ネットの話題
〝あの仏像〟が東京駅ジャック アクスタ配布、マニア興奮のイベント
「東京駅に空也上人が大量発生しています」「空也上人が東京駅ジャックしてる」――。そんなツイートがネット上で話題になっています。記者も東京駅を訪ねてみると、教科書でよく見た、口から6体の阿弥陀仏が出ている姿が印象的な空也上人像が目に飛び込んできました。イベントを企画したJR東海に話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
5月下旬、「東京駅に空也上人が大量発生しています」といったツイートがネット上をにぎわしました。ツイートには大量の空也上人のパネルが並んだ写真も一緒に投稿され、約2.5万リツイートされました。
観光客やインバウンドの人びとでにぎわう東京駅八重洲中央口。イベントスペースを訪れると、「せや 京都、行こか。」(大阪)、「だーる 京都、行きましょうね。」(沖縄)といった47都道府県の方言を口にする空也上人のパネルがずらっと並んでいます。
JR東海によると、これは1993年から毎年春と秋に展開している「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンの一環とのこと。
方言のことばは「そうだ 京都、行こう。」がモチーフになっています。イベント会場では、「これ、教科書で見たことある!」と興奮する人たちや、「パネル多すぎ…笑」とちょっと困惑気味な人たちも。来場者は、ゆかりのある地域の空也上人パネルを探して写真を撮ったり、顔はめパネルで空也上人になりきって撮影したりしていました。
毎朝10時から(休日は午前10時と午後1時から)は、手のひらサイズの空也上人立像のアクリルスタンドが配られています。
数量限定で、平日は250個、休日は500個。しかし平日でも1時間も経たないうちになくなってしまう人気ぶりだそうです。
JR東海の担当者は「普段、仏像や肖像彫刻に興味のない人にも魅力を知っていただきたいと今回のイベントを企画しました。『本物の空也上人立像に会いにいきたい』と思ってもらえると嬉しい」と話します。
空也上人(903~972)は、平安時代に「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱えて各地を行脚した高僧として知られています。
重要文化財でもある空也上人立像は、西国三十三所にも数えられる京都市の六波羅蜜寺に展示されていて、口から6人の阿弥陀如来が現れている変わった姿で有名です。
そんな空也上人のファンクラブ公式サポーターを務めるお笑いタレントのみほとけさん(@mihotoke_chan)も、思わずこの「大集合展」にテンションが上がり、ツイートした人のひとりです。
話を聞きました。修学旅行で京都を訪れた際、空也上人像に出合って、「教科書で見ていた姿よりも、ずっと尊くてかっこいい……!」と恋に落ちたと振り返ります。
空也上人像の魅力を「空也上人の生き様が彫刻となり、あのお像のあらゆる部分から伝わってくるところ」と語ります。
誰も信じてくれないと思うんですが、現在東京駅に空也上人が大量発生しています pic.twitter.com/2S9QEayHuw
— みほとけ (@mihotoke_chan) May 23, 2023
参照:みほとけ(@mihotoke_chan)/Twitter
多くの人をとりこにする空也上人像。みほとけさんは「口から出ている仏像にばかり目がいってしまいますが、別の視点でも注目してほしい」と指摘します。
質素な服装をまとい、土ぼこりまみれで草履をすり減らしながら、懸命に各地を歩き、苦しむ人のために念仏を唱え続けた――。
「平安時代中期は、疫病が蔓延して『明日風邪をひけば死んでしまう』という緊迫感がありました。そんな京都の街で、空也上人は苦しむ人のために寄り添い尽くした人物。像からはそんな一面も伝わってきます」と語ってくれました。
資料などから想像する当時の京都は、コロナ禍に見舞われた近年の日本のようにも思えるという、みほとけさん。
「だからこそ、少しでも移動ができるようになってきた昨今、ぜひ空也上人を拝みに六波羅蜜寺に行ってほしいです」と、今回の展示だけでなく京都にも訪れてほしいと話しています。
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