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業者テストで〝確約〟埼玉の私立高校の慣行、奨学金で「アピール」も

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あるテストの結果を、私立高校の個別相談会に持っていくと、合格の「確約」が得られる――。埼玉県でのそんな〝慣行〟を知っていますか。さらに今年は、「奨学金の確約」まで乗っかってきているというのです。(朝日新聞記者・米沢信義)
私立高校受験を経験した埼玉県民なら誰でも知っているのに、存在していないことになっている独特な慣行があります。
中学生の9割が受ける「北辰(ほくしん)テスト」の結果を持参し基準を上回れば、入試前に学校側が合格を「確約」してくれるのです。
さいたま市の男性は2年前の12月、中学3年生の娘と一緒に私立高校の個別相談会にテスト結果を持ち込み、「確約」の証しとして担当教員の名刺をもらいました。
「生徒は安心できるし私立も生徒確保のめどが立つ。ウィンウィンだ」と語ります。
しかし、この「確約システム」は、どの学校の募集要項にも書かれていない非公式なもの。
業者テストを入学者選抜に使わないよう求める1993年の文部科学省通知に違反する恐れがあるためです。
このシステムに今年、奨学金の「確約」が乗っかりました。
さいたま市のある私立高校は「偏差値72で第一志望なら、110万円の奨学金を給付」と掲げます。
来年度から私立高の授業料も実質無償化が見込まれ、これまでの特待生制度による授業料免除が生徒確保の特典として使えないのが理由です。
校長は「給付でアピールしたい」と取材に明かしました。
県も座視できず、特待生の判定に業者テストを使ったり、保護者にテスト結果の持参を求めたりするのをやめるよう各高校に通知し、実態調査も始めました。
しかし、各校が調査にどこまで回答するかは未知数です。
実態を知るため、県は県職員に調査してみてはどうでしょうか。
「数年前に偏差値を提供し子どもの確約をもらいました」「最近、奨学金も決まりました」という回答を得られるかもしれません。