話題
妊活でバンド休止 ホルモン・ナヲさんの「これだけは言いたい」こと
「今からでも病院に検査を」「男性も積極的になってほしい」
ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」の女性ドラマー、ナヲさん(45歳)は、34歳で長女を出産後、39歳で第2子の出産のために妊活を始めることを決意し、バンド活動の休止を発表しました。しかし、妊娠8週目で流産。どん底に落ちるまで悩み苦しんだ末に、40歳で無事に次女を出産しライブ活動を再開しました。「妊活」という言葉がまだ定着していないころ、バンド活動を休止する決断に踏み切れたのはなぜなのか。子どもがほしいと思ったらどのように妊娠・出産の準備や心構えをすればいいのか。YouTubeたかまつななチャンネルで話を聞きました。(時事YouTuber たかまつなな)
――そういう思いをされたからこそ2人目は妊活を宣言され…。
2人目を産むことを決めたらライブは絶対にしちゃだめだって思いました。なので「妊活します」って、宣言して私は検査をしていわゆる不妊治療をする訳ではなかったんですけど、妊娠・出産まではバンドを止めることしか私の中では選択肢がなかったんですよね。でも、そうなるとバンドメンバー、スタッフ、みんな止まっちゃうわけじゃないですか。2人目がほしいことはみんなにも相談をしていたんですけど、例えばこのイベントは出たいよねとか、この曲出してあの曲出してとかって何年もタイミングを見計らってズルズルしているうちに、いよいよ「私、今年40歳なんですけど…」というところまで来て「だよね」って。その結果、6年もかかったんですけど、メンバーも事務所も妊活を認めてくれたことを本当に感謝してます。
――よく宣言できましたね。
妊活という言葉ってたぶん(お笑いトリオの)森三中の大島美幸さんの話題(2014年に妊活のために芸能活動を休止したこと)でみんなに認知されたのかなってイメージがあって、私も妊活をするときに大島さんが言ってくれたから言いやすかったところもあったんですよね。なのでこういう形でマキシマム ザ ホルモンをお休みしますっていうのをブログで発表しました。
――お仕事をしながらではやっぱり大変でしたか?
ナヲ:私の仕事が特殊なのはもちろんあるけど、妊活…特に不妊治療ってなると、普通のお仕事をしていても、病院で「じゃあ明日排卵なので卵子を採ります。朝9時に来てください」って言われて、明日仕事なんですけどと思いながらも、急遽仕事を休まなきゃいけなかったりして大変だったという話をたくさん聞きました。そもそも1年に12回しかチャンスがないし、排卵予定前後2日間のうちでも厳密にいうと何時間とか、細かい確実なところをとっていくと、子どもができるって奇跡みたいなもので。
もし、妊娠できたとして、そのあとにライブが入っていたら全部キャンセルしなきゃいけなくなるので、いろんな人に迷惑をかけちゃうし、だったら妊活という形でお休みをちゃんといただいて取り掛かろうと思いました。それでも、みんなにも休んでもらっているし、妊娠・出産しないと活動を再開できないから、超プレッシャーでした。
――決断の背景にはいろんなご苦労があったんですね。
ナヲ:だからすごい悔しかった。他のメンバーは、弟のマキシマム ザ 亮君も子ども3人いるし、ベーの上ちゃんも子ども3人いて、でも普通に変わらずバンドは続けているわけじゃないですか。私も子どもをほしいと思うけど、結局私がほしいっていうことは、私がライブができないわけで、仕事ができないわけで。旦那が産んでくれりゃあなって思うことはあったけどね。(笑)たぶん、私たちが妊活で休んでいる間に離れてしまったファンの人とかもいると思うし、あれ以降聞いていないって人も絶対にいるだろうし。
――休んで出産されたこと、全く後悔はないですか?
