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ピケティ「21世紀の資本」、邦訳が13万部突破 29日に来日講演
トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」の日本語版が13万部を突破しました。お堅い経済書の異例の大ヒットは、なぜ生まれたのでしょうか?
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トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」の日本語版が13万部を突破しました。お堅い経済書の異例の大ヒットは、なぜ生まれたのでしょうか?
トマ・ピケティ氏(43)の著書「21世紀の資本」の日本語版が13万部を突破したことが分かりました。昨年12月の発売以来、5940円(税込み)という高額ながら売れ続けています。異例のベストセラーに、発行元のみすず書房も「これほどとは予想していなかった」と驚いています。728ページの大作という、お堅い経済書がなぜこんなに売れているのでしょうか。
ピケティ氏はフランスの経済学者で、パリ経済学校の教授です。「21世紀の資本」はフランスで発売後、アメリカで人気に火がつき、瞬く間に全世界で100万部を売り上げました。ほぼ無名の経済学者だったピケティ氏は一躍スターに押し上げられ、各国で講演会やテレビ出演などが続いています。
「21世紀の資本」の特徴は、300年にわたって日米欧の税金の資料等を分析し、「資本主義における格差拡大」を実証した点にあります。各国の経済体制には「社会主義」や「共産主義」など様々な形がありますが、旧ソ連の崩壊以降、ほとんどの国が「資本主義」かそれに近い体制をとり、そこでは多くの国民が豊かになると考えられてきました。
しかし、ピケティ氏はこれに一石を投じます。資本主義では、資本の所有者である「お金持ち」に富が集中してしまうメカニズムが働く可能性があることを指摘したのです。第二次大戦後、縮小したかに見えた格差が、再び拡大していることを膨大なデータを使って説明しました。
これが、先進国でも貧しい暮らしをしている人や、貧富の格差拡大に警鐘を鳴らす人々の心をとらえ、世界的なベストセラーにつながりました。ノーベル賞経済学者のクルーグマンが書評で絶賛するなどし、資本主義を批判する人にとっても、擁護する人にとっても「必読の書」になったのです。
そんな大ベストセラー、みすず書房はどうやって出版の権利を勝ち取ったのでしょうか。
争奪戦の末に出版権を獲得したかと思いきや、じつはフランスの出版社から送られてきた定期的なカタログを担当者が見て、「面白そう」と普段通りに決めただけだったそうです。フランスで発売される前だったので、全く世界的なブームは予想できず、目立った売り込みもなかったそうです。
初版から増版を重ね、現在8刷目で13万部発行。すでに9刷も決定済みで、さらに部数が増えるのは確実です。みすず書房の新刊本では創業以来、トップ10に入る売れ行きだそう。6千円近い価格設定は、英語版の40ドル弱と比べると少々高めかもしれませんが、英語圏より読者が少ない日本で「可能な限り頑張りました」(みすず書房)とのこと。
ピケティ氏は今月下旬の来日が決定。29日には東京・有楽町で講演会と討論会が開かれます。その人気は、NHKの「白熱教室」で話題となった米国の哲学者サンデル教授に並ぶのでは、とも言われています。