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名古屋の河村市長、派手すぎるシャツの理由 叱られても年中通し…
強烈な名古屋弁で知られる河村たかし名古屋市長が、どんなに叱られても派手なシャツを貫く理由。
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強烈な名古屋弁で知られる河村たかし名古屋市長が、どんなに叱られても派手なシャツを貫く理由。
「どえりゃー」「応援してちょうよ」などと、強烈な名古屋弁で知られる河村たかし名古屋市長。夏はいつも白や青のシャツを着ているのですが、これはアロハシャツ? それとも、かりゆしウェア? とよく尋ねられます。会合の席では「派手なシャツを着てきた」と叱られることもあるそうですが、それでも貫く理由とは?
河村市長愛用のシャツは、名古屋名物の「有松絞」です。手作りで値は張りますが、露出効果か、徐々に人気が出ています。
正式には「有松・鳴海絞」として国の伝統的工芸品に指定されており、名古屋市緑区の有松地区は一大産地。江戸時代に旧東海道で人気の土産品となったのが始まりで、400年の歴史を持ちます。糸で縫ったり、くくったりするなど技法の多さが特徴で、染料に浸すことで模様を作ります。
8月末の定例会見で河村氏が着ていたシャツは青い筋の中に白地が残り、巻雲の広がる空のような模様。この夏のお気に入りだった「むらくも絞り」です。着心地は「毎日着ていますけど、非常にさらさらしていて気持ち良いですよ」。
河村氏が有松絞のシャツを「ユニホーム」にしたのは、2009年の就任直後。絞職人らでつくる愛知県絞工業組合から贈られたのがきっかけでした。当初はクールビズとして夏だけでしたが、今ではシャツは長袖・半袖計20枚、ネクタイも20本ほど所有。慶弔以外は年中ほぼ着て通します。ちなみに「もらい物もあるが、ちゃんと自分で買っています」と強調しています。
会合の席で「派手なシャツを着てきた」と叱られ、有松絞と説明してようやく理解してもらえたこともあるそう。河村氏は「絞は有松の宝の一つ。もっと市民が応援しないといかんわ」。てこ入れの狙いを語ります。
河村氏の言うように、肌触りが心地よい有松絞。けれども手仕事のため決して安くはありません。シャツは通常1万円以上。浴衣だと仕立て代込みで10万円近くから。有松絞商工協同組合によると、PR効果か、女性用のイメージがある中で男性用シャツの売り上げも最近伸びているといい、河村氏の自慢の一つです。
後継者不足に悩まされる伝統産業が多い中、有松では現在、職人約100人の中に20代が10人ほどいます。以前はほとんどいなかったのが、ここ数年で若手が増えました。絞職人が手にする加工賃は低いままですが、それでも伝統の魅力にひかれる若者が相次いでいます。
その一人、大須賀彩さん(29)は服飾を学んでいた大学生の時から有松で修業を始めました。「どんな生地にも染められて、様々な色の掛け合わせもできる。その可能性にひかれた」。出来上がるまでどんな柄になるか分からないのが難しく、面白いといいます。「みんな一つは地元の有松絞を持っている、となったらうれしい」と大須賀さん。
若い才能によって、有松絞にも、派手な蛍光色や、パステルカラーの花や水玉のデザインなど、新風が吹き込まれています。
松坂屋名古屋店(名古屋市中区)によると、有松絞の浴衣の昨年の販売数は、2013年と比べ2.5倍。今夏も売れ行き好調といい、「全国的に伝統産業を見直す動きがあり、生産者も伝統の柄をアレンジするなど工夫をしている」と担当者は話します。
6月にはファイブフォックス(東京都渋谷区)が展開するブランド「コムサイズム」が有松絞とタッグを組み、絞り染めのチェック柄シリーズを全国販売。幅広い層が有松絞を手にする機会になり、外国人にも好評なんだそうです。
名古屋に来た際は、一つ、手にとってみませんか。
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