ナヲ:全く後悔はないし、むしろメンバーとスタッフと、待ってくれていたファンに本当に感謝しています。今ね、2人目の次女がかわいいんだ。その子をかわいいなって思うたびにね、みんなに感謝してる。みんなが休ませてくれて妊活を支えてくれたからこそ、今この子がここにいるんだなと思うと泣けてくるよね。本当にありがたいです。
――妊活するということを堂々と言える人ってまだ少ない気がします。
ナヲ:1人目の子どものとき、ママ友達からいろいろ話を聞いていたのが大きかったですね。子どもの保育園は25人クラスだったんですけど、25人中2人、実は不妊治療で授かった子どもなんだよっていうのを聞きました。そのうちの1人のお母さんなんてすごくあっけらかんと不妊治療にかかった費用を言うこともあって。でも、生まれてきてくれたからそうやって言えるけど、言わない人の方がほとんどだしねとか、そういう話を聞いていたので。
――2人目のお子さんの妊活に入られたときに、流産もされたと伺いました。
ナヲ:流産したことって、ほとんどの人がたぶん言わないと思うんですよ。メンタル的に言えない。私は発信していくべきだなと思って。お母さんって流産したとき、自分があのときあれしなければよかったとか、あのときあんなことを思っちゃったのが原因なのかとか、責任を感じちゃうんだよね。だけど、そういうのは本当に関係ないの。私も思っちゃったけど、そのときにママ友が私も流産したことがあるから分かるよ、でも絶対あんたのせいじゃないからって言ってくれて、そのときにすごく救われて。
みんな言わないけど、実は流産経験されている方ってけっこういて、私はすごく支えてもらって助けられたから、私がこうやって発信することによって、私だけじゃないんだって思ってくれる人が1人でもいたらいいなと思って。すごいつらかったから、そのつらさを共有できるだけでふっと軽くなるんだよね。
――それを長女の方にもおっしゃったんですよね?
ナヲ:長女が年中さんになったぐらいのころですけど、周りがどんどん妹とか弟とかできていくのに「なんでうちには赤ちゃんが来ないの?ママのお腹のお肉が邪魔で赤ちゃんが来られないんじゃない?」みたいな。うーん、なきにしもあらず!みたいな感じで答えていて(笑)。すごく妹がほしいって言っていたから、妊娠したときに赤ちゃんできたよって教えちゃったんだよね。私もそのとき、まさか流産するとも思っていないし。長女には「お空に帰っちゃったんだ」って話をして、泣くかなと思ったら泣かなくて。そしたら長女が「そっか、忘れ物しちゃったんじゃない?」って言って。すごく不思議なんだけど、「たぶん忘れ物を取ってきてまた来るんじゃない」みたいなことを言ったの。こいつすごい!と思って。「そうだね、忘れ物取りに行ってまた帰ってきたらいいね」って。
何日か経って、私が仕事でいないときに、うちの母が長女に「赤ちゃんのこと覚えてる?」って聞いたら「忘れるわけないじゃん、一日だって忘れたことないよ」って言ったらしくて。もう泣けちゃう。そうだったのかと思って。そう!それこそついこの1週間ぐらい前、娘達とお風呂に入っているときに長女が下の子のことを「一回お空に帰ったよね」って急に言い出して。「そのときお空に忘れ物して帰って戻ってきたのがこの子です」って。「もう忘れ物しておドジなんだから」って。泣けちゃうでしょ。流産のことは話さないほうがよかったのかなとか今は思うけど、当時長女は私の気持ちにもすごく寄り添ってくれたから助けられました。
――救われますよね、そんなことを言ってくれたら。
ナヲ:妊活していたママ友から、生理が来るたびに泣いてるって聞いて、最初は「それは言いすぎでしょ」とか思っていたけど「また駄目だったのか…」って実際すごく落ち込んだしすごくその気持ちが分かる。本当に年に12回しかチャンスがないんだって思うと、またチャンスが減った、って。残りの持ち玉がどんどん減っていくような変な焦りがすごかったです。
――私はいま27歳なんですけど、将来子どもがほしいなとは思いますけど、そんな日が来るのかと思うと考えさせられます。
ナヲ:悩むことなくすぐに子どもができるのが一番いい。だけど今悩んでいる女性はすごく多いし、たぶん今日もトイレで「はぁ、また生理が来てしまった」って泣いているママさんもいるっていう事実があることを知ってもらいたい。うちは幸運なことに生まれたけど、妊活していることを誰にも言わずに頑張っている夫婦も実はすごくたくさんいて。
不妊治療の産婦人科に行くと、びっくりするくらいたくさんいて、何時間待ちか分からないくらい、朝から待合室のロビーが混んでいる。私も世の中、こんなに毎月毎月悩みながら頑張っている人たちがいるのかって初めて知ったし。診察室から出てくるときに、看護師の方に肩を抱かれて泣きながら出てくるお母さんとかいるのよ。そうすると本当に、大丈夫頑張れって声かけたくなるよね。
――そういうのが分からないと「そろそろ子ども作ったら」みたいなことを言う人も…。
ナヲ:「いい加減2人目作りなよ」とか「あんた結婚して何年目?」みたいなね。悩んでいる人が多いから子どもに関しての言葉は気をつけてほしいな。もちろん子どもを作らないっていう選択も全然間違いじゃないと思うし、夫婦だけで楽しく生きていくんだっていう人たちもそれはそれで素敵だし。
――流産とかすごく大変な経験をされて、そういうとき、どうやって乗り越えてきたんですか?
