連載
#21 眠れぬ夜のレシピ
「先生、サンタクロースっているの?」 論争収めた先生の答えに感動
誰かのサンタクロースになれる年齢になったんだ
クリスマスが近づくと、ふと頭に浮かぶ大切な言葉。SNS作家・午後さんが描くサンタクロースの思い出です。眠れない夜のレシピ、手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
今回はクリスマスメドレー。
午後さんが好きなクリスマスの名曲を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
今年もいよいよクリスマスが近づいてきましたね。クリスマス、特に特別な予定が入っていなくても何故か好きです。街全体が非日常の空気に包まれるからでしょうか。それともプレゼントを待ちわびた、遠い記憶のせいでしょうか。
いずれにせよイベントにかこつけて、美味しいケーキが食べられるので、私は満ち足りた気分になります。(イベントがあってもなくても、ケーキはよく食べているのですが)
さて、クリスマスの時期になると、毎年思い出す、とあるできごとがあります。
確か小学3~4年生の頃だったと思うのですが、帰りの会の最後に、クラスメイトの一人が「先生、サンタクロースっているのですか?」と、クラス皆んなの前で質問をしたのです。
その日は休み時間に、『サンタクロースはいない派』と『サンタクロースはいる派』の論争がクラス内で起こった日でした。私はすでにサンタクロースの正体を知っていたので、(先生は何と答えるんだろう……)と内心ハラハラしていました。論争中、「サンタはいる派」の子に「いるよね?」と同意を求められても、その子の信じているものを否定したくないし、かといって嘘は良くないしで、曖昧な答えをすることしかできなかったからです。
少しの間を置いて、先生はこう答えました。
「サンタクロースはいますよ。ただ、みんなが想像している姿とは、少し違うかもしれませんけどね」
「いる派」の子たちのしたり顔、「いない派」の子たちからは意見が出そうになりましたが、先生は上手くたしなめて、帰りの会を終わらせました。
私は勝手に安堵して、そして同時に深く、ショックを受けるといいますか……感動していました。
その日の下校中は、ずっと先生の言葉を頭の中で反芻しました。そして、サンタの正体を知っていることで少しだけ抱いていた、自分の愚かな優越感を、恥じました。
大人になった今でも私の中に深く刻まれている、大切な言葉です。
それでは、今夜も素敵な夢を見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。著書に「眠れぬ夜はケーキを焼いて」、「眠れぬ夜はケーキを焼いて2」(ともに、KADOKAWA)がある。Twitterアカウントは@_zengo。
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