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中高生に「高原」ブーム、どういうこと?地元卑下でない〝アピール〟
あえて「田舎感」を演出、交流も
いま、中高生に「高原」がキテる――。
そんな調査結果を、Z世代マーケティング会社AMF(代表・椎木里佳)が発表しました。Z世代のトレンドをまとめた調査は数あれど、高原は初耳……。高原の流行にはどんな裏側があるのでしょうか。キーワードは「自然界隈」だといいます。
AMF社が先月発表した、今年上半期の「JC・JK流行語大賞」。インスタグラムの投稿データを、投稿されているハッシュタグやその伸び率などの点から分析。その結果を同社に協力する女子中高生が検討し、順位を決めています。
「バショ部門」では、2位に曽爾高原(奈良県)と、4位に美ケ原高原(長野県)がランクインしました。
AMFによると曽爾高原は「日本一美しい緑として紹介されたTikTok動画が650万回以上再生」され、美ケ原高原は「自然界隈ジャンルを好む女子中高生に注目されている」とのこと。
高原ブームは一体どこから――。代表の椎木さんに話を聞きました。
――高原に注目が集まっていること、実は今回初めて知りました。
まず、この「高原」のトレンドは、「自然界隈」という言葉の流行からはじまっています。
「自然界隈」がSNSで出はじめたのは2023年の夏ごろ。誰が始めたかという起点まではさかのぼれていませんが、その頃からハッシュタグ「#自然界隈」をつけ、SNSで風景写真や動画をあげるようなかたちになっています。
当時は、自分の地元を紹介するとか、代表的なところでいうと等々力渓谷(東京・世田谷)がじわじわと流行していました。
――去年はまだ「じわじわ」だったんですね。
今年に入ってから、徐々に大きなトレンドを生んでいます。
もともと「XX界隈」という言葉も流行していて、XXには自然だけでなく、様々な言葉が入ります。特定のコミュニティを指す言葉として使用されていた言葉ですが、動画のジャンル名としてTikTokで認知されるようになっています。
その「XX界隈」の流行にひっぱられるかたちで自然界隈の流行も後押しされています。
――なかでも「高原」に注目が集まっているわけですが、自然の中でも特に高原。これはどういうことなのでしょうか。
去年流行った等々力渓谷は、自然界隈の中でも都心にあり、タッチポイントのある自然ですよね。
一方で、今年からは「ガチ自然」が目立ちます。
車を使わないといけないようなところや、自然界隈の中でも特に自然好きが行くところとしての投稿があふれるようになりました。
――「ガチ自然」というと、山や海を思い浮かべますが、高原なんですね。
エモさがキーワードです。
行くだけでなく、行ったときのSNS投稿をどう作るかが大切です。「#自然界隈」とハッシュタグを付けた投稿を、自分だったらどう作れるか、という点で、高原の演出のしやすさがあったのだと思います。
――演出のしやすさですか。投稿をする前提で行くというのが、新鮮な感覚です。
中高生世代は、ある意味でテンプレートを好みます。高原などに行く前に、SNSではどんな投稿がされているのかを事前に調べ、ある程度「こういう感じで撮るんだな」というのを妄想してから行きます。
一方で、全く同じものを作っても意味がないということもわかっています。
テンプレートの絶対値は守りつつ、よりイケている感じをどう作り、どう自分好みにアジャストするかを自分の裁量で決めている傾向があります。
――今回ランクインしている高原は、それぞれ奈良県と長野県にありますね。
投稿をしている人は、「地元アピール」のような意図で投稿しているところがあるように思います。
投稿者は、違う地域に住む人に、「すごくいいので、行ってみてね」と場所をアピールするかたちでコンテンツを作り、それに呼応するようにコメント欄では、「他におすすめありますか」とか、「ここを観光するには何時間かかりますか」とか、そういう質問がされている光景も見受けられます。投稿者も、役立てているというのがうれしい様子です。
――地元と自然でいうと「自分の地元にはこんなものしかない」みたいな、卑下する文脈で使うような文化もありますよね。
そういうパターンは自然界隈ではないと思います。
自然界隈の投稿をした人が、別の投稿で、自分の地元は自然だけじゃなくてこういうところもすごいんだと投稿する場合もあります。
あえて「田舎感」を演出し、コメント欄で「都会に住んでいるけど、こういうところで暮らしてみたかった」というコミュニケーションを生んでいるケースもありました。
――あえての田舎感を、しかも前向きな方向で演出するのは素敵ですね。
いままでのSNSの使われ方は、一部のインフルエンサーが「キラキラした自分ををみせたい」というところがフォーカスされがちでした。
しかしいまの使い方は、等身大。自分が見ている世界を見てもらい、共感してほしいという思いを感じています。
――これは地域振興を考える上でも重要な発信の変化ではないでしょうか。
もし自治体がSNSを使った発信をしようとすると、自治体の公式アカウントでの発信となりがちです。
でも、そこまでちゃんとしたものではなく、自然発生的に一般の子たちが発信できていることを知ってほしいです。
自治体もオープンマインドになってSNSの動きを見ることで、若い子たちと連携する方法がこれからも広がっていくといいなと思います。
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