IT・科学
ニュースアプリ攻めるグノシー 24億円調達・キャッシュ配信も
ニュースアプリ「グノシー」が世界展開に向けて次々と手をうっている。国内ではニュース提供社への収益還元を始めた。その見返りは記事のキャッシュ。すでに契約した大手新聞社もある。
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ニュースアプリ「グノシー」が世界展開に向けて次々と手をうっている。国内ではニュース提供社への収益還元を始めた。その見返りは記事のキャッシュ。すでに契約した大手新聞社もある。
ニュースアプリ「Gunosy(グノシー)」が攻勢に出ている。24日に「ニュース提供社に広告収益の還元を始める」と発表。前日には「12億円の資金調達を実施」。2日連続のプレスリリースだ。
広告収益の還元とは何か。
グノシーは新聞、雑誌、テレビ、ウェブサイトなどからニュースを自動収集し、その中から利用者の好みに合わせてニュースを選別し、配信するパーソナライズ型のキュレーションサービス。これまではグノシーのサイトやアプリ上で記事の見出し部分を紹介し、続きを読みたい利用者は各サイトのリンク先に読みに行く仕組みだった。
新しい収益還元モデルでは、グノシーが記事の複製データ(キャッシュ)をグノシーのサイトやアプリ内で公開する。ニュース提供社は自分たちのサイトまで利用者が記事を読みに来なくなる代わりに、グノシー内で記事が読まれた回数に応じて広告収入の分配を受ける。「全額還元」という報道も出ているが、報道担当に確認したところ、「全額還元は想定しておらず、固定金額の支払や広告収益からのレベニューシェア、また固定額とレベニューシェアのミックス等を想定している」という。
グノシーの報道担当によると、すでに国内の数社がこの契約を結んでキャッシュ配信を始めている。契約者名は「こちらからは明らかにしない」との説明だったが、アプリを見る限り、すでに毎日新聞や共同通信の記事がキャッシュ配信となっていた。メディア業界では「あの大手新聞社も契約が近い」という噂が広がっている。
【画像説明↓】グノシー内にある毎日新聞のニュース。この画面を下に読み進んでいくと・・・
【画像説明↓】スポンサーの広告が記事中に挿入されています
資金面での拡大も急ピッチだ。3月にKDDI、ジャフコ、B Dash Venturesから12億円調達したのに続いて、今回も同じ3社から12億円。これらは国内外でのテレビCMなどのプロモーションやエンジニア採用などに使うという。
国内でのダウンロード数は今月まで400万件を突破する見込み。4月に英国から始まった海外展開も、早くも米国、カナダ、オーストラリアに広がり、これら海外での総ダウンロード数は「未公開だが現段階で数万件」(報道担当)と着々と伸びている。
昨年5月にグノシー創設者の福島良典さん、関喜史さん、吉田宏司さんにインタビューした。彼らはグノシーを「一人一人に最適化された情報を送る『次世代の新聞』」と呼んだ。東京大院でデータ解析を学んでいた3人が、「ニュースが多すぎるから効率的に集める方法がないか」と作ったサービスは、情報洪水の時代に求められるものだった。
競合するニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」はソーシャルメディア上で話題になっているニュースを集める。もう一つ、注目を集めているニュースアプリ「NewsPicks(ニューズピックス)」は利用者が注目すべきニュースを選んで紹介し、コメントもつけられる。
グノシーの特徴は利用者がクリックするニュースを解析し、個々人の関心にあったニュースを集める「パーソナライズ」だ。これら3つはいずれもキュレーションサービスと位置づけられるが、根本的な思想が異なる。
グノシーのパーソナライズは記事の選別だけでなく、広告でも威力を発揮する。利用者の関心にあわせた広告を配信することができるからだ。
2月にアプリのデザインや仕様を大幅に変えた際、アーリーアダプターの中には「使いづらくなった」と離れた人もいた。だが、大量の資金でテレビ広告をうち、マスを取りに行く強気な戦略は勢いを失っていない。