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ネットの話題

「フローラル釘バット」の破壊力 「可愛いのに毒々しい」即完売

「カワイイ」と「暴力」、禁断にして究極の融合

ドール界の常識を覆す、「暴力的ファンシー」の落とし子です
ドール界の常識を覆す、「暴力的ファンシー」の落とし子です 出典: 迷弦さんのツイッター(@maigehn)

目次

「ドール用小物」と聞くと、花柄で小さく、愛くるしいものが思い浮かぶかもしれません。そんな想像を根こそぎひっくり返す、新感覚のミニチュアアイテムが、ツイッター上を騒然とさせています。テーマは「カワイイ」と「暴力」の融合です。俗的な「可愛さ」の概念を破壊し、これまでにない世界観を打ち立てた、作者の創作哲学に迫りました。(withnews編集部・神戸郁人)

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ピンクのバットから伸びる白い釘

9月15日、とあるミニチュア商品の画像がツイートされました。その名も「フローラル釘バット」。ドールと呼ばれる人形などに、持たせることができます。

バットは淡いピンク色に塗装されており、何とも愛らしい印象です。花柄の生地も見え、グリップ部分には、リボンなどの模様が入ったテープが巻き付いています。

ところが上部に目を移すと、ニョキニョキと顔をのぞかせる真っ白な釘が。柔らかなイメージを豪快に打ち砕くような、予想外のデザインに、思わず度肝を抜かれてしまいます。

カラーはブルーとグリーンを合わせ3色あり、翌16日には、長さ18センチ・24センチの2種類がウェブショップ上で販売されました(現在は在庫なし)。

「何というパワーワード」「可愛いのに毒々しくて大好き」。ツイートには、そんなコメントが連なっています。25日時点で2万近い「いいね」がつき、リツイート数も1万回を超えました。

「フローラル釘バット」。ピンク・ブルー・グリーンの3色が売り出されている。
「フローラル釘バット」。ピンク・ブルー・グリーンの3色が売り出されている。 出典:迷弦さんのツイッター(@maigehn)

「ロリータ包丁」の魅力に触発され製作

見る人に強烈な印象を残す、この小物。一体、どのような経緯で誕生したのでしょうか? 愛知県在住の作者・迷弦さん(@maigehn)に話を聞きました。

迷弦さんは約20年前にドールに魅せられ、愛好家として、主にインターネット上で活動してきました。2016年春には、名古屋市で開かれたドール関連グッズの即売会に出展することに。「製作が大変過ぎず、面白みがあり、自分自身で作りたいと思えるもの」との条件で、新商品の案を練ったそうです。

「ちょうどその頃、ハート型の装飾などが施された家庭用包丁『ロリータ包丁』の存在を知りました。『カワイイ』デザインと、『暴力的』な包丁という組み合わせに、危険な魅力を感じたんです。このモチーフに影響を受け、釘バットという題材が思い浮かびました」

最初に完成したのが「ファンシー釘バット」。100円ショップで購入した箸をバット型に加工し、ドリルで穴を空け、短く切った鉄製の虫ピンを差し込んで作りました。これに更なる改良を加えたものが、「フローラル釘バット」です。

フローラル釘バットの前身にあたる「ファンシー釘バット」
フローラル釘バットの前身にあたる「ファンシー釘バット」 出典:迷弦さんのツイッター(@maigehn)

「優雅さ」「野蛮さ」のギャップを演出

より大型化する目的で、野球のサインボールを飾るための、ミニチュアバッドを素材に採用しました。缶スプレーなどで塗装したら、花の形の手芸用生地を貼り付け、あらかじめ空けておいた下穴に、「プリントボード釘」と呼ばれる塗装済みの釘を打ち込んでいきます。

「この時、花の部分を釘で打つなど、サディスティックなデザインを必ず一つ以上採り入れています」。そしてグリップ部分に、市販のチロルテープを巻いて完成です。ちなみに商品名には、「優雅さ」と「野蛮さ」のギャップを際立たせたい、との思いを込めました。

16年秋の即売会に先立ち、ツイッター上で画像を初めて公開すると、1700回以上リツイートされるほどの盛況ぶりに。イベント会場でも、机に並んだ商品を目にして「ツイッターで見た」と語らうお客さんがいるなど、評判は上々だったといいます。

今年9月上旬、オープンしたばかりのウェブショップで22本を売り出したところ、開始から約50分で完売しました。手仕事のため、生産数には限りがありますが、これまでの販売実績は80本ほどに上るそうです。
床の上で交差する3色のフローラルバット
床の上で交差する3色のフローラルバット 出典:迷弦さんのツイッター(@maigehn)

「カワイイ」とは、最も暴力的な力である

機械メーカーで、製品の設計や加工業務を担当した経験がある、迷弦さん。プライベートでもプラモデルを組み立てるなど、ものづくりに親しんできました。そして00年頃、ある模型メーカーが発売したドールの広告写真を見て、強く引き付けられたといいます。

「写っているのは頭がなく、服も身につけていない、『素体』と呼ばれる状態のものでした。人間に似せた、美しい人工物である点に、魅力を覚えたんです」

ドールとの関わり方は、人の数だけ存在します。本体を粘土などで自作したり、服や装飾品を作ったり。迷弦さんは即売会で取り扱いやすく、ドールに様々な雰囲気をまとわせられる、小物の製作を中心に打ち込んできました。

創作の核となっているのは、「”カワイイ“は”暴力“の上位概念である」という考え方です。

「ある即売会で『ホーリー釘バット』という商品を売り出した時のこと。当初は『釘バットなのに可愛いって何!?』などと驚くお客さんがほとんどだろう、と考えていました。ところが女性客を中心に、『これ可愛い!』といった反応を示す方々が非常に多かったんです」

「『可愛い』という言葉が、何の条件付けもなく使われている。その事実を知り、思いました。”『カワイイ』とは、あらゆる概念や感情を飲み込む、最も巨大で暴力的な力なのではないか“と」。この想定に基づき、初めて手がけた作品が、フローラル釘バットでした。

「カワイイ」と「暴力」を一体化させることには、様々な解釈の余地がある。受け入れるも動揺するも、十人十色――。そのように幅の広い表現であるからこそ、ドール愛好家以外の層にも、作品の持つ力が及んだのかもしれない。迷弦さんは、そう感じています。

2016年夏頃に作られた「ホーリー釘バット」
2016年夏頃に作られた「ホーリー釘バット」 出典:迷弦さんのブログ

「いずれ人間大のバットも作りたい」

フローラル釘バットには、どのような使い方が向いているのでしょうか?

迷弦さんいわく、用途に制限はありません。ドールやぬいぐるみに持たせて撮影するもよし、その写真をSNSにアップするもよし。野外に持ち出す際には、釘で周囲の人を傷つけないよう、透明のビニールバッグに入れて運ぶことを提案します。

「ドールなどと一緒にバッグに入れれば、安全を確保しつつ、”カワイイ暴力”を対外的にアピールできると思います。自分だけの、自由な楽しみ方を見つけて頂きたいです」

そして今後の展望については、次のように語りました。

「まずは、人気のあるアイテムを、できるだけ多くの方々にお届けできるようにしたいです。いずれは、人間が持てるほどの大きさのものも作れれば、と考えています。ドールと、そのオーナー様に、おそろいのデザインの釘バットを持って頂けたら面白いですね」

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