チンアナゴと言えば、砂から顔を出している姿をイメージしませんか? 実はウナギの仲間。体長は30~40センチほどになり、ひれもあります。体をくねらせ優雅に泳ぐ動画が、ツイッターで話題になりました。
話題になったのは、SNSなどで水族館の魅力を発信している水族館写真家の銀鏡(しろみ)つかささん(@tsukarium)の投稿です。
「初めてこんなに大胆に泳いでるチンアナゴ見た」というコメントとともに、沖縄美ら海水族館(沖縄県本部町の国営沖縄記念公園・海洋博公園内)で撮影した動画をツイートしました。
円柱型の水槽の中で、体をくねらせながら水平に泳ぐチンアナゴ。
普段のイメージと違う姿に、「まるで龍のような…」「初めて知った」「たまには横になりたかったんでしょうね」といったコメントが寄せられ、26万件近い「いいね」がついています。
撮影した銀鏡さんは、これまでに全国の水族館を94園館巡ってきました。
「全体像や泳ぐことは前から知っていたのですが、泳ぐ姿を直接見られたのは今回が初めての経験だったので興奮しました」
泳いだ後は尾ひれから砂に穴を掘って潜り、「よく見るチンアナゴの姿」に戻ったそうです。
沖縄美ら海水族館でチンアナゴを飼育している髙野はるかさんに、話を聞きました。
ーー今回のように来館者がチンアナゴの泳ぐ姿を見られるのは珍しいのでしょうか?
チンアナゴは泳ぎが得意な魚ではなく、基本的には砂に身を隠して暮らしています。大型の魚が上を通ると体をひっこめるなど、臆病で神経質な性格のため、あまり泳ぐことはありません。
自然界で泳ぐ姿を見ることはかなり難しく、水族館の水槽でも見られたらすごくラッキーです。
沖縄美ら海水族館では三つの水槽でチンアナゴを展示していますが、動画にある円柱水槽では頻繁ではありませんが泳いでいる姿を見ることができます。
1日3回あるエサの時間は、泳ぐ姿を見られる可能性が高いと思います。ただ、決まった時間にエサをあげているのではなく、その日の作業によるので見に行こうと思って見るのは難しいかもしれません。
ーーエサの時間に泳ぐことがあるのですね。
水槽ではエサのニオイを感じて巣穴から出てくる個体はいますが、この行動は自然界では見られない光景だと思います。
外敵の多い海で暮らすチンアナゴにとってはリスクの高い行動で、エサを食べるときは巣穴から出ずに顔だけ出して食べます。
水槽は外敵がいない環境なので、時にはエサを食べるために外に出てきてしまうこともあるのかなと思います。
エサの時間のほか、巣穴の「引っ越し」のために砂から出て、いい場所を求めて泳ぐこともごく稀にあります。
いい場所というのは、エサが取りやすい場所や、ほかの個体と密集しすぎない場所があげられます。
自然界では、チンアナゴが泳ぐのは引っ越しのタイミングくらいですので、水族館と自然界の行動とでは分けて考えていただくのがいいと思います。
ーー沖縄美ら海水族館でチンアナゴを鑑賞するときのポイントを教えてください。
沖縄美ら海水族館では、円柱水槽と縦長の水槽、大きな水槽の三つでチンアナゴと、仲間のニシキアナゴを100匹ほど飼育しています。三つの水槽で様々な角度から見られるのが、当館のおもしろいポイントかなと思います。
円柱水槽では、様々な角度からチンアナゴを見ることができます。ごく稀ですが、泳いでいる姿を見られる可能性が一番高い水槽です。
縦長の水槽は水流の向きを調整しているので、同じ方向を向いてエサを食べる姿などを見ることができます。
チンアナゴは自然界でも潮通しのいい場所で暮らしていて、潮の流れに乗ってくるエサのプランクトンを食べるために水流の方向に顔を向けます。
大きな水槽は、館内で一番魚の種類が多い水槽です。チンアナゴがいろんな魚と暮らす姿を見ることができ、周りの魚の動きによって巣穴にすばやく身を隠したり、エサを探して顔を出したりと様々な様子を観察できます。
チンアナゴをじっくり見てみると、周りの個体とけんかしたり、穴から体を伸ばしてふんをしたり、ただかわいいだけではない一面に気づくことができると思いますので、ぜひじっくり観察してみてほしいです。