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くまモンほっぺ紛失事件の真相 仕掛け人が明かす
くまモンが「赤いほっぺ」を無くした事件。昨秋に話題をさらいましたが、このキャンペーンには周到な計画がありました。ブームを作る仕掛けとは?
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くまモンが「赤いほっぺ」を無くした事件。昨秋に話題をさらいましたが、このキャンペーンには周到な計画がありました。ブームを作る仕掛けとは?
くまモンが赤いほっぺを無くしたのって覚えていますか? 昨年秋にネットで話題となった熊本県庁のキャンペーン。実はこれ、20年以上前にあった奇抜な宣伝にルーツがあります。最近、海外でも評価された「ほっぺ紛失事件」を改めて取材しました。仕掛け人たちが今だからこそ明かす事件の真相とは!?
「ボク、なんか変じゃないかモン?」
事件は2013年10月30日朝、くまモンのつぶやきから始まりました。
チャームポイントの赤いほっぺを無くしたくまモンは、東京・銀座にある熊本県のアンテナショップ前で急きょ捜索を開始!
【くまモンのほっぺを探しています】既にご存知の方も居るかと思いますが、くまモンの赤いほっぺがなくなってしまいました!東京にある銀座熊本館にも探しに来ましたがみつかりません。どなたかくまモンの赤いほっぺを知りませんか? pic.twitter.com/HcBGONHunt
— くまモン東京スタッフ (@KumamonStaff) 2013, 10月 30
その後、東京ドームシティで観覧車の上から探したり、警視庁の「ピーポーくん」を訪ねて遺失物届けを出したり。
4日目、熊本県庁が「赤い特産品を食べて、ほっぺが落ちた」と種明かしをしました。
ちなみに、市川海老蔵さんも「ほっぺ探し」をしていたのってご存じですか?
これがご縁で舞台共演もしてます。
くまモンが赤いほっぺを落とすーー。この奇抜なアイデアを考えたクリエイティブディレクター、和久田昌裕さんにインタビューをしました。
「キャンペーンをつくるのではなく事件をつくろう! という企画書を作りました。浅草の雷門や東大の赤門、赤坂サカス(探す)などボツにした場面もあります。くまモンのスケジュールがパンパンで、4日間が限度だったからです。ただ、ほっぺを無くすのは、早い段階で決めていました。そんなことが許されるのか。熊本県庁内でも賛否があったようです」
「企画を提案しようと思った時に、すごく似た昔の事例が頭にありました。『消えた かに道楽』というキャンペーンです。大阪の『かに道楽』の看板がある日、突然無くなるのです。ネットもSNSも無い時代なので、くまモンのつぶやきから始まるという起点の作り方は違います。ただ、すでにあるモノを無くすという手法は一緒で、昔からあったと言えますね」
「消えた かに道楽」を朝日新聞のデータベースで検索してみると、過去の記事がヒットしました。
10日後には、こんな記事も。思いっきり、かぶせてきてますね。
ほっぺ探しは1週間で計3万6164件ものツイートが投稿されました。
話題化のカラクリをチーフPRプランナーの井口理さんに聞きました。
「イベントって、そこに参加した人だけで本来は話題が完結します。そこで今回は、ネットを通じて、自分もその場にいるような疑似体験をいかに作り出していけるかを考えました。くまモンの登場の場所や出方を工夫したことで、追いかけたくなる、見守りたいな、という生活者の人が結構いたと思います」
「マスメディアとソーシャルメディア、SNSなど情報が流れる構造は複雑です。マスメディアが最初に取り上げると、『結論を見ちゃった』と関心が薄れてしまう可能性があります。ソーシャルで話題を継続させながら、終わりを見せないことが、情報の拡散につながったのでしょう」
The Huffington Post
「だますような演出」……熊本県庁の広報活動に、ネガティブな反応をする人もいました。税金も使われていますしね。PRプランナーの根本陽平さんによると、4日間のキャンペーンの舞台裏で、そのことにとても気をつかっていたそうです。
「毎日、ソーシャル上でつぶやかれた声を拾っていました。いまネガティブな声がこれだけある、ポジティブな声はこれだけある、と。もしネガティブな割合が大きくなりすぎたら、その時点でのキャンペーンの自粛もシミュレーションしていました」
「ただ、実際は『ほっぺ、ここで見つけた』といったツイートの大喜利合戦になりました。突っ込みどころのあるネタで、県のPRで冗談だとわかりながら、割合として圧倒的にポジティブな反応が多かったです。私たちの想像以上でした」
<根本さんのインタビューは、8月21日の朝日新聞・朝刊2面「ひと」に掲載予定です。ぜひあわせてお読み下さい>
このチームが企画した「くまモンほっぺ紛失事件のキャンペーン」は今年6月、アジア太平洋地域のPR業界のコンテスト「PR WEEK アワード・アジア2014」で、イベントを中心に展開した部門の「プロモーショナル・アクティビティ・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。525件のエントリーから、日本で唯一の受賞でした。チームは今後も熊本県の応援キャンペーンを続けたいそうです。