の「チョコラBB」、「ハローキティ」や韓国のLGともコラボをしています。
「コラボする時には、商品の品質と相手の信頼度に気を付けています。自分が使用したことのない商品、自分が詳しくない美容製品はフォロワーたちに紹介しません」
「ここまで増えるなんて…私も驚きました」と言うKevinさん。どのように、フォロワーを増やしていったのでしょう?
最初は、テレビ番組をきっかけに、番組を見た人がフォローするようになりました。
次に、プラットフォームである「新浪微博」が有名人アカウントのプロモーションに力を入れ、元々、フォロワーの多かった「凱文Kevin老師」が、さらにフォロワーを増やしました。
大きかったのが、ターゲットの絞り込みです。Kevinさんは台湾出身ですが「中国大陸の女性たちを意識して、美容の知識を伝えるよう心がけました」と、大陸向けの情報を強化しました。
2011年当時の中国大陸では珍しかった海外の化粧品のレポートに注目。外国で手に入れた新商品を積極的に紹介し、大陸の女性たちから貴重な情報として受け入れられました。
「微博」のフォロワー数は、ビジネスとも直結しているため、お金で買えるという噂が絶えません。しかし、Kevinさんは「私は全くフォロワーを買ったことはありません」と断言しています。
台湾出身のKevinさんは、中国大陸と台湾の「両岸関係」の影響を受けることもあるそうです。
「関係が悪化したり、中国と日本、中国と韓国がギクシャクすると、化粧品とは関係のない誹謗中傷が飛んできます」
一方、フォロワーの中には「kevinさんの投稿を読もまずに、このような情緒的な発言はやめなさい」などのコメントを投稿することで、Kevinさんを守ってくれる人もいるそうです。
Kevinさんは「林が大きくなると(フォロワーが増えると)、色々な鳥が飛んでくるようになります。でも、私を守ってくれるフォロワーさんには、本当に感謝しています」と話します。
今では、中国大陸の各地で開く「オフ会」に、多くのフォロワーが集まってくるそうです。
広い中国で列車に乗って、3~4時間かけて駆けつけてくれる人。学生時代からフォローしていた人が、就職、結婚を経て子どもを連れてくることも。そんなフォロワーとの交流が「何よりのやり甲斐」になっているそうです。
中国でも屈指のSNSの使い手であるKevinさん。「微博」やフェイスブックなど、サービスごとのユーザーの違いも見えてきたと言います。
一番ユーザー数が多いのはやはり「微博」。基本は中国大陸の女性です。
フェイスブックは台湾、香港、マレーシア、シンガポール、さらにアメリカ、ヨーロッパからのフォロワーがいます。
紹介する化粧品もエリアによって工夫しています。台湾の女性は「可愛い」系、中国大陸は「格好いい」系など、好みに違いがあるそうです。
そんなKevinさんが認めるのが、日本の化粧品の品質です。
「日本の化粧品には『職人精神』が宿っており、究極の美を追究している。中国でも高い評価を得ています」
最近ではパナソニックのヘアドライアーや、上野動物園のフェイスパック、キャンメイクの黒グロスなどが人気を集めているそうです。
Kevinさんは「日本製品が築いたブランドイメージをいかしながら、新しい魅力を打ち出せるか。これからの課題かもしれません」と分析しています。
今、力を入れているが動画です。
「動画中継は、会話の延長のチャットなどには適していますが、細かいところまで表現したいお化粧は、ショートビデオの方が合っています」
時代の変化に適応しながら、巨大アカウントを運営しているKevinさん。気にかけているのが、中国大陸の大都市で一人暮らしをする女性の生活です。
「急激な発展と都市化で、きちんと食事をしていない独身女性が多いではないか、心配です。美容のためによい食事は欠かせません。簡単に応用できるグルメレシピや作り方の提供をしていきたいです」と話していました。
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