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1日3万いいね!謎の画伯「pantovisco」の正体 ゆるい社会風刺がツボ
pantovisco(パントビスコ)さんは、思わず「だよねー」と言いたくなるイラストをインスタで発表している謎のイラストレーターです。「渋谷のクラブで踊っている人に聞きました。今どんなテンションですか?」「え?何聞こえない」。1枚のイラストに程よいオチを入れ込む、絶妙のセンスがファンを増やしています。いったい何者? 驚異のシェアの秘密は? 謎の画伯、pantoviscoさんの素顔に迫りました。
実際にお会いしたpantoviscoさんの印象は、インスタで公開している写真の通り、シュッとした顔立ちの男性で、日本人(たぶん)です。
インスタ上にイラストを投稿し始めたのは2014年秋ごろからだそうです。
「最初は好きなものを好き勝手に投稿してたのですが、フォロワーに女性のユーザーが多いことに気付き、可愛く柔らかく共感を呼ぶような作品を心がけるようになりました」
2015年12月に投稿した「勝手にアンケート」シリーズのプリウスネタが評判を呼びます。
イラストは架空のアンケートをした体裁になっています。
pantoviscoさんは「恐らく、誰しもが経験したことのある事柄が皆さんの心のどこかにある『納得!』『あるある!』という思いと合致したのではないかと思います」と振り返ります。
その後、インスタのフォロワーも急伸。今は13万を超えています。1日の「いいね!」は平均3万回、これまでに3300点の作品を投稿しています。今も1日平均5作品のペースで増えています。
pantoviscoさんのイラストは「1枚完結型」です。一見、ゆるい絵柄ですが、多くの人が「あるある」とうなずくテーマが、「だよねー」とシェアしたくなるタッチで描かれます。
プリウスネタでブレークした「勝手にアンケート」は、以降、人気シリーズとして定着していきます。
アンケートは、pantoviscoさんの脳内で行われています。でも、100%ネタというわけではなく、ほんのちょっと社会を皮肉る調味料が絶妙にまぶしてあります。人気の秘密についてpantoviscoさんは次のように分析しています。
「アンケートというものは本当は然るべき方々が然るべき方法で調査して完成する、信頼された媒体だと思います。それを、勝手にいじることで、くだらないことでさえなんだか説得力があるもののように思えてきます。日常に紐づいた内容でしたらついつい見てしまうのかも知れませんね」
調査をしたわけでも出典があるわけでもないだけに、気をつけるていることもあるそうです。
「なるべく誰も不快に思わないような作品を作ることです。皆さんに面白いことを提供して共有してもらいたいと思っているので、そちらに関しては一番気を使って活動しています」
全世界で4億のユーザーがいるインスタには、動物ものをはじめ、料理、ファッションなど、SNSで拡散しやすい鉄板コンテンツがたくさん投稿されています。
そんな中、筆一本で13万フォロワーまで伸ばした秘密はどこにあるのでしょう?
「その時に流行っている事柄や商品や言葉、時事ネタなどを積極的に取り入れた作品を描いています」と語るpantoviscoさん。
自分の世界に閉じこもることなく、誰もが接点をもちやすいチャンネルを用意しているところが親しみやすさにつながっているのかもしれません。
pantoviscoさんのイラストからは、ソーシャル上で注目をあびるための大事なポイントが見えてきます。
まず、その道のパイオニアになること。pantoviscoさんは「ゆるいイラスト(社会風刺系)」という、ありそうでなかった道を切り開きました。「社会風刺」の要素があることで、時事ネタをからめやすく、シェアする時に気の利いたコメントが入れやすくなります。
さらに、同じ路線で色々な作品を生み出しています。「ハンコ名言シリーズ」のような、ちょっと「意識高い系」に見えるコンテンツも、ネタっぽい投稿の中にあると悪目立ちしません。こってりした「筆ペン迫力画シリーズ」の中に時折、顔を出す「ハンコ名言シリーズ」は、一服の清涼剤になっています。
そして、多作であること。基本、毎日、投稿しています。
pantoviscoさんは、7月30日に初の単行本『あるあるカオス劇場 人生1コマファンタジー』(KADOKAWA)を発売します。インスタから、ありそうでなかったジャンルを切り開いたpantoviscoさん。イラストをプリントしたTシャツも人気を集めており、リアルの世界に浸食中です。
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