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お金と仕事

大塚家具“お家騒動” 久美子社長が語っていた父・勝久会長への思い

創業者会長と長女の社長が対立する大塚家具。久美子社長はかつて「(自分には)父と同じ反骨のDNAが流れている」と語っていました。

大塚家具の経営権をめぐり対立する、大塚久美子社長(右)と父親の勝久会長
大塚家具の経営権をめぐり対立する、大塚久美子社長(右)と父親の勝久会長 出典: 朝日新聞

 経営方針をめぐり、創業者の会長と、その長女である社長が対立する大塚家具。騒動の背景には、経営者としての強烈な信念の対立があります。大塚久美子社長は過去に「(自分には)父と同じ反骨のDNAが流れている」と語っていました。

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来店客を会員にして接客

 大塚家具は1969年、大塚勝久会長が父親の桐たんす店を経て埼玉県で創業しました。東京や大阪、名古屋などに16店あります。

 その特徴は会員に様々な家具の「まとめ買い」を促す販売手法でした。来店客に名前や住所を書いてもらい、会員登録したうえで広いショールームで従業員が付き添って案内します。客にとっては、色やデザインなど、それぞれの家具の組み合わせを総合的に提案してもらえる利便性がありました。

従業員が付き添う接客手法の大塚家具ショールーム=2011年2月17日
従業員が付き添う接客手法の大塚家具ショールーム=2011年2月17日 出典: 朝日新聞

父とメーカーの戦い

 勝久会長が93年から取り入れたこの手法は元々、「価格が不透明な家具販売の商習慣を打破したい」という反骨精神で、メーカーと対立しながら築き上げたものでした。

 「交渉次第で価格が違うなど、実売価格が分かりにくいという不便さがあった」ため、どの客にも価格を安く表示したいと創業当時から思っていました。しかし、値崩れを恐れるメーカーの力が強く、なかなかできなかったといいます。

 「安い表示価格をつけたら、メーカーから出荷停止を通告され、『今後はしません』という始末書を書いたことが何度もあった」と、99年の取材に勝久会長は答えています。
 そこで、業界内で「特定の会員だけが相手だから」という説明がつくため、安い表示価格をつけられるようにする工夫として編み出したのが、会員制販売でした。

「洋服を売る時に、その洋服ならこのワイシャツとこのネクタイが似合いますと、コーディネートして売るようなものです」。接客を重視した自らの販売手法を、そう例えていた大塚勝久会長=1990年11月5日
「洋服を売る時に、その洋服ならこのワイシャツとこのネクタイが似合いますと、コーディネートして売るようなものです」。接客を重視した自らの販売手法を、そう例えていた大塚勝久会長=1990年11月5日 出典: 朝日新聞

自由に見て回れる競合店に劣勢

 こうした異例の手法で業績を伸ばしたものの、近年は、安価な家具を自由に見て回れる「IKEA(イケア)」「ニトリ」などに押されて低迷。
 売上高は03年の730億円をピークに、14年12月期には555億円まで落ち込みました。

買い物客でにぎわうイケアの店舗=2014年4月10日、東京都立川市
買い物客でにぎわうイケアの店舗=2014年4月10日、東京都立川市 出典: 朝日新聞

先代の手法を批判「客が抵抗感じる」

 久美子社長は一橋大を卒業後、富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て26歳で大塚家具に入社。04年に退社し経営コンサルタントに転じた後、父親に請われて09年に社長として復帰します。

 そして落ち込む業績を回復させるため、父親が築いてきた経営手法を次々に変えていきます。既存店では会員制を見直し、都内には北欧家具などを扱う路面店を相次いで出しました。

 久美子社長は「消費者の購買スタイルは単品買いに変わった」「受け付けや接客に客が抵抗を感じている」と理由を語っています。

経営権をめぐり骨肉の争いの渦中にある大塚久美子社長=2013年9月27日
経営権をめぐり骨肉の争いの渦中にある大塚久美子社長=2013年9月27日 出典: 朝日新聞

「父と同じ反骨のDNA」

 そんな久美子社長ですが、対立が表面化する前の13年9月、取材に「父と同じ反骨のDNAが流れている」と語り、父親への思いを明かしていました。

 「(父が始めた店の)隣の倉庫の一角が私たち家族の住まいだった」という久美子社長。「お金は事業に使うため、贅沢はしない」という両親の方針で育てられたそうです。
 「夏の家族旅行に行きたい」と頼むと、家具メーカーの工場見学に連れて行かれました。

 「『(値下げを嫌う)メーカーが商品を売ってくれない』と、悔し涙を流す両親を見て育ったんです」
 苦労して事業を大きくした父親の思いを継いだ社長就任。しかし、父親の手法を否定する改革が対立を招きました。

 久美子社長は自身の人生訓について、こう語っています。
 「人生は計画通りにいかない。でも、どう生きるかは自分で決められる。そっちを大事にしてきた」

【動画】父への思いを語る、大塚家具の大塚久美子社長=2013年9月、戸田拓撮影

深まる対立「悪い子ども持った」「創業者から離れなければ」

 2月26日に開いた記者会見で久美子社長は、「創業者から離れなければならない、ぎりぎりのタイミング」と話し、あらためて勝久会長の退任を求めました。

 勝久会長はこれを受けて、「非常に残念。経営を安定化させるため決意を新たにした」とコメント。25日の会見では、「悪い子どもを持った」とまで言っています。

 今後、大塚家具の経営の主導権はどちらが握るのか。双方とも大株主の説得に動いているとみられ、決着は「委任状争奪戦」に持ち込まれる見通しです。

大塚久美子社長の退任を主張する、父の勝久会長(右)と弟の勝之営業本部長=2015年2月25日
大塚久美子社長の退任を主張する、父の勝久会長(右)と弟の勝之営業本部長=2015年2月25日 出典: 朝日新聞
会見で大塚勝久会長に反論する久美子社長=2015年2月26日
会見で大塚勝久会長に反論する久美子社長=2015年2月26日 出典: 朝日新聞

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