MENU CLOSE

ネットの話題

「アビイ・ロードかよ!」田舎の日常が生んだ奇跡のビートルズ写真

わずか10世帯の集落に起きた「一大事件」

杖やシルバーカーで元気に歩く「散歩」の風景が、集落に一大事件を起こしました
杖やシルバーカーで元気に歩く「散歩」の風景が、集落に一大事件を起こしました

目次

「日本のアビイ・ロードかよ!」あるツイートがきっかけで、京都の「限界集落」が突然、注目の的になりました。写っているのは、「日常の散歩風景」のはずなのに。写真が切り取った、自然と人々の温かさが、話題になっています。投稿者に話を聞きました。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

Abbey Road in Japan!!!

話題になっているのは、toshihiko@ポリポリさん(@ABlend9)がツイッターに投稿した写真です。


「今日、みんなで散歩してたらめっちゃいい写真撮れた」という言葉を添えて、現れたのどかな一枚の写真。


まっすぐにのびた道。手前の横断歩道を、右から左に4人のおじいちゃん、おばあちゃんが、一列に並んで渡っています。

あれ? この構図ってもしかして・・・。

「かっこいい! ビートルズみたいですね!」
「Abbey Road in Japan!!!」

ビートルズの4人が横断歩道を渡る姿で有名なアルバム「アビイ・ロード」のジャケットを反転させて、比べる人もいました。
反響は広がり、いいねが15万件以上つきました。

10世帯の集落

撮影した「toshihiko@ポリポリさん」は、デザイナー・畑利彦さんです。

撮影場所は、京都府綾部市志賀郷地区。

今年3月に、「田舎暮らし」に憧れて、畑さんが移住した集落がある場所でした。
写真は、そんな畑さんが愛する田舎の日常風景で生まれたものだったといいます。

百貨店やイベントのポスターなどのデザインを手がける畑さん。「年を重ねて、『安定したデザイン』はできるようになったけど、突拍子もない発想ができなくなってきました。それが嫌で。アナログ的なことから何か見つけたいと思ったんです」

田舎への移住を考えていたとき、知人のつてで、偶然見つけた空き家でした。住んでいた京都市内から、車で1時間半。山の中に続く、集落。家の周りには10世帯ほどしかありません。

同世代は40代の夫婦1世帯だけで、それ以外は、高齢者が大半でした。一人暮らしの方も多いといいます。

集落の人を手伝って、畑さんも初めて田植えをした=畑利彦さん撮影
集落の人を手伝って、畑さんも初めて田植えをした=畑利彦さん撮影

延々と続く「お裾分け」

ところが、そんな集落の人は、移住してきた畑さんをあたたかく迎えてくれました。

近くのコンビニには車で15分。生協の移動販売はあるし、1時間半走れば、京都市内も大阪にも行けて、生活に困ることはほとんどありません。

それでも、集落の人は「野菜は買うもんじゃない。おすそわけするんやで」と教えてくれ、野菜を持ってきてくれました。畑さんも、土地を借りて野菜を作り始めました。よくできたら、近所の人に「先日のお返し」をあげます。すると、また野菜をもらいます。「お裾分けが延々と続くんだ」と驚きました。

家を空けていても、「留守中、男の人が家に来てたよ」と教えてくれ、「セキュリティー」いらず。「集落の情報の早さはSNS以上です」といいます。

畑さんの家があるのは、集落の1本道の入り口近くです。夕方、誘い合うわけでもなく、おじいちゃん、おばあちゃんが、散歩に出ます。一人二人と顔を合わせると、話しに花が咲き始めます。

それを家から見る畑さん。高齢者が多いので心配だし、自分の運動不足解消のため、一緒に歩くようになりました。

畑さんが夕暮れ時の集落の風景が大好きだという=畑利彦さん撮影
畑さんが夕暮れ時の集落の風景が大好きだという=畑利彦さん撮影

まぼろしの一瞬

その日も、いつもの夕暮れ、いつものメンバーで散歩に出ました。

まっすぐに続く農道。行き止まりだからほとんど通る車はありません。
散歩の列の最後尾を歩く畑さん。
ちょうど、向かいの集落から、いつもはいないおばあちゃんも合流して、散歩の列は畑さんをのぞくと、4人になりました。

