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アダルトビデオ業界、違法コピー動画対策に本腰 海賊版削除の現場

アダルトビデオ(AV)業界が違法コピーの動画対策に本格的に乗り出しています。

ネット上の海賊版動画の削除に取り組むAV業界の団体・知的財産振興協会。「自分たちでルールを決めることで、作品の表現がいきすぎないようにしています」。
ネット上の海賊版動画の削除に取り組むAV業界の団体・知的財産振興協会。「自分たちでルールを決めることで、作品の表現がいきすぎないようにしています」。

「肛門は性器か臓器か」

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--審査の基準は同じですか。

 ほぼ一緒ですね。けれど、わいせつかどうかの基準とか、ちょっとした違いもあります。例えば、「肛門は性器なのか臓器なのか」。「性器」と考える団体では、男優さんや女優さんが肛門に触る映像には機械処理、つまりモザイクをかけるわけです。でも、「肛門は臓器」だと考える団体だと性行為にあたらないので、モザイクで隠さなくてもいいわけです。

 そんな感じで審査に多少の違いはあるんですが、いずれは一つにしていきたいというのが業界のテーマですね。それぞれの団体の成り立ちが違うので、一つにするのはパワーがいるんです。話し合いを始めるんですけれど、うまくいかない。でも何かしたいよねとなりまして。じゃあ何から始められるか、共通の問題は何か、となったときに、海賊版対策だろうと。著作権の保護には倫理とか審査とか関係ないから、一緒に守る体制を作ろう、と生まれたのがIPPAなんです。

--業界のリーダー役のメーカーが進めた感じなのでしょうか。それとも自然発生的に話し合いで生まれたのでしょうか。

 もともと団体を統一してほしいというのは、各メーカーさんで強い思いをもっていました。一つのところでやるほうが、対外的にも社会的にも信用が高まる。そこから、団体間で話し合っていったような感じですかね。

乱立する業界団体の「共通の問題」が海賊版対策だった
乱立する業界団体の「共通の問題」が海賊版対策だった

日本のAVメーカー数は?

--有名な団体だと「ビデ倫(日本ビデオ倫理協会)」とかありましたよね。

 もともと歴史が一番長いのがビデ倫さんでした。ところが、2007年に警視庁が家宅捜索に入って。そこでビデ倫は「日本映像倫理審査機構」に組織替えをするんです。で、そのあとに「一般社団法人映像倫理機構」になっていった、という流れがあります。うちの事務所のお隣なんですが。ビデ倫は事実上なくなって、裁判も終わりました。

--では、IPPAに加盟している4団体のうち、どこかが突出して強いというわけでもないんですか。

 ないですね。今後は、段階を踏んで統合する計画です。

--いわゆる「AVメーカー」は日本にいくつあるんですか。

 240社くらいですね。実際はアダルト系のゲーム会社さんや流通さんも入っているので、まあ実質的には200社くらいでしょうか。

都内のオフィスの同じフロアにIPPAと映像倫理機構はある
都内のオフィスの同じフロアにIPPAと映像倫理機構はある

AV業界が「自主規制」する理由

--メーカーはどういうつながりで所属団体を選ぶのでしょう。

 団体ごとに会費が違っていたり、審査の費用とか、そういうもので判断されるのかもしれません。最も加盟社が多い団体が120社くらいが集まっていて、少ないところで10社くらいですね。

--団体ごとの特徴はあるんですか。

 団体ごとに、それぞれの流通大手が入っていたりとかはあります。流通というのは、例えばソフトオンデマンドさん系だったり。それぞれに核となるメーカーや流通がいらっしゃいます。その流通に新しく商品をお願いする際に、じゃあどこどこの審査を受けましょう、というのはありますね。

--メーカーは必ずどこかの団体に入っているんですか。勝手にやっているところは日本にはない?

 いや、あると思います。正直なところ、審査を受けたくないというような。さっきも言ったように自主規制であって、法律で決まっていることではないので・・・。お店で取り扱ってくれるなら、審査受けなくても販売はできるでしょうし。

--自主規制団体を作る意味は、流通に対して「この作品は法的に安全ですよ」とお墨付きをあげることでしょうか?

 それも一つですね。自分たちでルールを決めることで、作品の表現がいきすぎないようにしています。一番怖いのは、何がわいせつなのか、法律で直接、細かく規制されることだと思います。そうならないよう、自分たちで襟を正しましょうというのが自主規制の基本的な理論です。

--審査を通れば、流通側も扱いやすくなるのでしょうか。

 審査を受けている作品だけを扱うお店もあります。こことここの審査を通っていれば、うちは大丈夫ですよ、と。

「SMやロリータで絶対審査とおらない業者も」

--わいせつ性や審査の基準って、時代にもよりますよね。

 時代によって変わりますね。細かい部分は団体によってバラバラだったので、話し合って最低限統一した方がいいよねと。さきほどの肛門の話だと、いまは触るとモザイクが入るよう平準化させていっています。

--「抜け駆け」をした方が得をする場合もありますよね。審査を受けずに過激な表現をしたほうが売れるかもしれない。そういう人をIPPAに引き込むのは難しいですね。

 難しいですね。加盟しないとか、審査料払いたくないとか、SMとかロリータもので絶対審査通らないようなものをつくっているとか(笑)。いろんなメーカーさんがいるのも事実です。

--話し合いが始まったのが2000年代ですか。

 審査統一しようというのが始まったのはもう10年以上前から。話し合いが進んだのはやっぱりビデリンショックの頃からです。あの事件が強烈で、機運が盛り上がって、まずは海賊版からやっていこうとなって。09年くらいの話です。

--ビデリン事件があって、警察側から指導されたとか?

 そういうのは特段ないです。

FC2に怒り心頭のAV業界

--スマホ時代のいま、中国の違法動画サイトとか、XVIDEOSとかを見る人も多いようです。FC2の問題では、IPPAから警察に働きかけたんでしょうか。

 FC2の話は、わいせつほう助で京都府警が摘発した刑事事件の話と、著作権侵害の民事の話があって。IPPAが関わったのは民事訴訟で、いまも続いています。2012年10月に始まって、いまも地裁から動いていません。

--AVの映像をFC2上で勝手に使われて、著作権侵害を受けた数社が一緒に訴えたんですよね。

 メーカーや著作権者といった、原告7社で始めました。業界の代表的な感じでやろうと始めた裁判です。業界には「FC2は何とかならないのか」「他人のふんどしで商売しやがって許せない」という並々ならぬ思いがありまして。

 FC2上の違法動画は大量にあったんですが、最初は35くらいの動画の海賊行為だけでまず訴えました。FC2は会社が米国にあって、なかなか裁判手続きが大変だったのですが、ちょうど民事訴訟法の改正があって、東京地裁で裁判ができるようになって。ただ、何か月もかけてネバダ州の相手側に訴状が届くらしいんですが、本当に届いているかすらよく分からないなか、とにかく裁判にチャレンジしてみようと。

--その民事訴訟の音頭をとったのはIPPAなんですか。

 そうです。ここに加盟しているメーカーさんたちで一緒にやりましたね。

--裁判費用は会費でまかなえるのですか?

 そうですね。東京地裁でやってる裁判なので。米国でやることも検討しましたが、費用が青天井になってしまう恐れがあって。米国でしか方法がないなら、費用が高くてもやっていたと思います。

オフィスの壁にはFC2に関する記事のコピーが多数掲示されていた
オフィスの壁にはFC2に関する記事のコピーが多数掲示されていた

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