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〝生〟商品の多様化、食品衛生のプロが危惧する「あいまいさ」
生クリーム、生菓子、生ビール、生ハム、生パスタ……
最近、スーパーやコンビニの商品棚に、「生」がつく飲料や食品が増えたような気がしている記者。生というと、「新鮮なもの」というイメージが先行していたのですが、いくつかの商品名の由来をみると、必ずしもそうではないものも。「生」ってなに?どんなときに使われるの?――。企業向けに食品衛生の研修なども行い、食品安全に関する情報を発信している専門家に話を聞きました。
これまでに、食品メーカーで研究や商品開発を担当したり、工場の品質管理も務めてきたりした今城さん。その経験からも、「生」がつく商品に関しては以前から注目していたといいます。
気になり調べる中で、今城さんは「生の定義があいまいだったり、はっきりしない商品もありました」。
この「定義がはっきりしない」「定義があいまい」ということには「怖さがある」と指摘します。
その怖さの一つとして挙げたのは、「優良誤認」というキーワードです。
消費者庁のホームページによると、優良誤認とは、「一般消費者に対し、(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの」を指し、場合によっては景品表示法違反にあたるといいます。
「フレッシュさを伝えるために『生』を使っているのだとしても、最近では『やわらかさ』をイメージさせる場合もあり、消費者の誤解を生む可能性があります」
今城さんは「消費者にとって、『生』がつく商品に珍味の感覚がある場合もある。だからこそ、こういう商品が生き残ったり、新しいのが出てきたりしているのでしょう」と話す一方で、そこには消費者側も食品に関する基礎知識を持つことも必要不可欠だと指摘します。
「例えば最近、じゃがいもを生で食べるレシピをネット上でいくつもみかけました。『じゃがいもの芽や緑色の部分には、ソラニンなどの毒素が含まれる』などの知識がある人であればいいのですが、毒性のある食品が、家庭料理においても安易に『生』で取り入れられることには懸念を覚えます」
「生」がつく商品名が広がる背景については、消費者が「生」という言葉に「新鮮さややわらかさを感じていて、国民性としても『生』のものを求める傾向があるように感じる」と今城さん。
現在、はっきりとした定義のない「生」の商品に関しては、「命に関わるほどの危険性があるわけではないからこそ、規定がないのだろう」と理解を示しつつも、「現状のまま『生』の表記が氾濫すると、食品安全の意識が不足した生活者に『生』が危険に扱われてしまう可能性もあるのではないか」と警鐘を鳴らしています。
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