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#15 Key Issue
お出かけいけない…子どものストレス、実は大人の問題かも?
コロナ禍で、旅行やお出かけがなかなか出来ず、子どもにストレスがたまらないか心配な人は多いはずです。記者も同僚から「小学校に上がったばかりの一人娘は、夏休み退屈そうにしていました。どこにも連れて行けないし……」と相談を受けました。コロナ禍の自粛は、子どもの成長に影響はないのでしょうか。もしかしたら、それ、子どもだけの問題ではないかもしれません。発達の専門家に聞きました。
子どもと夏休みをどう過ごしたか、全国の親世代1342人に調査した結果(popIn株式会社、8月調査)によると、子どもとの夏休みの過ごし方に満足していない子育て世帯は72%にのぼるということが分かりました。
また、圧倒的に多い理由は、「行きたい場所に行けていないから」で69.3%。新型コロナ感染症の外出自粛の影響で、思うように外出できない実態が浮き彫りになりました。行きたくても行けなかった場所は、「観光地へ旅行」、「遊園地、テーマパーク」、「海」。夏休みらしい楽しみ方ができなかった家族が多いという結果になりました。
さらに、国立研究開発法人の国立成育医療研究センターの「コロナ×こども本部」が5月に発表した、子育て世代や子どもが対象のアンケートによると(保護者2690人、小学生~高校生までの子ども501人に調査)保護者の83%が、子どもが同世代と遊べる場や機会が「とても減った」と答えました。
子どもをのびのびと遊ばせないと、ストレスがたまってしまって成長に影響を与えないか……。不安になる子育て世代は多いはずです。そもそも、子どもの発達にはどう影響するのでしょうか。小児科・小児神経科医で子どもの発達に詳しい小西薫さんに聞きました。
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――商業施設や遊園地など、子どもを遊ばせたい場所がコロナの影響があってなかなか行けないです。ストレスにはなりませんか。
「変異株が広まっているので、そもそも、密になりやすい施設は避けたほうがよいでしょう。子どもは、わざわざお金をかけて遊園地などに行かなくても、身近な公園や自然の中などでものびのびと遊ぶことができます。虫を観察したり、友達と鬼ごっこをしたりするだけでも十分ですよ」
――家の中でこもってしまうことはあまり良くないと思いますが、どうでしょうか。
「テレビはあまり見せたくない、という人もいるかもしれませんが、幼児番組は積極的に使っていいと思います。外になかなか行けないときなど、子どもに遊びのきっかけを作るツールとして活用することはいいと思います。たとえば、一緒に体を動かせる体操や、手遊びなどの紹介など、幼児番組も今は工夫されています」
また、家の中でも、大人にとってはつまらないと思うことの中に、子どもは楽しさを探せるそうです。
「幼児にとって五感を使う『感覚遊び』は大切です。シャワーやホースで水をジャージャー流すだけでも楽しめます。料理でクッキーのたねをこねる動作も、子どもの感覚を刺激できる。ちょっと大人としては手間かもしれませんが、日常生活に一工夫してみてはどうでしょうか」
小西さんは「実は、ストレスをためているのは、大人の方かもしれません」と指摘します。
コロナ禍で自宅でリモートワークをし、さらに、子育ても両立しなければならない。商業施設などに遊びにいったり、旅行にいったりしてストレスを発散させたいと思っているのは大人の方だといいます。
記者自身も、コロナ前のように友人と会食をしたり、子どもと旅行ができずストレスは少し感じています。小西さんによると「実は大人のストレスこそが、子どもへ影響してしまう」というのです。
「5歳ごろになると、大人の顔色をうかがうようになります。それは、相手の気持ちを読み取れるようになってきた証拠。だからこそ、大人がストレスをかかえて子どもに当たってしまわないように気をつけなければなりません」
実際子どもたちは大人のストレスを感じ取っているようです。先に紹介した国立成育医療研究センターが行った小学生~高校生へのアンケートでは、「先生や大人への話しかけやすさが」コロナによって「増えた」という回答は 16%だったのに対し「減った」51%でした。
また、感染対策に大人が神経質になるばかりに、子どもに「消毒しなければだめ」「ここを触ってはだめ」と言い過ぎることも気をつけたほうがいいと言います。「敏感な子どもは、親の顔色をさらにうかがうようになってしまい、のびのびと成長することの妨げになってしまいます」
前出の、popIn株式会社の調査では、実際に行った夏休みに子どもと自宅での過ごし方で一番多かったのが「一緒にテレビを見る」の68.7%に上りました。それだけでなく、「おうち時間」を大人も楽しめる工夫をしているという回答も多くありました。
旅行に行けないことによる不満を「子どものストレスになるのでは」と思っていましたが、実際ストレスを感じていたのは自分だった可能性があることに気づかされました。
親である私が「日常生活に楽しさを見つける」「ストレスをためすぎない」ことこそ、こどもが健やかに成長するには大切だったんだなということを知りました。
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