ネットの話題
通勤電車が無理だった…在宅勤務が広げた「働く機会」と新たな悩み
多くの障碍や持病をお持ちの方が、その方にあった働き方を見つける事ができればいいなと思います。
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多くの障碍や持病をお持ちの方が、その方にあった働き方を見つける事ができればいいなと思います。
A型とB型の違いって知っていますか? 血液型の話ではありません。一般企業では働きにくい障がいを抱える人であっても、社会の一員として働くことができる施設における、二つの種類を指します。新型コロナウイルスによって定着しつつある在宅勤務は、障害のある人たちの働き方も広げました。一方で、可能性が広がったからこそ見えた課題もあると言います。A型とB型のはざまで悩む30代の女性に話を聞きました。
千葉県の就労継続支援B型で、イラストやデザインの仕事をする、こまちみゆたさん(@miyutaeokiba)は、新型コロナウイルスを機に始まった在宅勤務で、働きやすくなった経験から「その方にあった働き方を見つける事ができればいい」とするマンガをツイートしました。投稿には1万以上の「いいね」がつき、同様の悩みを抱える人たちからもコメントがつきました。
仕事の話になると食える、食えないの話になりがちですが働くってもっとハードル低くてもいいんじゃないかなと。障碍者が在宅で働くという事。 pic.twitter.com/cGDaudw1VM
— こまちみゆた (@miyutaeokiba) October 15, 2020
こまちさんは広汎性発達障害、統合失調症、橋本病と付き合いながら生活をしています。感覚過敏、過集中と注意力散漫の凸凹、時期によっては気力が減退することがあります。また、自己免疫疾患による疲れやすさや、ひどい物忘れなどの症状もあります。
以前、「最低賃金が保障されている場がよい」という希望から、就労継続支援A型で週5日の勤務を経験したこともありましたが、「体力的に続かなかった」と、1年足らずで退所することになりました。
その後、就労支援センターの相談員の勧めで現在の就労継続支援B型の職場に勤めることになりました。
新型コロナウイルス流行前、こまちさんは自宅から電車で通勤していました。
週2日、午後からの勤務でしたが、通勤時の電車の音や、ラッシュ時のざわめきなどがストレスとなり、通勤途中で気分が悪くなり自宅に引き返すことも。
「緊張しやすく、聴覚過敏もあるので、長時間の電車通勤だけで疲れてしまっていた」と振り返り、事業所に着いてからも、多くの人の中にいると、疲れがひどく出たといいます。
そんな中、新型コロナウイルスが流行し、作業所も在宅勤務対応となりました。こまちさんの仕事はパソコンを使ってイラストやデザインを制作したりデータ入力をしたりするものだったため、「問題なく移行できました」。
すると、通勤によるストレスがなくなり、急な体調不良があっても業務時間をずらして回復してから作業ができるようになり、週5日、1日6時間の勤務が可能になりました。
「過集中の後の疲れで気分が悪くなってしまうことがある」というこまちさんは、通勤していたときは「職場に横になれる休憩スペースがなく、机でじっと座っているしかできなかった」と話します。しかし現在は「自分の布団ですぐ安静にできるので回復も早いです」。
「私のように勤怠が不安定になりがちな精神障碍者にとっては、通勤のストレスから解放され、自宅で落ち着いて作業できるテレワークはとてもいい働き方だと思います」と話すこまちさん。
一方で、在宅での仕事環境を整えることが難しい人や、自己管理が難しい人、作業所でのコミュニケーションがしたいという人にとっては在宅勤務がベストではない場合もあるとし、「必ずしも万人に合った働き方ではないかな」と話します。
その上で、「悩みを抱える人が分け隔てなく公的支援のようなものに繋がれるといいと思います」。
一方、「課題がある」とするのが、B型の工賃です。こまちさんの事業所の工賃は時給約170円で「週5働いて月収は2万円弱」。
「B型の収益性を考えるとやむをえません」としつつ「自立することは難しい収入」です。
そのため、現在はA型事業所や障害者雇用で在宅勤務が可能な就職先を探しています。
「ただ、テレワークを扱っている作業所が少ない印象です。見つかっても遠方、ということもあります」と、こまちさん。
「それに、テレワークを扱っていたとしても、面接や体験実習期間は通所が必要なケースだと、そのために県を越えて遠方の事業所まで出向くことが必要になります。完全にオンラインだけで完結できる利用が実現すればいいのですが……」と話します。
コロナで浮き彫りなったのは、通勤などの負担がなくなることでより働ける機会や選択肢が増えた手応えと、面接など「入り口」段階で諦めざるを得ない現実でした。
これまでB型しか難しい状況だった人が、A型にも挑戦できると思えたらからこそ見えた課題だったと言えます。
こまちさんは現在、B型で勤務する時間以外の時間でイラストを描き、ネット販売をするなどしています。「わずかな収入ですが、福祉に頼らず自分の力で稼いだという励みになっています」と、ツイッターに投稿したマンガに綴っています。
マンガの最後は、こんな言葉で締めくくられています。
《自立できるかどうかに関わらず、多くの障碍や持病をお持ちの方が、その方にあった働き方を見つける事ができればいいなと思います》
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