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#おむつ交換台にカーテンを 「まだ子どもだから良い」と思う危うさ

駅の男性用トイレ。オープンな洗面台の脇におむつ交換台が設置されている(左奥)=井上恵一朗撮影
駅の男性用トイレ。オープンな洗面台の脇におむつ交換台が設置されている(左奥)=井上恵一朗撮影 出典: 朝日新聞社

目次

外出先での子どものおむつ替え。駅や商業施設では、まだ場所を確保することも難しい時があり、つい目をつぶっていたのですが、気づくと〝丸見え〟になっているおむつ交換台の多いこと。子どもたちへの性教育が進む昨今、おむつ交換台はこのままでいいの? 子どものプライバシーの確保について悩んでいた記者が取材しました。(朝日新聞東京社会部・関口佳代子)

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「カーテンがついている!」

きっかけは、1月上旬、なぜ女性トイレだけ行列がいつもできているのかという問題について取材していた時です。訪れた京王井の頭線渋谷駅の女性トイレで、おむつ交換台を見つけました。「えぇ!カーテンがついている!!」。思わず声を上げてしまいました。

同駅には、個室トイレの手前のゾーン、つまり洗面台などが並ぶようなオープンスペースに、大人一人が入れるくらいの大きさの着替えスペースがあり、カーテンで隠れるようになっています。その中に折りたたみ式のおむつ交換台が設置されていました。

京王井の頭線渋谷駅では女子トイレのフィッティングルーム内におむつ交換台が設置されていて、カーテンで隠れるようになっている=東京都渋谷区、関口佳代子撮影
京王井の頭線渋谷駅では女子トイレのフィッティングルーム内におむつ交換台が設置されていて、カーテンで隠れるようになっている=東京都渋谷区、関口佳代子撮影

トイレ内におむつ交換台がある場合、だいたい洗面台の脇など、オープンなスペースに設置されているもの。おむつ交換台に目隠し用のカーテンがついているのを見たのは初めてでした。

京王電鉄の広報担当の坪井繁佳さんによると、2012年にトイレを改修するときに、おむつ交換台の設置を検討して、着替えスペース内に設置したとのことでした。

「子どもだから仕方ないのかな」

記者は4歳と2歳の子どもがいますが、周囲から丸見えの場所にあるおむつ交換台はできる限り使わないようにしてきました。第1子の出産で入院していた時、共同の授乳室で赤ちゃんがおむつを替えられている姿が目に入って、少しびっくりしたことがありました。「子どもだから仕方ないのかな。でも見えていていいのかな」とモヤモヤするようになりました。それ以来、おむつ替えは人目につかないよう心がけることにしました。

なので、なるべく人目を避けられるようなおむつ交換台を利用しますが、常に空いているわけではありません。

そもそも交換台が設置されていないところもあります。子どもが0歳の時には、うんちがおむつから漏れていて、大急ぎで替えようとしたら、おむつ交換台のある個室がなく、普通の個室トイレの中で、子どものわきの下に手を入れて身体を抱えながら宙づりにして、おむつを交換したこともありました。

『その場所で安心して裸になれますか?』

おむつ交換台が丸見えなことについて、疑問に思う人はいないのだろうかーー。「おむつ交換台」「危険」「丸見え」などと検索していると、ある動画に目が留まりました。

2022年12月に投稿された1分足らずの動画。男子トイレ内に設置されたおむつ交換台を映し、「入り口のすぐ近く、誰でも見られちゃうこんなところにある」と説明します。洗面台の横や入り口付近など、人が通る場所におむつ替え台が設置されていることで、撮影者は「(子どもが)盗撮される恐れや鏡越しで見られる危険がある」と危惧していました。

駅に設置された男子トイレのおむつ交換台。視線を遮るものがなく、外から丸見え=神奈川県内、関口佳代子撮影
駅に設置された男子トイレのおむつ交換台。視線を遮るものがなく、外から丸見え=神奈川県内、関口佳代子撮影 出典: 朝日新聞社

注意を呼びかける動画を作った男性(30)に話を聞きました。男性は3歳と6カ月の2人の娘がいます。

男性が動画を作ったのは、ある母親がSNSで、「商業施設でおむつ替えをしていたら、男の人が後ろに立ってのぞき込んでいた」という投稿をしたのを見たことがきっかけでした。

それまで交換台のある場所について考えたことはなかったといいます。「そもそも男子トイレにおむつ交換台があることは少ない。あっただけで『交換できる』と、安心して、危険性を考えるところまで及ばないのでは」と話していました。

男性は「設置者には、自分がその場所で安心して裸になれますか、ということを考えて欲しい」と言います。

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工夫すれば数千円ほど

男性の言葉を聞きながら、これまで見てきたおむつ交換台を思い浮かべました。

例えば、これまで自分が訪れた商業施設の赤ちゃんスペースには、おむつ交換台がいくつも並べられていましたが、くっつき合うように台が並べられているだけで、囲いのあるものは見たことがありません。

自分で立てるようになった幼児を立たせて着替えさせるスペースにも、目隠しはされていませんでした。

一方、併設されている授乳スペースにはカーテンがついていたり、鍵つきのドアがあったり、見えないような配慮がされていました。

もちろん授乳する人のプライバシーが守られることはとても重要なことです。ただ、それと同じくらい自分の裸が見られることをコントロールできない子どもについても配慮が必要なのではないでしょうか。

取材を進めると、横浜市栄区のある公民館ではおむつ交換台をカーテンで覆う取り組みを始めていることが分かりました。工夫して、設置費用は数千円ほどで済んだそうです。

カーテンが取り付けられたおむつ交換台。左手奥にトイレの入り口がある=2025年1月28日、横浜市栄区の市豊田地区センター、山下知子撮影
カーテンが取り付けられたおむつ交換台。左手奥にトイレの入り口がある=2025年1月28日、横浜市栄区の市豊田地区センター、山下知子撮影 出典: 朝日新聞社

子どもに教えるだけでなく

子どもへの性教育が大切だという認識は広がり、保育園などでも小さなうちから性器や胸といった「プライベートパーツ」を「人に見せないようにする」ことを教え始めています。

子どもへの教育は重要ですが、それと同時に、「まだ子どもだから気にしなくていい」と考えてしまう大人側の意識がアップデートされていかなければ、「『性器を人前でさらしてもいい』という間違ったメッセージになることがある」ーー。今回の取材で話を聞いた、乳幼児の性教育に詳しい私立和光小学校・和光幼稚園(東京)の前校園長、北山ひと美さん(67)の言葉に考えさせられました。

取材を通して、大人の工夫次第で子どもの安全を確保できると実感しました。

朝日新聞で取材結果をまとめた記事を出すと、「早急に対策を講じて」という意見も寄せられました。また、男性トイレが外から丸見えな状態であることも多く、「大人も子どもも性的なプライバシーを守られるべき」という指摘もありました。

動画を作った男性は、動画の最後に「環境改善のため声を上げていきましょう」と呼びかけています。子どもの尊厳を守れるような社会にしていくため、声を上げる一人になろうと思います。

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