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サンダルバイバイ!助けたかったら飛び込むな!ドッキリコピーの狙い
水の事故防止、本気の動画
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水の事故防止、本気の動画
「サンダルバイバイ!」「救助したかったら飛び込まない」。毎年のように起きる水の事故を減らそうと、専門家が動画を作成し、呼びかけています。落としたら拾いたくなるし、目の前で溺れていたら「助けなきゃ」となる心理を見越したキャッチコピー。これ全部、実際に起きたケースなんです。
今年の4月7日、東京都板橋区の新河岸(しんがし)川で2人が死亡した事故が起きました。
当時の報道によると、午後4時20分ごろ、区内の小学2年の男児(7)が、知人が落としたサンダルを岸から引き寄せようとしたところ、川に転落。男児は溺れて心肺停止状態でしたが、同日夜に死亡しました。その場で、成人男性2人が川に飛び込んで助けようとしましたが、1人が行方不明になり、男性は11日に遺体で見つかりました。
専門家が注目するのは、この事故は、子どもたちがわざわざ川に遊びに行ったのではなく、日常の遊びの中で川の近くに行ってしまい起きたということです。
動画を作成した「川の事故予防プロジェクト」発起人の一人で、子どもの事故予防に取り組むNPO法人Safe Kids Japanの大野美喜子さんは「川に遊びに行くときには、ライフジャケットを携帯するのが必須です。ただ、普段子どもが外遊びをするために近所の川の近くに行く時は普通、持ち合わせていません。そんな時に、事故に遭わないようにどうするべきかを動画で強調しました」と話します。
動画のテーマは「川あそびを楽しく安全に!〜川に行く時の約束〜」。約2分にわたり、子どもと大人に向けてキャラクターが3つのポイントについて、分かりやすく説明しています。
そもそも、「サンダルが脱げてしまった」ために起きた事故。動画内で、まずは、外遊びの前に玄関でできる「安全な靴の履き方」を解説します。次に、子どもたちには誤って川に物を落としてしまったときは「絶対に拾わないこと」を伝え、最後に大人には救助するときには川に入らずに119番通報することを伝えています。
靴が脱げないためにはどうすれば良いか。正しい靴の履き方や選び方を研究・指導する専門家・吉村眞由美さん(早稲田大学人間科学学術院 招聘研究員)は、「そもそも、サンダルは脱げやすいので、外遊びに適していません」と指摘します。
「子どもは走ったり、跳びはねたり活発に外で活動するため、脱げにくい靴を選ぶことが大切です。スニーカーだとしてもサイズが大きすぎて脱げやすいものだと意味がありません。靴から取り出した中敷きの上に立って、かかとを合わせてください。つま先部分の余裕が1センチ以上空いてしまう靴では、脱げやすくなるので注意が必要です」
スニーカーでも、スリッポンタイプは、足への固定や調節ができないため、おすすめできないといいます。
動画では、外遊びに出る前、まず玄関で靴の安全チェックをすることをすすめており、3つのステップを紹介しています。
靴の安全チェック3ステップ
①つま先立ちをしてみる。かかとが靴とずれて動いてしまったら、脱げやすくなる危険のサイン②かかとを地面に「トントン」して、かかとをしっかり固定する
③ベルトや靴ひもを「ぎゅーっ」と締めると、と靴が足にぴったりくっついて脱げにくくなる
吉村さんによると、日本人は歴史的に下駄や草履など、サンダルに近い履物を身につけてきたため、夏にはサンダルを好んで履く傾向が強いといいます。
吉村さんは「どうしてもサンダルを履きたい場合、ビーチサンダルのように、かかとを覆うものがないタイプではなく、スポーツサンダルのように足首とかかとが固定・調節できる留め具のあるものを選んでください」とアドバイスします。
さらに動画では、毎年のように、川に靴などの物を落としてしまい、それを拾おうとして川に転落する事故があることを指摘しています。
水辺での事故を防ぐために、啓蒙活動をしているNPO法人AQUA kids safety projectのすがわらえみさんは「サンダルバイバイ!」というキャッチフレーズを提案し、物を落としても絶対に川に入らないことを、普段から講習会で伝えています。
保護者の子どもへの接し方も重要だといいます。すがわらさんは、「子どもは、靴を無くして親に叱られることや、お気に入りの靴を無くしてしまうことを恐れて、靴を拾おうとしてしまいます。川に落ちてしまったら、助かる可能性は低いです」と話します。啓発動画では大人に向け「お子さんが帽子やサンダルが川に流されたと家に帰ってきても、叱らないであげてください。それは子どもにとって、命を守るために大事な行動の1つだからです」と呼びかけています。
この事故では子どもを助けようとして飛び込んだ大人も1人亡くなってしまいました。動画内では、「溺れている子どもを見つけたら、まずは119番通報」としています。さらに、「いくら泳ぎに自信がある人でも救助隊以外の方は飛び込んではいけません。助けようとしてあなた自身の命も失ってしまうリスクがあります」としています。
プロジェクトには川の事故で家族を亡くしたメンバーがいます。子ども安全の講師をしている岡真裕美さん(大阪大学大学院特任研究員)の夫は、2012年、川で溺れた人を助けようとして亡くなりました。大阪府茨木市の安威(あい)川に、一列に渡るように置いてあるコンクリートブロックの上で遊んでいた小中学生3人が川に転落。川は見た目は浅く見えましたが、ブロックから川下は深くなっていました。助けようと飛び込んだ夫と、中学生1人が亡くなりました。
いつも通りランニングに出かけた夫は、約束の時間になっても帰って来ませんでした。携帯は自宅に置いてありました。消防に電話し、夫の特徴を伝え、やっと夫が亡くなったことを知りました。当時、子どもはまだ5歳と2歳でした。
「夫はなぜ亡くなったのか。これ以上犠牲者を出さないためにはどうすればいいのか」。その後、行政に問い合わせても、解決しませんでした。
「事故を防ぐためには自らが知識を付けて発信力を付けたい」と、大阪大大学院に入学。身近で起きる事故の予防について研究し、啓発活動をしています。「助けに飛び込むことで、第2の犠牲者が出てしまうかもしれません。残された家族のことを考えてください。飛び込むだけが救助ではありません」と訴えています。
川の事故予防プロジェクトが作成した動画は、「是非親子で見て欲しいです」とSafe Kids Japan の大野さんは話します。「SNSなどで拡散し、社会として、認識して議論する場になって欲しいです。良い意見でも悪い意見でも、関心が少しでも向き、子どもの安全について考えるきっかけになれば」と話しています。
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筆者は今まで、水の事故は、わざわざレジャーや水遊びをしていて起きると思っていました。今回の取材を通して、日常の遊びの延長線上に事故は潜んでいることに気づかされました。さらに、靴の履き方も気をつける必要があると知り、目からウロコでした。私は自分の靴を選ぶときに、簡単に脱ぎ履きしやすいように緩めのものにしてしまっていました。吉村さんによると、靴文化の長いヨーロッパでは、親から子どもへのしつけとして、靴紐をしっかり結んで脱げないように教えているそうです。子どもへの靴選び、履き方も注意しなければいけない、と気持ちが引き締まりました。
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