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濃ゆい酒場、女子を魅了 異色の紀行番組「世界入りにくい居酒屋」
世界各国のディープな居酒屋を取り上げる、NHKのBSプレミアムで放映中の「世界入りにくい居酒屋」が女性を中心に人気を集めています。番組プロデューサーに、制作の裏側を聞きました。
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世界各国のディープな居酒屋を取り上げる、NHKのBSプレミアムで放映中の「世界入りにくい居酒屋」が女性を中心に人気を集めています。番組プロデューサーに、制作の裏側を聞きました。
酒場詩人・吉田類さんが各地の大衆居酒屋を訪ねて常連客と酒を酌み交わす「吉田類の酒場放浪記」(BS-TBS、毎週月曜21時)をはじめ、居酒屋をめぐる番組が人気を集めています。
そんな中、NHKのBSプレミアムの「世界入りにくい居酒屋」(毎週木曜11時15分~45分)がじわじわと話題を呼び、この10月からは2シーズン目に突入しました。その名の通り世界各地のディープな居酒屋をとりあげる番組。これまでに放映されたのはベルギー、アメリカ、イギリス、中国、ベトナム、メキシコ、ポルトガル……などなど、多岐にわたります。番組制作の裏側について、プロデューサーの河瀬大作さん(46)に話を聞きました。
――番組制作のきっかけはなんですか?
新しい「紀行番組」を作りたい、と思ったことです。名所を点でたどっていくのが、一般的な「紀行番組」ですが、「居酒屋」のような限定された空間から、その地域の風俗や歴史を逆照射してみるとどうなるのか、と考えました。お酒を飲むと、人の本音が出やすくなるので面白いかな、と思って。お酒や食べ物からその地域を知ることもできますし。地域の人に愛されている店であればあるほど、いろんなものが残っている。
――「入りにくい居酒屋」探しは、どのようにしているのでしょうか?
まずは現地コーディネーターに調べてもらって、もう一人のプロデューサーとディレクターが現地で2週間くらい滞在し、50軒くらいのお店を下見します。1カ国でだいたい2都市撮影をするので、お店が決まったらディレクターが現地に残り、1カ所1週間ずつ撮影をします。地元の人しか知らない「入りにくい居酒屋」なので「ガイドブックに出ているお店には行かない」と決めていたのですが、撮影を決めたお店が「地球の歩き方」に掲載されていたことがわかり、急遽別のお店に変えたこともありました。
――リポーターがいないスタイルにしている理由は?
リポーターがいると、その人に縛られてしまう。観ている人がリポーターの反応とずれてしまうこともあります。できるだけ主観的に観てもらいたいので、特に最初に居酒屋に入るときのカットは「知らない空間に誘われていく」目線になるよう、気を遣っています。
――出演者は大久保佳代子さん、篠田麻里子さん、島崎和歌子さんら女性タレントですが、番組のターゲットは女性ですか?
女の人の方が、直感的に面白いものを観てくれるのではないかと思って。「家飲み」とか「女子会」が一般的になっているので、そういう感覚の延長で、みんなでわいわい飲みながら番組を観てもらえたら、と思って作っています。出演者は、事前情報が全くない状態で収録するので、お茶の間でテレビを観ている人の感覚に近い。「共感の回路」をうまく開けるように、と思ってやってみています。
――実際の視聴者も、女性が多いのでしょうか。
Facebookのファンページがありますが、ファンの内訳を見ると6:4で女性が多いですね。感覚としては7:3くらいで女性が多く、40代くらいがボリュームゾーンだと思います。ファンは約1万人ですが、投稿をすると3000件くらい「いいね!」がつくこともあり、熱心なファンが多いのが特徴です。
――第1シーズンと第2シーズンで何か変えたことはありますか?
第1シーズンの後半くらいから「女子シフト」が強くなっています。女の人が1週間お休みがとれたとしたら旅行に行きたい国や都市をなるべく選ぶようにした方がいいよね、という話になって。台湾とか。「へべれけのことりっぷ」みたいなイメージです(笑)
――特に印象に残っている回はどれですか?
第1シーズンのグアダラハラ(メキシコ)。みんな口説いて、どんどん飲んでる(笑)自由だなーと思いました。第2シーズンだと、10月15日に放送された、バルセロナ(スペイン)。みんなの生活に根ざしている。年金生活に入った人が集って、仲間と一緒に楽しく話してお酒を飲んで、帰って行ける場所があるのが、素敵だなと思って。ああいうところにしばらく住んで、常連になってみたいです。
――河瀬さん自身はお酒が好きですか?
この番組を始めてから、家ですごくお酒を飲むようになりました。人と飲むのが好きなので、外ではお酒は飲んでましたが、晩酌はほとんどしてなかったんです。でもこの番組を始めてからは「いやー酒飲むっていいな」と思って、家で飲むようになりました(笑)
世界入りにくい居酒屋というNHKの番組で紹介されていた、冷やしちゃったポトフという料理が美味しそうだったので、牛肉を豚肉に変えて作ってみた。うまうまー! 作るのに手がかかるけどw pic.twitter.com/Pu4rTrCRGG
— 佐倉 (@sakuramochikash) 2015, 10月 18
――番組では毎回、(VTRで出てきた料理を出演者が食べる)実食コーナーがありますね。
もう1人のプロデューサーが、何よりも食べることが好きで、人に作って食べさせることも大好きという人で。ディレクターが撮ってきた映像を見て、日本にあるもので料理を作っちゃう。出演者の大久保さんとか、いとう(あさこ)さんとか、「ごちそうさまでした!」って言って帰っていきます。次の仕事がないときは、ベロベロになるまで飲んでしまう人もいますよ(笑)
――観ている人に言いたいことは。
家でお酒を飲みながら気持良く観てほしいですね。テレビを観るときに、スマホをいじったりとか、「ながら」で観られるのが、作る側としては嫌なんですね。お酒を持ってしまえば、この世界に入ってもらえるので。
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