地元
高学歴ベビーシッター、中国で人気 子育ての「奇妙な風習」が原因?
中国で、大卒女性のベビーシッターが増えています。中国の伝統的なベビーシッターは40、50歳で、結婚出産と育児の経験を持つ「ベテラン」がほとんどです。しかし、最近は、栄養学や看護学など科学的な専門知識を持つ大学生にも人気があります。背景には、待遇の良さと、伝統に縛られない子育てを望む親の声、その両方があるようです。
中国では、赤ちゃんの産まれた最初の一カ月を「月子(ユエズ)」と呼びます。「月子」の期間中、お母さんは休養をとり、育児は専門のベビーシッターがします。
以前は、祖母や叔母がベビーシッターをしていましたが、晩婚化や核家族化が進み、「月子」専門のベビーシッターである「月嫂(ユエサオ)」を雇う家庭が増えています。
「月嫂」という仕事は重労働であるため、待遇は悪くありません。中国の平均月収が2000~3000元(約4~5万円)であるのに対し、「月嫂」の平均給料はその倍に達します。
経験豊富で口コミで高い評価を得る「月嫂」の給料はさらに高く、10000元(約20万円)に達する人も少なくありません。
こうした好待遇も大卒の若者を引きつける要因の一つになっています。
中国の「月子」の過ごし方はユニークです。1カ月間、お母さんと赤ちゃんは絶対に風に当たってはいけないとされ、外出できません。関節炎を防ぐという理由で、お風呂も歯磨きも禁止されます。
しかし、現代医学では、適度な運動は健康のために必要で、体も歯もきれいな状態を保った方が衛生的だと考えられています。
そんな「月子」の風習を守ってきた「月嫂」は、40歳から50歳で、結婚出産と育児の経験を持つ世代がほとんどでした。育児の実践経験があるものの、小・中学校卒が多く、英語やインターネットなどのスキルは乏しい…そんなイメージを持たれています。
一方、中国では現在、結婚と出産を経験する世代は1985年後生まれと1990年後生まれ(中国語でいう「85後」「90後」)になっています。彼らは伝統より、現代的な専門知識を大事にする傾向があります。大卒女性の人気は、子育て現場で現代的な感覚が重視される時代の変化も影響しています。
ベビーシッターサービスの仲介業者として、独自のトレーニング・プログラムを開発した「e家政」は、伝統的な「月嫂」と大学生「月嫂」をトレーニングし、サービスの基準を保とうとしています。
大学生にとって、実践のトレーニングは育児経験不足を補うことができます。これまで「e家政」が派遣した60名近くのベビー・シッターの三分の一以上は、このような大学生「月嫂」です。
「e家政」の創業者の林傑さんは、「現在の中国のベビーシッター業界には基準がない状態。新しいニーズに応える必要がある」と言います。
「医療・栄養・介護などを学ぶ大学生・短大生も、専門を生かし、『月嫂』になりたい人が増えている」と指摘します。
大卒「月嫂」の中には、南京師範大学、南京財経大学など有名大学の卒業生がいます。
実際、大卒ベビーシッターはどのような思いで働いているのでしょうか?
南京財経大学卒の劉倩さんは、「実際に赤ちゃんの世話をすることはもちろん大変ですが、それなりの収入を得ていますし、いろいろ勉強できて、充実している」と語ります。
一方、大卒ベビーシッターは、一時的な現象に過ぎないという意見もあります。ベビーケア専門の「月子中心」である「南京有喜之家」によると、大学生の期待と実際の仕事の間にギャップがあり、若者がずっと働き続けるのは困難だと指摘しています。
林傑さんは、「新しい時代にアップグレードされた知識を求める若い世代が出現し、ベビーシッター業界もその変化に対応せざるを得ません。今後も専門性の高いベビーシッターの人気はなくならない」と話しています。
1/12枚