おじいちゃん、おばあちゃんが信号のない横断歩道を渡り出したとき、ふと、畑さんは「あれ、これって、アレに似ているなぁ」とひらめきました。

「ちょ、ちょっと、待って! みんなこっち見て!」
念のため、車が来ていないことを確認し、スマホを取り出して、散歩の列に向けて構えた畑さん。

「な~に、撮ってるの」と自然にほほえむメンバー。
健康のため、手を高く振りながら歩いていたおばあちゃん。

その瞬間にシャッターを切りました。

まさに偶然が生み出した構図。「あの自然な雰囲気は、二度と撮ることはできないですね」


記憶をたどり、スマホで調べて「アビイ・ロード」のジャケットを「これ、そっくりでしょ」と見せると、散歩仲間たちも笑いました。

本家の「アビーロード」。世界で一番有名な横断歩道とも言われる。ビートルズのまねをして歩く人たち=朝日新聞
本家の「アビーロード」。世界で一番有名な横断歩道とも言われる。ビートルズのまねをして歩く人たち=朝日新聞

SNSにあげてみていい? と聞くと、ピンと来ていない人が大半でしたが、快諾してくれました。「私たちの写真なんて、誰も見る人いないよ~」と笑いました。

畑さんもツイッターは情報収集用に使っていて、「よくて、100いいねがつくぐらいだろう」と予想していたそうです。
「恥ずかしいわぁ」というおばあちゃんもいたので、薄くぼかしをいれて投稿しました。

すると、まさかの大反響。


バズった10日夕方、いつものように集まった散歩仲間にツイッターの反響を報告しました。メンバーは「こんな何もないところなのに」「サインの練習せんとなー」と驚き、喜んでいました。
離れて暮らす息子に連絡する人、近所の人に「自慢」をしに行く人。「なんかに載った~!どうやったら見れるかわからんけど~」と大変な騒ぎに。静かな集落の、一大事件になりました。

地元の子どもたちに「トトロの森」と呼ばれている山。トトロのような耳がぴょこん=畑利彦さん撮影
地元の子どもたちに「トトロの森」と呼ばれている山。トトロのような耳がぴょこん=畑利彦さん撮影

「自由やなぁ」

畑さんは「これを見て綾部に来てくれる人がいたらいいなと思います」と話します。

ネットさえあれば仕事ができるという人、クリエイターの移住者も増えているといいます。

若い人が少なくなっていくなか、すてきなこの町を一緒に盛り上げていけたら、そんな将来を描いています。


「夜空を見ながら庭でBBQしたくなり田舎暮らしを始めた」とツイッターのプロフィールに書いてあった畑さん。

BBQはまだしていないけど、この間、浜辺に置くようなビーチチェアを買って、庭に置きました。

前の住民が手入れした20~30種類の四季おりおりの花が咲く庭で、ゆっくり寝そべっています。セミの声、遊びに来る鳥たち。

「雑音がなんにもしない」空間を楽しんでいます。

すると庭先から「自由やなぁ」と笑顔で集落の人が声をかけてくれます。「それがしたかったんやー」と笑って、答えるそうです。

「都会では、いつもどこか気ぜわしくて、身なりも気にしていました。ここでは、僕がぼろぼろの服でも、誰も気にしません」。誰も気にしないけど、いつもあたたかく、誰かが見守ってくれている。そんな集落が大好きだと畑さんは話してくれました。

先月、公募していた志賀郷の魅力を発信するハッシュタグの件につきまして、選考会議で協議した結果 #Ohシガサト に決定しました。 SNSをされている方にはぜひ「Oh!」な志賀郷の情報を発信される際「#Ohシガサト」をよろしくお願い致します。

志賀郷地域振興協議会・七不思議伝説の里さんの投稿 2020年9月1日火曜日

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます