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在特会写真で批判受ける山谷えり子氏 その経歴と発言

在特会元幹部との写真が批判を受けている山谷えり子氏。安倍氏の側近で、国家観を共有すると言われる山谷氏の経歴と発言を過去の紙面からまとめました。

山谷えり子氏
山谷えり子氏 出典: 朝日新聞
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 安倍晋三首相の側近であり、保守的な国家観を共有していると言われる山谷えり子氏。過激な差別主張を繰り返す「在日特権を許さない市民の会(在特会)」幹部だった男性と一緒に写った写真が、国内外で批判と疑念を呼びました。どういう人物なのか。第2次安倍政権で国家公安委員長・拉致問題担当相などの要職を担う山谷氏の発言や経歴をまとめました。

在特会の元幹部と写真 「知らなかった」

 今回問題視されたのは在特会元幹部が自身のホームページに掲載していた写真。男性やホームページなどによると、写真は男性が在特会関西支部長だった2009年2月に「竹島の日」にあわせて訪れた松江市のホテルで一緒に撮影したものでした。男性の他に山谷氏と一緒に写真に納まった6人のうち、1人は在特会の元京都支部幹部だったといいます。

 山谷氏は、朝日新聞の取材に次のように話しています。

 別団体の事務局長として面識はあったが、在特会に所属していることは承知していなかった
朝日新聞デジタル:山谷氏、在特会元幹部と写真 09年撮影 「所属、知らなかった」

 9月25日に東京・有楽町の日本外国特派員協会で開かれた記者会見では、質問がこの問題に集中しました。街頭で「在日韓国人・朝鮮人を殺せ」などとデモをする在特会に反対するかと問われ、「一般論として、いろいろな組織についてコメントするのは適切ではない」と回答を避ける模様はツイッターで拡散しました。

山谷えり子大臣に「在特会」の質問集中――外国特派員協会の記者会見 2014.9.25 出典: 弁護士ドットコムニュース

 会見で質問した英紙「タイムズ」アジアエディタ-のリチャード・ロイド・ペリー氏は「人種差別グループである在特会の主張を否定するかと質問したが、彼女はコメントできないと答えた」とツイートしました。


 会見での発言は驚きを持って受け止められ、山谷氏や安倍政権への疑念を強める結果となりました。

 会見で追及した米オンライン誌デイリー・ビースト東京特派員のジェイク・アデルステイン氏は「在特会を一度も正面から否定しなかったことに驚いた。米国なら『大臣と問題団体の関係について疑惑が深まった』と大きく報じられる」と話す。

 英インディペンデント紙などに執筆するデイビッド・マクニール氏も「写真だけでは、在特会との関係を証拠づける根拠が弱い」と考えていた。だが、山谷氏が在特会の理念を否定しなかった上、「在日特権とは何か」との質問に対し、「法律やルールに基づいて特別な権利があるというのはそれはそれで、私が答えるべきではない」と答えたのを見て、記事の出稿を決めた。「在日特権の存在を否定せず、特権があると示唆したようにさえ見えた」からだ。

 インディペンデント紙は会見内容も含めて問題を詳報。英エコノミスト誌は山谷氏と在特会との関係に触れ、「ヘイトの一部は政権トップからインスピレーションを得ているように見える」と紹介した。
朝日新聞デジタル:内外メディア、反応に温度差 閣僚が在特会元幹部と写真

 7日の参議院予算委員会でも、野党から在特会との関係を問われ、こう答えました。

在特会と私は全く親しい関係にはない。その方たちが在特会メンバーであるとは全く存じなかった
朝日新聞デジタル:「在特会と知らず」写真問題で山谷氏答弁 やじで紛糾も

 ヘイトスピーチに対する見解を問われると「あってはならない」。安倍晋三首相も答弁に立ち、「極めて残念で、あってはならない」とする一方で、規制については「ヘイトスピーチとはいえ表現の自由とも関わりがある。我が党だけでなく、各党との議論も大切だ」と述べました。

 民主党の小川敏夫議員は、写真の撮影場所が山谷氏が宿泊するホテルだったことを指摘し、親しい関係にあったのではないかと追及。民主党の野田国義参院議員が「懇ろだった」とやじを飛ばして紛糾し、8日に民主党が陳謝する事態にもなりました。

小川氏が「普通はホテルで相手も知らずに会うことはない」と指摘すると、山谷氏は「いろいろな場所でいろいろな方と会うのが政治家だ」と答弁。質疑中、「宿泊先まで知っているっていうのは、懇ろだったっていうんじゃねえか」とやじが飛び、議場が一時紛糾した。
朝日新聞デジタル:「在特会と知らず」写真問題で山谷氏答弁 やじで紛糾も

民社→民主→保守新党

1989年、民社党から立候補した山谷えり子氏
1989年、民社党から立候補した山谷えり子氏 出典: 朝日新聞

 国内外から批判を受けた山谷氏はどういう経歴の人物か。過去記事からまとめてみました。

 山谷氏にインタビューした記事が初めて朝日新聞に登場するのは1989年。サンケイリビング新聞編集長だった山谷氏は、この年の参院選で民社党の比例区で立候補しました。民社党は社会党右派が分裂してつくった社会民主主義を掲げる政党で、自民党を批判する立場でした。

 民社党って良心的なんです。自民党は金権政治になったりして、お行儀が悪いでしょ。あまりに現実的すぎて夢がない。他の党は逆に夢ばかり。民社党は理想を忘れた自民党と、夢みている他の党の間にあって、文鎮のようにピシッと押さえてくれる、議会にはなくてはならない政党です
朝日新聞1989年6月26日朝刊

 この選挙では落選しましたが、厚生労働省の中央児童福祉審議会メンバーに加わるなど、政治に関わる活動は続きます。児童扶養手当の制度見直しをめぐる議論では、女性の自立の必要性を指摘しています。

 手当を減らすなら女性の自立が不可欠。その支援プロジェクトを進めるには、労働省や法務省もオブザーバーとして出席すべきです。関係庁が一体となって問題に取り組む、という動きが鈍いなと感じます
朝日新聞1997年11月13日朝刊

 民社党は1994年に解散しましたが、新進党を経てその流れを組む民主党に加わり、2000年衆院選の東海比例区で初当選。意気込みを次のように語りました。

 選挙期間中は民主党への期待の大きさを感じた。女性、生活者の視点を採り入れて、どんどん意見を言っていきたい
朝日新聞2000年6月26日朝刊
2000年に民主党から立候補し、当選
2000年に民主党から立候補し、当選 出典: 朝日新聞

 民主党時代は、記事にはほとんど登場していません。2002年には民主党から離れ、保守新党結成に加わっています。

落選から自民党での復活

 保守新党は基本政策で、有事法制の早期成立や新しい憲法の制定を掲げていました。2003年11月の衆院選では東京4区で立候補。「横田めぐみさんのおかあさんといっしょに米国に行って参りました」と拉致議連副会長の実績を強調して選挙戦に挑みましたが、落選。当時の選挙情勢記事は「社民層に浸透している」と分析しており、現在とは違う印象を持たれていたことがわかります。

 2004年参院選では解散した保守新党に代わり、自民党の比例区で当選。ジェンダー(社会的・文化的に形成された性別)という概念とそれに基づく教育を強く批判し、保守派の論客として知られるようになります。

 ジェンダーの定義は人によって違い、混乱を招く未熟な言葉だ。しかも、ジェンダー論は男らしさや女らしさを否定し、過激な性教育や家族軽視、行き過ぎた個人主義などを引き起こしている。こうした言葉は使うべきではない
朝日新聞2005年10月4日朝刊

 これらの議論の中心となっていたのが自民党の「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」。山谷氏は事務局長で、座長を務めたのが安倍晋三・現首相でした。第1次安倍政権では、教育再生担当の首相補佐官に抜擢され、内閣が重要テーマに掲げた教育基本法改正を担います。

第一次安倍政権で首相補佐官に
第一次安倍政権で首相補佐官に 出典: 朝日新聞
 いまだにレーニンの言葉を守っているんでしょうか、自虐的な内容の教科書をつくっている
朝日新聞2006年9月27日朝刊
 教育基本法改正、新憲法の制定。戦後の宿題を片づけます。これを次期政権でやりとげなければ、日本の明日はなくなる
朝日新聞2006年9月30日朝刊
靖国神社に参拝する山谷氏(中央)=2006年10月
靖国神社に参拝する山谷氏(中央)=2006年10月 出典: 朝日新聞

尖閣に船、領土問題で脚光浴びる

 第一次安倍政権退陣後、領土問題に関する活動が注目を集めます。

 超党派の国会議員でつくる「日本の領土(竹島、尖閣諸島等)を守るため行動する議員連盟」の会長として、「竹島の日」記念式典では、竹島問題を専門に扱う組織を政府の中につくろうと訴えます。

 領土問題に対してあやふやな態度では、国は存立できない
朝日新聞2009年2月23日朝刊

 外国人参政権の議論では、強く反対しました。

 領土問題を抱える自治体で外国人が参政権を持てば介入を招きかねない
朝日新聞2010年2月10日朝刊

 2012年8月には尖閣諸島で亡くなった人たちの慰霊祭を呼びかけて、船で尖閣へ。政府から上陸の許可は下りていませんでしたが、同行していたうち10人が船から海に飛び込み、泳いで上陸しました。

尖閣諸島へ向かう船に乗り込んだ山谷氏
尖閣諸島へ向かう船に乗り込んだ山谷氏 出典: 朝日新聞

国家公安委員長・拉致担当相・災害担当相に

 第2次安倍政権の2014年9月の内閣改造で、国家公安委員長・拉致担当相・災害担当相に就任。拉致議連での活動を通じて拉致被害者家族会からの信頼を得ており、期待するコメントが寄せられました。

 山谷えり子氏の拉致担当相就任が発表されると、北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんの母・早紀江さん(78)から山谷氏に電話が入った。山谷氏によると、早紀江さんは「本当にずっと一緒にやってきたので、お願いします」と告げたという。

 山谷氏は、早紀江さんが06年に訪米して米議会公聴会で証言したり、ブッシュ前米大統領に面会したりした際に、同行している。早紀江さんは「一生懸命やってくださることと信じている」と語った。めぐみさんの父・滋さん(81)も「この十数年間、拉致問題に動きがなかったが、山谷さんは希望が持てる」と話した。

 拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(76)は「以前から拉致問題について我々の立場にたって早期解決を研究してくれた。即仕事ができるのではないか」と期待を寄せた。
朝日新聞デジタル:横田さん夫妻、山谷拉致相に「希望持てる」 安倍改造内閣

 先月7日に金沢市で政府などの主催で開かれた「拉致問題の早期解決を願う国民の集い」では、次のように語っていました。

 対話と圧力の姿勢を貫き、政府一体となって拉致問題に取り組む
朝日新聞デジタル:山谷拉致相「対話と圧力貫く」 拉致問題集会
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