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6歳の〝扇風機坊ちゃん〟大好きな愛機がバキバキに…じいじが動いた
レトロな扇風機がたまらなく好きな6歳の「扇風機坊ちゃん」がいます。一番のお気に入りは東芝製の「F-113G」で、出先でも寝るときでも、いつでも一緒。ところがある日、転んだはずみで、抱えていた「F-113G」がひどく壊れてしまいました。坊ちゃんの涙は止まりません。どうしたものか。その様子に、じいじが動き出しました。
扇風機が大好きな男の子は、6歳の保育園児。福岡県在住のなみそさん @omochi_nam01 の息子さんです。
なみそさん一家は、4匹の愛猫とも暮らしていて、その様子をつづったフォトエッセイ「今日も猫だまり」(KADOKAWA)では、「扇風機坊ちゃん」と紹介されています。
坊ちゃんの扇風機好きは、赤ん坊の頃から。保育園の先生は、「泣きだしたら、真冬でも部屋の扇風機を付けてあやしてた」と、なみそさんに話していたそうです。
レトロな扇風機が好みで、4歳の頃から、誕生日やクリスマスのプレゼントとして少しずつ集めていたそう。手に持つタイプやガチャガチャの景品も含めると、現在は80台ほどコレクションしているそうです。
なかでも、大のお気に入りは東芝製の「F-113G」です。東芝のホームページには、1983年製造の機種と説明書きがあります。
淡い水色の4枚羽と、押したときのボタンの音がお気に入りポイントだそうです。
「息子はご飯のときも自分が座る椅子の横に113を置きますし、寝るときも枕元に113を置きます」と、なみそさん。お友達の家に行くときも、海へ遊びに行くときも、たくさんの時間を「F-113G」と共にしているそうです。
ある日、外食に出掛けたときのことです。その日は、なみそさんの父親である「じいじ」たちと個室でのお食事ということで、坊ちゃんは「F-113G」を店内に連れて行こうとしました。
ところが駐車場で転んでしまい、抱えていた愛機が壊れてしまったのです。
なみそさんが振り返ります。「バキッと音がしたんです。113は首から完璧に折れ、自立する事は出来ず、もう電源を付けたらいけないレベルでした」。ただ、幸いにも、息子さんにけがはありませんでした。「大事に抱えていた113が息子を守ってくれた様にも見えました」
それでも、坊ちゃんの涙は止まりませんでした。
「F-113G」は、昭和レトロの扇風機として、中古品市場に出品されることもあります。買い替えることも提案しましたが、 「新しい113じゃなくて、この113がいい」と言ったそうです。
立つことができなくなった「F-113G」をいたわるように、毛布に寝かせていたそうです。
この顚末を知るじいじが立ち上がったのです。
当時の様子と、その後の展開を昨年12月にツイートすると大きな反響がありました。
そこには、こんなことが書かれていました。
「先日ご飯屋さんに行った時に、不注意でいつも一緒にいる扇風機を落としてしまい、首が折れてしまった。 (中略)息子を見かねて本気を出した、おじいちゃんの孫ラブパワーを見てほしい」
じいじは修理を買って出ました。段ボールに入れて送ると、見事なまでの修理をして送り返してくれたのです。ツイートは拡散され「いいね」は1万件を超えています。
「『大事な扇風機』から『じいじが一生懸命直してくれた大事な扇風機』にさらなる進化を遂げたのですね」「孫ラブパワーの詰まった世界に一つだけの扇風機」「全員が全員を愛していて、愛に溢れたお話....!」といった反響がありました。
じいじの修理痕が、さながら「手術」のように見えるため、人気漫画になぞらえて「じじ様はブラックジャック先生ですか?」というコメントも寄せられました。
扇風機が大好きな息子(6)。 先日ご飯屋さんに行った時に、不注意でいつも一緒にいる扇風機を落としてしまい、首が折れてしまった。 立つ事が出来なくなったので毛布で布団を作り、そこにいつも扇風機を寝かせていた息子。そんな息子を見かねて本気を出した、おじいちゃんの孫ラブパワーを見てほしい。 pic.twitter.com/mG4LnAf5Av
— なみそ (@omochi_nam01) December 12, 2022
「F-113G」は故障時、首が折れて完全に分離した上に、接合部分のカバーが割れてしまったそうです。
じいじは、首を接着しただけではありません。ステンレス線や束ねた絹糸を使い、まるで縫うようにカバーをつなぎ合わせました。このときの痕がまるで、手術後のように見えます。
なみそさんの父親は、家電修理に詳しいわけではありません。宮崎県で、釘などを使わずに組む伝統工芸の指物家具の職人をしているそうです。
「この修理法は、父のこれまでの経験の権化ですね。 父が考える中で、1番強度があり、壊れにくい手法を見せてくれました」となみそさん。「あのとき大泣きする息子を目の当たりにしたからこそ、私の父は立ち上がったのだと思います」と話します。
じいじの元から戻った「F-113G」と対面した坊ちゃん。お礼のために動画を撮影したところ、扇風機にチューをしてこう言いました。
「扇風機がね、僕に大好きって言いよるよ」
満面の笑みに、なみそさんも涙が止まりませんでした。
扇風機が大好きな、なみそさんの息子さん。実は、これまで「変わっている」と周囲に言われることもありました。「車は? 電車とか好きじゃないの?」「あの戦隊モノも見ないの?」――。
好きになるものが、みんなが好きになるようなものではないだけ。そうは言っても、息子さんは尋ねてきます。
「僕って変なん?」
なみそさんは、こう言って息子さんを抱きしめたそうです。
「 扇風機だって可愛いもんね! かっこいいもんね! 普通(扇風機に使う)DCモーターとか、ACモーターの話が出来る保育園児はいないよ! 大人と同じレベルの話が出来るってすごいやん!」
この春、「扇風機坊ちゃん」は小学生になります。なみそさんは、そんな息子さんの好きを守り続けたいと話します。
「息子は木や花を見てもきれいだと言うし、犬や猫も大好き。 それと同じように、扇風機の羽の色が美しいと思い、ボタンの音がかっこいいと思う。だから、もっと集めたい、もっと知りたい、と思っているのです。好きを矯正しない。そのためにも、親が心をぐらつかせちゃいけないな、と思っています」
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