ナヲ:私は流産のときは本当にドーンって落ち込んだし、メンタルもだいぶやられたし。でも私はどん底までどっぷり浸かっていいと思う。もうだめだっていうのを何日間でもいいから、どん底まで下がって、そしたらあとはもう這い上がるだけだから。そのときの底の砂をちょっとだけでも持って上がってきたら、あのときつらかったよねって同じ砂を持っている人たちと見せ合って、心がちょっとでも軽くなれるから。
――ナヲさんが積極的に発信するようになって、悩んでいる人からの反応はどうですか?
ナヲ:いろんな相談が来ます。妊活してるんですとか、いま何年頑張っているんですけどとか、実は流産しちゃいましたとか。でも私も妊活することに決めましたって人は多いかもしれない。どうせホルモンもライブをしないんだったらこのタイミングで私も妊活します、一緒にがんばりますとか。嬉しかったね。あと妊活中なんですけどなかなか出来なくてって人が話かけてくれる事も多くてそういう時は私の妊娠パワーをお腹に送ってます。それで妊娠できました!って人も何人かいるんですよ、まじで。妊娠中の方への安産パワーもあるし、逆子も私の念力でまじで数時間後に治ったこともあります。まじで!(笑)
――勇気をもらっている方がたくさんいらっしゃいますね。一方で、まだ具体的なイメージが湧かない人もいると思います。不妊治療で悩んでいる人がどういう悩みを抱えているのかとか。
ナヲ:これだけは本当に言いたいんだけど。とにかく今、結婚を考えていないけど、彼氏もいないけど、子どもがいつかほしい人がいたら、今からでも遅くないから病院に検査しに行ったほうがいい。もし何かが見つかっても今から治療すれば、もし彼氏ができて、やっぱり私この人と結婚して子どもを産みたいってなったときに、すぐ妊活に入れるんだけど、そのときに、あれ子どもができないわ、なんでだろう、こんな病気が見つかった、じゃあ治療しましょう、治療しました、治りました、じゃあしましょうって言ってたら何年経ってるのって。
――検査はパートナーができてから行くものだと思ってましたけど、確かに1人で行ってもいいですもんね。
ナヲ:全然いいよ。あと、もう一つ言っていい? 私の感覚だと、とにかく男がまじで協力しない率が高い。
――協力しないってどういうことですか?
ナヲ:夫婦で子どもほしいよね。じゃあ病院で調べましょうかってなって、女の人は検査行きます。なんでもなかったです。でも子どもができません。旦那さんに検査に行ってほしい。旦那さんは「おお、行くわ」って言っても全然検査に行かない。それで子どもができないままっていう。男性はちょっと行きづらいんだとも思うんだけど、何だろう、女性ほど前のめりじゃないのかな。でも子どもがほしいって気持ちは一緒だと思うんだけどね。そういう話をよく聞く。
――なんで協力してくれないんですかね?精子を採るのが恥ずかしいんですかね。
ナヲ:人工授精をするときもその日に採らないといけなかったりするから、恥ずかしさは大きいかもしれないよね。そんなこと言ったら女性は先生の前でお股バーンて見せてるんですけどっていうね。(笑)あと男性的にはもし自分に何かあったときにどうしようって怖いのかな。でも行ってほしい。
――ナヲさんの場合はどうだったんですか?
ナヲ:うちは本当に前のめりで、妊活に入る前に検査した。「ここから妊活に入りますよ」と言ってから検査したら遅いから、みんな待たせちゃうから、妊活しますよっていう前からライブしながら調べて、パパも調べて、みたいな。うちは1人産んでるからたぶん大丈夫だと思うけど、一応一通りいろんな検査をして「大丈夫でしょう」ってなって。その先生曰く、体的に問題がなくても、卵子も精子も問題なくても、全然できませんってこともあるみたい。
――旦那さんが一緒に前のめりになってくれることで精神的な支えになるものですか?
ナヲ:そうね。1人じゃどうしたって子どもを産めないから、子どもを産みたいよねって夫婦で決めたら相手の気持ちを思いやってあげる。夫婦で子どもがほしいっていうモードに入ればあとはアクセルを踏むだけだから。
――最後に、今妊活で苦しんでいる方にメッセージをお願いします。
ナヲ:図々しくいろんなことを言って、図々しくいろんな人に頼って寄りかかっていいと思います。妊娠できてからも、出産してからも、みんな図々しくいきましょう。1人じゃなかなか難しい問題だと思うので、いろんな人に図々しく頼っていきましょう。
――私もまずは検査に行きます。ありがとうございました。
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