地元
清掃工場、煙突の高さバラバラの理由 池袋は210メートル
気になる頂上までの行き方は…。
「清掃工場の煙突の高さは周囲の建物の高さで変わるんです」
世田谷区にある可燃ごみを焼却処理している「世田谷清掃工場」を見学した際、そんな話を聞いた。そんな豆知識を小耳に挟んだら、東京23区内で一番高い煙突や一番低い煙突が気になるというもの。東京23区内の家庭や事業所から出された可燃ごみを焼却する清掃工場や不燃・粗大ごみを処理する施設を運営する、東京二十三区清掃一部事務組合に話を聞いてみた。
疑問に答えてくれたのは、東京二十三区清掃一部事務組合の建設課長の井俣弘治さん。やはり煙突の高さは清掃工場の周囲の建物環境に配慮し、高さを決めているとのこと。
23区内で一番煙突が高いのは、豊島清掃工場。
JR池袋駅から約600メートルに位置し、埼京線、山手線、首都高速が形作る三角形の中心部にある。元々は、1960年に西武鉄道が開業した「池袋スケートセンター」。夏は「マンモスプール」として若者たちに人気のある複合施設だったが、1993年に閉鎖。その土地を利用し、豊島清掃工場は1999年に竣工した。
まさに都会のど真ん中にあるこの豊島清掃工場は、煙突の高さが210メートル。高さの理由は、約1.2キロ離れた場所にある超高層ビル・サンシャイン60をはじめ、高層ビルに近い立地条件にあるためだ。
ただ、「煙突は必ず周辺の建物よりも高くしないといけない」という決まりがあるわけではないという。
清掃工場の煙突からは、排出基準に適合した排ガスが200℃程度で勢いよく噴出している。排ガスは周辺環境へ影響をあたえない状態ではあるが、「高温なことに加え、燃焼後なので酸素濃度が低い」。
そのため、井俣さんによると、「煙突は高くすれば高くするだけ建設費用もかさむ」という課題はあるが、可能な限り周辺環境に配慮した設計にしているのだという。
ちなみに、高温かつ酸素濃度の低い状態で噴出された排ガスは、煙突周辺の大気に薄められ、人がいる高さの空気には影響を及ぼさない。
210メートルの高さ、と聞いて気になるのは頂上までの行き方だ。航空法には、高さ60m以上の物件などに、航空法の基準に準拠した航空障害灯の設置が求められると定められている。豊島清掃工場の210メートルの煙突もその対象だ。航空障害灯の電球が切れたりしたら、頂上まで上がる必要がある。体力のない私が上ると、1時間ほどかかりそうな気がする。夏場は特に過酷な作業になりそう。
ところが、豊島清掃工場には、力強い味方がいる。頂上付近まで設置されているエレベーターだ。
エレベーターは普段、煙突の点検や、排ガスの測定のため、建物の地上階から、煙突の中段付近までの往復で使うことが多い。ただ、年に数回は、航空障害灯の電球交換などが必要になるため、そのときは最上階までエレベーターを動かす。「煙突の最上階まで上がっていくことはレアですね」と、井俣さん。
実際にエレベーターを使い最上階まで行った経験がある、豊島清掃工場長の柳信雄さんは「煙突エレベーターはゆっくり動くので、最上階まで3分くらいかかります」。
清掃工場は、23区内に建替え中の2施設含め22施設あり、そのうち100メートルから150メートルほどの工場にはエレベーターがついていない工場も多く、煙突の頂上まで行く必要があるときは、「100メートルほどの煙突であれば20分ほどかけて階段で上ります」(井俣さん)。
ちなみに、23区内で一番煙突が低いのは大田区にある人工島・京浜島にある、大田清掃工場の41メートル。「工場の建物とほぼかわらないくらいの高さ」という低さの理由は、対岸にある羽田空港。飛行機の運航に支障を来さないよう、高さ制限がかかるエリアのため、この高さになっている。
1/12枚