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志茂田景樹さん、その金言の数々 ツイッター人生相談、真摯に3年間
直木賞作家の志茂田景樹さん。75歳のいまも、ツイッターでの人生相談、絵本の読み聞かせなど、幅広い人に「語りかける」活動を続けています。
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直木賞作家の志茂田景樹さん。75歳のいまも、ツイッターでの人生相談、絵本の読み聞かせなど、幅広い人に「語りかける」活動を続けています。
二度見必至の個性的ファッション、直木賞作家、90年代には「笑っていいとも!」のレギュラー……。様々な顔を持つ志茂田景樹さん。75歳になったいま、ツイッターでの人生相談や、全国の子どもたちへの絵本の読み聞かせなど、大人から子どもまで、広く「語りかける」活動を続けています。
ツイッターのフォロワーは約26万人。職場の人間関係や親子関係、就活、恋愛など、幅広い悩みが寄せられる。
.@LUV397SOUL もう合わせる顔がない、というのは取り返しのつかないことをしたのに、 その人に対して大変失礼です。心から謝罪し、2度と同じことで迷惑をかけないよう教えを請うべきです。きっと許してくれて親身になって教えてくれるでしょう。誠意が通じるとはそういうことです。
— 志茂田景樹 (@kagekineko) 2015, 4月 21
.@iku0827rai まず親御さんが留年という現実を受け入れ、ちゃんと単位とってくれたらなあと思わないことです。その思いは息子さんにとって皮の鞭でしごかれるようなもの。復習のつもりでもう1年やって駄目だったら学校やめて好きなことをすれば、とゆったり構えましょう。発奮します。
— 志茂田景樹 (@kagekineko) 2015, 4月 20
一つの質問に、数分で答えるそうです。1日に、少ないときで3~4問、多いときは10問ほど。3年以上続けていて、相談者は30代~40代が多いといいます。
ツイッターは140文字。人生相談には短すぎないのでしょうか。「相談者はいろいろ書いてくるけれど、多くの質問の本質は1行です。僕はそれに答えるということ」
今の若者は傷つきやすい、といいます。理由を「自分が楽しく穏やかでいたいから、周りにもそうしてほしいのでしょう。その分、本音を出さないんです」と分析。「ちょっとしたことも内側に抱えてしまう。だからこそ、『こんな小さなことを気にするのか』と思っても、ただ叱責するだけではだめ。きちんと答えてやらないとね」
表参道のZAZAから戻りました。カットとカラーリングの後は身も心もスッキリです。これが元祖レインボーカラーだよ、と今ぐらい威張らせてくださいね。 pic.twitter.com/mGHacWxECF
— 志茂田景樹 (@kagekineko) 2015, 4月 17
志茂田さんのツイッターから、いくつかの金言を紹介します。
【信用を得たいと思っても今のきみが得られる信用はどこにもない。周りを見るといっぱい信用はあるけれど、それはすべて人のものできみの自由にはならない。ないものねだりをしないでひたすら努力して自分を磨く。気がつくと人がいつも寄ってくる。磨かれた自分が放っているものが信用なのだよ】
【不安が沢山溜まったらどんな不安か書き出して見よう。書き出せないものはそれでもう消えている。希望を持とう。些細でいい。友達から嬉しいメールがくる、でもいいじゃないか。1つ希望を持ったら1つ不安を消す。希望は不安を消す消しゴムなんだから。不安をいっぱい抱える人の殆どはただ抱えている】
【愛されていないと解ったら悲しい。でも、貴方はその人を愛しているだろうか。意外と多くの人がそのことを考えない。愛されることが幸せだと思い込んでいる。愛という行為は限りなく能動的なものだということを知ってほしい。共に愛するから愛されるという真実も生まれるのである】
子どもへの絵本の読み聞かせは、1998年に始めたそうです。5歳くらいの子どもたちと、こんなやり取りがありました。
「ラクダってどんな動物か知ってる?」
「背中にこぶがあって、砂漠にいる」
「よく知ってるね。こぶには何が入っているの?」
「水」「あぶら」「栄養」
「服が入ってる」
こんな回答には、こう答えたそうです。
「服、いいねえ。ラクダは砂漠を何日もろくに食べもせずに旅をしている。退屈だね。でも、こぶからきれいな服が出てきて、次々着替えたら楽しいよね」
志茂田さんは言います。「子どもは、でたらめを言っているのではないんですよ。正解は知らなかったけれど、イメージしているんです。服に興味がある子なんでしょうね。そういう答えはほめてやらないと」
「子どもが間違えたら、正しいことを教えないといけない。それは知識です。知識は教えられれば覚えていく。僕らは、感性の豊かさを絵本の読み聞かせで養う。『こぶの中に服がある』というのはいい答えだと思います。そういうところを伸ばしながら、知識も知恵もつけていくのが理想的です」
読み聞かせでは、読む大人も子どもの目線に下がることが大事だといいます。「今から読むから静かに聞いてなさい、という上から目線は『愚』。子どもと一緒に楽しめば、自分自身への読み聞かせにもなりますよ」
最近、話題になることが多い「保育園の子どもの声は騒音か」という問題にも、ふだん子どもと接している志茂田さんならではの意見が。以下、抜粋します。
◇
〈僕は20代の頃、保険の調査員として全国を歩き回っていました。神社や寺の前を通ると、子どもの声が聞こえるんです。境内で子どもが遊んでいると、おじいさんやおばあさんが、自分の孫でなくても見に来ている。元気をもらいに来ていたんですね。この子たちは成長して世の中を支えてくれるんだ、と未来への思いもあったと思います。
だんだん三世代同居が減り、子どもに慣れない単身者が増え、子どもの高い声が耳障りになっているのでしょう。
確かに、駄々っ子が「あれ買って」と騒ぐような、子どもが大人にわがままな要求をしている場合はうるさいですよね。でも、楽しく子どもが遊んで発する声は、どんなに高くてもうるさくない。喜びとともに声が伝わるから。
「『うるさい』と言う人がいるから静かにしよう」というのは対症療法でしかない。なぜ子どもの声を聞くとイライラするのか、そこを掘り下げないと根本的な問題は解決しません。例えば、静かに暮らしたい独り暮らしの高齢者には、孤独感や将来の不安といった悩みがあるのかもしれません。
保育園や保護者は「子どもに理解がない」と壁を作らず、普段からあいさつなどで接点をつくり、理解してもらう努力が大切だと思います。それで「子どもっていいね」とお互いが笑えるようになったらうれしいでしょ。僕は絵本の読み聞かせを16年以上続けています。子どもの声から元気をもらっていますよ〉