デパ地下で必ず見る、洋菓子店ヨックモックのロール型クッキー「シガール」。4月下旬、ツイッターに投稿されたシガールと袋の写真が話題になりました。なんと、そのシガールと袋は「木彫り」だったのです。どうやって作ったのでしょうか? 作者(@kibori_no_konno)に話を聞きました。
作者は、静岡県に住むキボリノコンノさん(33)です。4月23日、ツイッターに写真を投稿しました。
形、色、袋の裂け目……木彫りと言われてもなお信じられないクオリティーで、「絶対間違えて食べようとしちゃう」「再現度高すぎてほんと意味わかんない」といったコメントが寄せられました。
ツイートはヨックモック公式にも届き、社長からのコメントも。「いいね」は2万を超えました。
趣味で木彫りの作品を作っているというキボリノコンノさん。普段は木工には全く関係のない会社で事務の仕事をしているそうです。今回の反響や木彫りを始めた理由について聞きました。
ーー2万を超える「いいね」や多くの反響がありました。
キボリノコンノさん:「信じられない」「意味がわからない」というコメントが多く、たくさんの方に驚いていただけてうれしかったです。「弟子入りしたい」というコメントには驚きました(笑)。
また、シガールが好きだというコメントも多く、ヨックモックのシガールがいかにたくさんの方に愛されているのかを実感しました。
ーーヨックモック公式からコメントもありました。
キボリノコンノさん:反応をいただきとても驚きました。シガールを作るときに、ヨックモックで働く方々に喜んでいただけるような作品を作りたいと思っていたので、ヨックモック公式に届いたことはとてもうれしかったです。
ーーなぜシガールを作ろうと思われたのでしょうか? 袋も木で作られています。
キボリノコンノさん:私がシガールの味や見た目の美しさが好きだったのに加え、周囲からシガールを作ってみて欲しいという声もあり挑戦しました。
私は木彫りで人を驚かせたいという思いがあり、シガールだけでなく透明な袋まで木で作ったら驚いていただけるのではないかと思い作りました。
ーーどうやって作られたのですか?
キボリノコンノさん:木彫りのシガールと袋は、シナノキという木材を使って9時間かけて作りました。
【作り方】
1.ノコギリと電動糸鋸(のこ)で木材を必要な大きさに切り出します。
2.電動のベルトサンダーで余分な箇所を削り落とします。
3.彫刻刀で、シガールと袋の形になるように彫り上げていきます。
4.電動のミニルーターでシガールの小さな気泡や袋の切り口の凹凸など、細部を彫っていきます。
5.アクリル絵の具、パステルを使って、シガールと袋に着色をして完成です。
ーーこだわりポイントを教えてください。
キボリノコンノさん:こだわった点は、シガールを食べたときに「シャクッ」となりそうな食感を表現するため、生地の薄さや表面の細かな気泡の凹凸まで丁寧に彫刻しました。
また、袋が透明で透けて見えるように、袋と同じシナノキで下のトレーも作りました。袋の着色をしていないところが、下のトレーが透けて見えているかのように錯覚させることを狙っています。
また、本来は薄いビニールでできている袋を、あえて薄く彫刻せず、袋を裂いた断面に袋の内側を描くことで、光を通す透明で薄いビニールであるかのように表現しました。
ーー難しかったことはありますか?
キボリノコンノさん:見た目通りの形や色で袋を作ると、ただ色を塗った木のかたまりに見えてしまうため、どんな形で作れば良いか、どのように着色をしたら透明に見えるのかを考えるのがとても難しかったです。
ーーシガールはそばに置いていたのですか?
キボリノコンノさん:シガールと袋は常にそばに置いてよく観察をしながら作りました。ただ、シガールの香りの誘惑に負け、作りながら何本も本物のシガールを食べていました。
ーーなぜ木彫りの作品を作ろうと思ったのでしょうか? 食べ物の作品が多いようです。
キボリノコンノさん:コロナ禍で家でできる趣味を探していたときに、家にあった木の端材を使って、彫刻刀でコーヒー豆を彫ってみたのがきっかけでした。
人にサプライズをすることが好きなので、食べられないはずの木をいかにも食べられそうなものに変えて驚いてもらいたいという思いで食べ物をモチーフにして作品を作っています。
ーーどれも昨年から作り始めたとは思えないクオリティーです。以前にも木彫りの経験があったのですか?
キボリノコンノさん:小学生の頃に親に木材や工具を買ってもらい、木で工作をして遊ぶようになっていたので、木材の扱い方や工具の扱い方は自然と身についていきました。
大学時代には木材に限らず様々な素材を使ったものづくりを経験することができたので、幅広い視点でアイデアを生むことができていると思います。
ーー継続して作品を発信しています。何がモチベーションとなっていますか?
キボリノコンノさん:継続して作品を作っている理由は、SNSで人に見てもらうのが楽しいからです。
ひとつの作品を作り終えると、また新しい作品で人を驚かせたり楽しませたいという思いが湧き出てきて、休む間もなく次の作品作りを始めています。
仕事としてではなく趣味で作っていることも継続できている理由のひとつだと思います。
ーー今後はどのような作品を作っていきたいとお考えですか? 目標がありましたらお聞かせください。
キボリノコンノさん:今後は、透明な素材に加え、柔らかい素材、液体など、木では作れないだろうと思うような題材に積極的に挑戦して、より多くの方に驚いて楽しんでいただきたいと思っています。
また、展示会を開いて、写真ではなく直接作品を見ていただける場を作れたらと思っています。