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義理の両親も、夫も、気づかなかった「名もなき家事」川柳にした思い
頭に残っていたフレーズを詠んだ、本音の一句です。
イクメンは 名もなき家事が できてからーー。思わずうなずいてクスッとしてしまう「働くパパママ川柳」。今年は「名もなき家事」を取り入れ、ママの本音を詠んだ句が大賞に選ばれました。作者のパコラさん(37)に自身の「名もなき家事」を聞くと、これまた大きくうなずける答えが返ってきました。
大賞を受賞した千葉県在住のパコラさんは小4・小1の姉妹の母親で、建築会社の事務職員として働いています。「私が働くママなので、ママの目線で感じていることを表現しました」
名前は付いていないものの地味に大切な「名もなき家事」。2、3年前にこのフレーズと出会ってから、ずっと頭の中に残っていたと言います。練りに練って一句生み出したのかと思いきや、制作時間は「お昼休みの20分」。まさに日頃の本音そのものです。
では、実際パコラさんが感じる「名もなき家事」とは?
「麦茶です。我が家では水出し麦茶を作っていますが、主人はちょっとだけ残して冷蔵庫にしまっちゃうんです」。冷蔵庫には常に麦茶ポットが2本入っていますが、1本は朝娘たちの水筒に入れる用です。「もう1本がなかったら今日は何飲むの!? 足しといてよ! と思います。常に麦茶の量を把握しておくのは、名前はないけど大事なことです」
麦茶の他にも気になっているのが洗濯物。洋服などが裏返しになったままだと、表に戻す作業が必要になります。麦茶の例とともに、ママ友からは「あ〜わかるわかる」と共感されるそうです。
会社員の夫(42)に「名前はないけど大事な家事だよ」と伝えることもありましたが、あまり響きませんでした。作品を作った背景には、そんな夫に名もなき家事の大切さを知ってほしいという思いがありました。
しかし、結果発表の時まで、夫に作品内容を教えていなかったパコラさん。「なんて書いたの?」と夫はずっと気にしていたと言います。「過去の受賞作を彼なりに調べたみたいで、『俺のことたたいてる?』と聞かれました。そんなつもりはないけど、恥ずかしいから発表まで待ってと全然教えなかったです」
結果発表の日。内容を知った夫からは「すみませんでした。ごもっともです」と言われ、ちゃんと麦茶を作ってくれるようになったそうです。「大賞を取ったことで、『名もなき家事』がそんなに大事だったんだと彼の中に響いたんだと思います。作ってよかったです」
夫には「名もなき家事」の切実さが伝わりましたが、親世代とのギャップを感じることもありました。「義理の両親には、『名もなき家事』って何? どういうこと? と聞かれました。少し上の世代だと主婦がやるのが当たり前という考えがあったので、麦茶の例えも伝わりませんでしたね。裏返しの洗濯物の例も伝えたのですが、それもひっくるめて洗濯で、世代によって捉え方が違うんだなと思いました」
作品には「イクメン」というワードも入れました。厚生労働省が男性の育児を促そうと「イクメンプロジェクト」を発足させてから10年。「イクメン」は広く知られる言葉になりました。
パコラさんは、「積極的に『イクメンだね』と誰かをほめることはありませんが、川柳には伝わりやすいかなと思って使いました。イクメンは育児だけでなく家事も主婦ベースでできるようにしようよと若干皮肉を込めました」と話します。
「どんなにママが家事や育児をしても、『イクママ』『イクガール』とはなりません。『旦那も同じ土俵に立った時、家事を全部できるべき』という声がインスタで多かったので、私も気になっていました」
父親も積極的に育児に関わる時代。今回「働くパパママ川柳」には、過去最多の5万4610作品が寄せられ、そのうち45%が男性からの応募でした。前回に比べ男性からは2000通ほど増加したそうです。育児に積極的な父親が増えている実感はパコラさんにもあります。
長女と次女の保護者を見ていて、「下の子の学年のパパは、行事に参加される方が多い印象です。小学校の個人面談もママが来るイメージが強かったのですが、パパがくる率が高くなった気がします」と3年の差でも違いを感じるそうです。
「少し前は子どもを抱っこしていたらイクメンだねと言われることもあったと思いますが、今は少しハードルが上がっていると思います。『令和のイクメン』は『平成のイクメン』よりレベルが上がっていて、自分の両親を見て育った主人からすると複雑かもしれません。でも、『名もなき家事』をしてきた人たちにとっては、うれしい変化だと思っています」
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