MENU CLOSE

連載

#20 「健康にいい」の落とし穴

出社は「運動になる」のか コロナ太り〝ピークアウト〟の実態は

通勤ありとテレワークの人にはどのくらいの差があるのか。※画像はイメージ
通勤ありとテレワークの人にはどのくらいの差があるのか。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

コロナ太りが〝ピークアウト〟したとのニュースが今月、複数の媒体に並びました。その要因として「健康意識の高まり」と「出社・通勤」が挙げられましたが、通勤ありとテレワークの人にはどのくらいの差があるのでしょうか。ビッグデータを分析した調査結果を交えて紹介します。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

コロナ太り解消も高止まり?

9月初旬、「“コロナ太り”がピークアウト」というニュースの見出しが、複数の媒体に並びました。明治安田生命が20代から70代までの男女5640人を対象に今年7月に実施した、「健康」に関するアンケート調査に基づいたものです。

「健康」に関するアンケート調査 - 明治安田生命
https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2023/pdf/20230906_01.pdf

その調査によれば、「1年前より体重が増えた」人は約5人に1人(22.9%)。2020年以降増え続けていた「1年前より体重が増えた」人の割合が、初めて減少に転じ、「“コロナ太り”がピークアウト」したとされました。

この数年の変化をよく見てみます。「1年前より体重が増えた」人は、2020年は21.2%、2021年は25.0%、2022年は26.0%でピークでした。それでも、今年の22.9%という結果は2020年の調査よりは多く、体重増加を感じる人はコロナ禍以前より高止まりしているとも言えます。

男女別に見ると、男性19.7%、女性26.0%が「1年前より体重が増えた」と回答。体重が増えた理由のトップは「食べ過ぎ」で65.7%、次いで「運動不足」が54.7%という結果でした。

年代別では30〜40代女性には体重増加の傾向が見られました。40代女性では31.7%、30代女性では30.4%と、3割以上が「1年前より体重が増えた」と回答。その理由として「ストレスが増えたから」と回答した人が他の年代より高い結果でした。

この調査結果では、“ピークアウト”の要因として、「運動習慣の定着に加え、行動制限の解除や出社・通学の頻度が増え、日常生活で体を動かす機会が多くなったことが影響か」と指摘しています。

同調査には「運動習慣」についても質問があり、「コロナ禍中に健康づくりのための運動を開始した人は約4割(38.4%)。そのうち8割以上(85.1%)の人が、コロナ5類移行後も運動を継続していると回答しています。

では、「出社・通学」ついてはどうでしょうか。頻度が増えて体を動かす機会が多くなった、というのはもっともらしく感じますが、「出社・通学」は具体的にどの程度、運動になっていたのかは、テレワークなどを考える上で、気になるところです。

テレワで平日の歩行量が2割減

これについては、国内IT企業がビッグデータを活用した分析があります。ヤフー・データソリューションは公式noteアカウントで、ヤフーの位置情報データと職業推定データから得られた結果を分析しています。

リモートワークで運動不足?歩行距離18%減少が明らかに
https://note.com/ds_yahoojp/n/n764d027ce46f

まず、会社員が平日に自宅勤務している割合を推定したデータ(東京都のみ)によれば、新型コロナウイルスの感染拡大前の2020年2月以前は、全体の会社員の約8割は在宅勤務を行っておらず、出社していたとみられます。

これが2020年3月に入ってからの緊急事態宣言により、一変。在宅勤務を行っている会社員は同年4月には2割超、5月には4割弱に。

その後、緊急事態宣言の発令と解除が繰り返され割合は上下したものの、時間の経過と共に出社の割合は高まっており、23年5月時点では約6割が出社している状況です。
テレワーク実施状況の推移(東京都のみ)
テレワーク実施状況の推移(東京都のみ) 出典: 画像提供:ヤフー・データソリューション
2023年4月のデータを基に、在宅勤務者(テレワークする人)と非在宅勤務者(出社する人)の平均的な歩行距離を時間帯別に算出したところ、平日のデータでは「出社する時間(6時~9時)と帰宅する時間(17時~19時)に歩行距離の差が大きく出ています」とします。

出社することで歩く距離が増えると考えられます。 また、休日のデータを見ると「テレワークする人は休日の歩行量が全体的に少ない」ことがわかったとします。

この分析では「テレワークはデータからも地域差があることが判明しています」とし「その差が歩行量に影響を与えている可能性もありそうです」と指摘。また「テレワークという働き方を選ぶ人々の趣味嗜好や生活スタイルの変化などの影響もあるかもしれません」としています。

この結果を、1日当たりの平均歩行距離として算出すると、平日ではテレワークする人が3.40km、出社する人が4.16km。休日ではそれぞれ3.45kmと4.12km。平日にテレワークする人は出社する人と比べて歩行量が約18%少ないことがわかったということです。
平日の歩行距離
平日の歩行距離 出典: 画像提供:ヤフー・データソリューション
休日の歩行距離
休日の歩行距離 出典: 画像提供:ヤフー・データソリューション
世界保健機関(WHO)が2020年に発表した「運動・身体活動と座りがちな行動に関するWHOガイドライン」では、すべての成人について、ウォーキングなどの適度な強度の有酸素運動を「週に150~300分以上」行うことが勧められています。

テレワークをしている人は、約2割の歩行量が減っている可能性を念頭に、余暇や休日の時間を使って、生活に運動を取り入れるのが良さそうです。
今回のような「健康にいい」の落とし穴をまとめた書籍が発売中です。詳細はリンク先から▼

健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本

【連載】「健康にいい」の落とし穴
世の中で「健康にいい」と言われていることや、イメージされることは、よく考え直してみたり、正しい知識を持ったりすると、実は“そうでもない”ばかりか、かえって健康から遠のいてしまうことも――。身近なトピックをフカボリします。

連載 「健康にいい」の落とし穴

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます