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死んだおばあちゃん樹木化でベンチャー? 起業者に聞く
亡くなったおばあちゃんの遺伝子を木に入れて、生きたモニュメントとして抱きついたり、相談したり・・・そんな会社がロンドンで10年前に起業しました。その起業者の一人は実は日本人。なんでそんな会社を?今はどうしているの?聞きに行ってみました。
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亡くなったおばあちゃんの遺伝子を木に入れて、生きたモニュメントとして抱きついたり、相談したり・・・そんな会社がロンドンで10年前に起業しました。その起業者の一人は実は日本人。なんでそんな会社を?今はどうしているの?聞きに行ってみました。
亡くなったおばあちゃんの遺伝子を木に入れて、生きたモニュメントとして抱きついたり、相談したり・・・そんな構想を持った会社がロンドンで10年前に起業していました。しかも起業者の一人は日本人。なぜそんな会社を作り、今はどうしているのでしょうか。会いに行ってみました。
起業者の一人である福原志保さんは、金髪にピンクの口紅、赤いヒールでやってきました。「いやーなんで金髪に?って聞かれるんですけど、覚えてもらいやすいし、いいですよ」と快活に話す、不思議な魅力のある女性でした。現在は結婚し、1児の母でもあるそうです。
会社の名前はバイオプレセンス。当時ロンドンの美術系の大学院に通っていた福原さんと、ジョージ・トレメルさんがイギリスの起業支援を受け、立ち上げました。きっかけは彼らの卒業制作だったそうです。
2人の卒業制作のテーマは、社会にインパクトを与え議論を生むアート作品。2人は、樹木に亡くなった人の遺伝子(※)を入れ、モニュメントにするという案を提案しました。「墓石は冷たいイメージもあるけど、木なら抱きついたり、木陰で過ごしたり、違ったコミュニケーションが生まれる」と福原さん。大学院で発表すると、教授が面白がり、学校外にも公表。国の起業支援を受けることも決まり、国内外から注目を浴びました。(※実際には亡くなった人と同じ遺伝子配列を簡略化したものとして構想)
それにしてもなぜ起業? 理由を聞くと…「会社を作ったら面白いかなと思って」。
軽い気持ちで応募したものの、周囲のサポートもあって審査に通過してしまったそう。イギリス、ロックっす。
しかし、実際に実行に移そうとすると、倫理面の問題から科学者らからの協力を得られず、構想のまま現在に至るそうです。
しかし、起業したことで思わぬ効果も。フィクションだったものが一気に現実味を帯び、「ただちにやめさせろ!」といった批判も出て議論が白熱。まさに当初の狙い通り「社会にインパクトを与え議論を生むアート作品」となりました。構想とともに投げかけた「『おばあちゃんの木』のリンゴをあなたは食べる?」という質問も人々の「感覚」に訴えかけました。「科学的な事実と、感覚にはズレもある。例えば尿を濾過して物質的には完全に不純物のない水にしても、もともと尿だと思うと、どうしても飲むのには抵抗があったりする」生命や身体が関わるテーマだと、こうしたちょっとした嫌悪感などの「感覚」も議論の大きな要素になるようです。
さて、福原さんは今はどうしているのか。実はその後も生物に関わるアートに関心を持ち続け、ついに自宅の台所で実験を始めちゃっていました。
実験用具には、ベビーフードのガラス瓶や寒天、スティックシュガーなどの日用品を駆使。遺伝子操作された「貴重な花」を自宅で培養して増やし、ありふれた花として「コモンフラワー」という作品を発表しました。
現在は、早稲田大や米ハーバード大の研究室に属し、サントリーが生んだ「青いカーネーション」を遺伝子操作で白いカーネーションに戻す研究などを行っている福原さん。「白く戻して見た目にはわからなくなっても、遺伝子には操作した痕跡が残る。それをみんながどう考えるか知りたい」。社会にインパクトを与えるアートへの挑戦は続いています。